「恭さん・・・少し休んだほうが・・・」
「いいよ。どうせ遅れてる書類たくさんあるんでしょ・・・今のウチに仕上げるよ」
「しかし・・・っ」
「哲、書類じゃんじゃん持ってきて」
「は・・・はぃ」
まるで仕事の鬼。
を忘れるように、僕は仕事に没頭した。
だって、そうでもしないとずっと彼女の事を
考えてしまって、沈む一方だから
少しでもそんな気持ちになるまいと一生懸命考えたのが
仕事に没頭する事だった。
丁度処理が遅れていた書類がたくさんあるから
一気に片付けてしまおうと思い
哲に次々と持ってこいと促していた。
「恭さん・・・もうコレでおしまいです」
「は?嘘でしょ?・・・もっとあるはずだよ」
すると、哲が持っていた書類が最後の1枚らしい。
もっと、こう・・・山積みのようにあったはずなのに
「いえ、コレが最後です。・・・もう書類ありません」
「そう・・・なら、それ見終わったら並盛の見回りを・・・」
「恭さん?」
ふと、書類の処理が終わり次に何をしようと考えて
じゃあ見回り・・・とか考えたけど・・・・・・
「いいや・・・帰る」
「は?・・・み、見回りは?」
「哲・・・しといてよ。僕帰るから」
「きょ、恭さん・・・っ」
「じゃ、お疲れ」
そう言って、僕は席を立ち部屋を出た。
そう、見回りを考えていたけど考えを中断して
帰宅しようと考えたのは・・・
草食動物のところに居るのところに行きかねないからだ
まだ原因も分からないのに、のところに行っても
結局彼女は僕を突き放すつもりだろう。
書類も片付いた・・・見回りもしない・・・じゃあ何をするかと考えた結果が
帰ることしか思いつかなかったのだ。
そう、の居ない・・・あの庵に・・・。
「ただいま・・・・・・って、何言ってんだろ僕」
真っ暗の、庵に帰ってきた僕。
無論の声が返ってくるわけない・・・だって居ないんだもん。
僕は畳に座り込み、思いふける。
何がいけないの?
何で機嫌が悪いの?
教えてくれないと分からないよ
のことなら全部覚えてるし
の嫌な事だって、嫌いな事だって・・・避けてきた(つもりだし)
でも、君は全部僕を受け入れてくれたじゃない
何で、今更・・・
顔 見 た く な い
とか
大 嫌 い
とか
そんな事言うわけ?
「・・・・」
柄にもないよね、僕。
こんなにも考え込むなんてさ・・・もう6日も経ったんだよ
そう、僕とが離れ離れになって6日と日が過ぎた。
昔から・・・離れただけで恋しくて
ムシャクシャするから・・・ムカつく奴咬み殺してきた。
帰ってきたときとかには、もうそれこそ・・・抱きしめる力を強めるほど
体を重ねたりしたら、酷いくらいに僕・・・を求めちゃう
今だって・・・僕、凄くが欲しくて、欲しくて・・・たまらないんだよ
「・・・・・・逢いたいよ・・・が・・・欲しいよ・・・っ」
だからさ・・・僕、あんまりこんなこと・・・したくなんだ。
だってやっぱり君が居たほうがいいじゃない
一緒に感じた方がいいじゃない
それに、楽しくないよ・・・アレ・・・実際恥ずかしいんだって
と、自分でそう思っているのにさ・・・己の欲をどうすればいいのかも分からず
ただ、自分を慰める行為へと・・・・・考え、走る自分が酷く情けなく思った。
「・・・っ・・・は・・・ぁ・・・・・・っ」
やめたくても・・・やめられない。
僕は誰も来ない、静まり返った庵で一人
自慰行為に走っていた。
だって、が居ないのに・・・どうやってこの欲望を吐き出せって言うの?
が欲しいあまり・・・こんなことしちゃってる自分がなんともおかしいね。
まぁ男に走るより、他の女抱くより・・・数倍はいいだろうね、恥ずかしいけどさ。
「・・・っ・・・・・・・・・」
の名前を何度も呼びながら、僕は
自らの猛った性器を擦り上げた・・・何度も、何度も。
そのたびに、性器からは白濁の液が零れ落ち
僕の手を濡らしていく。
「・・・はぁ・・・あ・・・・・・・・・」
何想像してるかって?
そりゃ、もちろんの裸とか・・・可愛い姿とか・・・色々だよ。
それこそ、喘いでる姿だって・・・僕の擦り上げるスピードを増幅させていく
「・・・っ・・・ぁ・・・あっ・・・・・・・・・っ!」
どうしようもないよね。
だって、何が原因でこんな事になったのか
君が僕から離れて・・・僕はこんなことしちゃってさ。
もし、こんな事してるってバレた時・・・合わせる顔ないかもね・・・だって恥ずかしいじゃん。
君をオカズに・・・こんな事にふける事自体がさ
あぁ、他の風紀を正す前に・・・僕自身の風紀を正した方がいいのかな?
(多分自慰行為を二度としないと誓えば、僕自身の風紀は正されるよね・・・うん)
なんて頭で考えつつも、手の動きは加速するばかり
ダメだ・・・もう・・・イキそう・・・。
「・・・っ・・・あ・・・・・・っく!!」
果てた。
性器からは大量の・・・それこそ、6日分の精液が出たに違いないだろう。
手にはホント、白濁の液体がべっとりだし・・・畳にも少し・・・飛び散った・・・。
そして、呼吸が少し荒いため・・・何とかゆっくりと整える。
自慰行為をすると、いつも以上に体力を奪われるからイヤだ。
一説には・・・100mを全力疾走したのと同じとか・・・それくらいらしい。
(誰が調べたのかしらないけどさ)
「はぁ・・・僕、何してるんだろう・・・」
ホント、自分がほとほとイヤになったことはない。
まさか・・・自慰行為に走るなんて思ってなかったから・・・だけど
が居なくて、何処にこの欲を吐き出せばいいのか分からない。
じゃあ、こんな事・・・するしかないじゃない。
に逢いたい・・・とキスがしたい・・・と体を重ねたい・・・
「・・・なんていう連鎖反応だろう」
負?の連鎖反応が起こり過ぎて、もう僕の脳内パンク寸前。
とにかく、事後処理だけはしないと・・・と思い、性器をズボンの中に収め
手や畳に付いた精液を近くにあったティッシュで拭い、ゴミ箱に捨てた。
「よぉ、雲雀・・・生きてるか?」
「赤ん坊」
すると、突然赤ん坊が僕の部屋にやってきた。
丁度自慰行為を済ませた後だったから、何とかバレずには済んでると思う。
「何しにきたの?」
「あぁ、ちょっとな。・・・てか、おめぇ何だ汗かいてるじゃねぇか・・・珍しいな」
「ちょっとね」
「・・・・・・・」
僕の言葉に赤ん坊は黙り込み、ニヤリと笑みを浮かべた。
もしかして・・・バレた?・・・ワケないよね?
僕がジッと彼を見ていると、彼はクツクツと笑いながら・・・・・・
「お前も、オトコノコだな」
「何のこと?」
「に言ってやろうか・・・”恭ちゃんが寂しくて、一人であ〜んな事やこ〜んな事してた“・・・ってな」
「ふざけないでよ、赤ん坊」
「俺はいつでも真面目だぜ?・・・しかし天下の雲雀恭弥が、恋しい女一人と離れただけで・・・まさか自慰に走るとはな」
「黙らないと、咬み殺すよ赤ん坊」
とりあえず、恥ずかしいところは見られずには済んだものの
1発で自慰をしてしまった事を見抜かれてしまい、僕は赤ん坊を睨みつけた。
「分かったよ・・・にも言わねぇって」
「そうしてくれる。恥ずかしいからさ」
「だけど、をオカズにヤッてたって事丸分かりだしよぉ・・・フフフ」
「赤ん坊」
「悪ぃ悪ぃ」
これ以上、赤ん坊に冷やかされるのはゴメンだ。
まったく、自慰なんてするんじゃなかった・・・(今更後悔しても遅いけどさ)
「それより・・・分かったのか?」
「何が?」
「とケンカした原因だよ」
「分かってたら、あんな事してない」
「だよな」
赤ん坊がとケンカした原因を尋ねてきたから
僕はすぐさま答えた。
だって、仲直りしてたら僕は自慰になんか・・・走ったりしない。
「原因は、お前とがイケナイ事して・・・そのイケナイ事が原因でが怒ってるとしか俺達にも分からないしな」
「は?」
ちょっと・・・待って。
「赤ん坊」
「あ?」
「何で知ってるの?」
「何が?」
「何がって・・・僕とがセックスしてる事」
そう、気になったのは其処だ。
には【セックス】とは教えず、ただ【イケナイ事】として教えている。
は絶対恥ずかしがるから他人には喋らないはず
それだというのに、何故赤ん坊は知ってるの?
「あぁ、骸が吐かせた」
「はあぁ?」
「骸が『雲雀クンとイケナイ事してますよね?』って言ったら、は凄まじい声を上げてたぞ。
あぁ、ちなみに俺とかツナとか獄寺、山本もその場に居たからな」
アイツだったら、分かって当然だ
何せ、あのに・・・フェラを教えた張本人なのだから
だからって、草食動物たちの居る前で・・・・・・
「・・・咬み殺す、クソナッポー・・・」
「落ち着けって・・・俺達だって信じがたいとは思っていたが・・・まさか本当にヤッてたのか・・・あのと」
「悪い?」
「(開き直りやがったコイツ)まぁ恋愛は個人の自由だが・・・さすがに・・・ガキ体質になったとヤるか?」
「いいじゃない別に。僕の勝手でしょ」
「お前を問い詰めた俺がバカだった」
「問い詰めない方がいい選択肢だよ、赤ん坊」
「だな」
そう言って、赤ん坊はため息を零して帽子を整えた
「しかし・・・本当に思い出せないのか?」
「思い出すにも・・・・・・例えば何だって言うの?」
「そうだな。・・・に嘘ついたとか、をムリヤリ犯したとか」
「・・・・・・う、そ・・・・・・・・・あ」
そういえば・・・あの時の。
ふと、思い当たる節があった・・・そう、お風呂でセックスをした時。
でも、まさか・・・アレだけで?
いや、でも・・・思い当たるのは其処しか考えられない。
だって、お風呂一緒に入って、セックスした次の日から・・・反抗期みたいな事起こして・・・。
「雲雀?」
「・・・・・・もしかして」
「思い出したのか?」
「可能性だけど・・・多分、思い出した」
だったら、僕はに謝るべきだ。
だって、嘘ついて・・・恥ずかしい事をさせてしまったのだから。
「それで、原因は?」
「実は・・・・・・」
『ヒバリ!ヒバリ!』
すると、何と言うタイミングだろうか
鳥が慌てて羽を動かし、飛んでやってきた。
「ヒバードじゃねぇか」
「どうしたの?」
僕が彼に問いかけると・・・彼は僕の上をグルグルと飛び回りながら・・・・・・
『!!・・・!!』
の名前を呼び続けた。
ふと、嫌な予感が走った。
「・・・・・・まさかっ」
「お、おぃ・・・雲雀っ!?」
僕は気付いたら体が勝手に動いて、庵の廊下を走り
外へと繋がる場所へと出た。
「・・・・・・っ」
柄に似合わず、焦った。
彼の知らせは、に何かしらの事態が起きたと言う知らせ。
まったく、これだから他人になんか任せておけない
「・・・・・・、僕が行くまで無事でいて・・・」
そう呟いて、数十年と知った道を、彼女を見つけに走った。
外は、小雨から・・・本格的に雨が降りそうな勢いへと変わっていくのだった。
それが過ちだと気づいた時
(そうだよね、僕が嘘をついて、恥ずかしい事をさせてしまったのがいけなかったんだよね、きっと)