「はい、さとし・・・あーん!」
「よろしいのですか、お嬢様?」
「いいよ。はい・・・あーんして!」
「で、では・・・お言葉に甘えて」
「僕の目の前でよく堂々とそんな事できるね無能執事」
「も、申し訳ございません・・・恭弥様」
とある日、僕はを連れて
彼女の自宅へと向かった。
特に目的はない。
ただ、何となく最近を自宅に帰していないから
無能執事が心配でもしてるんじゃないかと思い
顔を見せる程度でやってきた。
「しかし、本当にお嬢様が・・・」
「未だに戻る方法が見つかってないからね。彼女には手を焼いてるよ」
「昔も結構ワガママでしたから」
「ワガママプラスで甘えん坊だよ、あれは。・・・僕の理性も当の昔に破壊されたね」
「え?きょ、恭弥様・・・ま、まさか・・・」
「あ、誰にも喋らないでね・・・喋ったら・・・君を本気で咬み殺すから」
「も、もちろんですよ!!!」
とりあえず、バレても口止めさえしておけばいいコイツの場合は。
そう言って僕は目の前で幸せそうな顔をして
ケーキを頬張るを見ていた。
『緑〜たなびく〜並盛の〜・・・♪』
すると、突然携帯が鳴る。
哲からか?と僕は思い、席を立ち
ポケットにしまっていた携帯を開き、電話に出る。
「もしもし?」
『あ、繋がった・・・雲雀恭弥君の携帯ですか?』
「そうだけど・・・・・・誰?」
電話の向こうの人間は女性の声。
財団所属の女性の番号は把握していないし
ましてや、ボンゴレの方だって・・・・・・。
それに、僕の番号を知ってる人物はしか・・・・・。
『まぁ、数年でそんな凛々しい声になったのね!』
「だから誰?・・・咬み殺されたいの?」
『アラ?覚えてないの?・・・私よ、私!覚えてないかしら?』
覚えてないかしら?とか言われても・・・僕は覚えてないし。
誰だ?と考えを脳内で張り巡らせていると・・・・・・。
『誰って・・・・・のママでーす!恭弥君、ビックリしちゃった?』
え?
待って・・・の、ママってことは・・・・・・。
僕は一気に顔が青ざめていく。
携帯を握る手が久々に汗ばむ。
「お・・・お久しぶり、です・・・」
『久しぶりね〜・・・最後に逢ったのはいつかしらね?』
「5年前・・・かと」
『あら、もうそんなになるの?・・・は元気?』
「え・・・えぇ、まぁ」
僕はチラリと机に座っているを見る。
すると、彼女はキョトンとした表情で僕を見ていた。
ていうか、何で・・・?!
「あの・・・それで、ご用件は・・・?」
『あぁ。今ね、日本に帰ってきたの。日本の支社で大事な会議があるから』
「そうなんですか」
『パパもね一緒に帰ってきたの』
ちょっ・・・!!!!
の母親だけならまだしも・・・あの父親まで!?
さらに僕は青ざめる。
いや、僕が青ざめるなんてもう此処数年なかった。
しかし、この2人が日本に居るという連絡を受けただけで
僕自身・・・ちょっと身の危険を感じている。
『それでね、に逢いたいなぁ〜とか思ってるわけよ』
「はぇ?!」
『あら。恭弥君、珍しいそんな声出すなんて』
「す、すいません・・・つい」
いや、ついって言う問題じゃない・・・!!!
今のに逢いたいとか・・・流石にどう説明すればいいのやら。
「あの、どうしても・・・逢わなきゃダメですか?」
『うん、逢いたい。5年前も逢いたいって言ったらに拒否されたから』
そりゃ・・・あんたらが両親なら、も嫌がるのも分かるし。
まぁ、此処で僕が勝手に拒否なんかしたら・・・それこそ、の父親に僕が殺されそうだ
「分かりました・・・何とか説得してみます」
『ホントー!!!ありがとう!!やっぱり頼れるのは恭弥君ね!!じゃあ良い知らせを待ってるわ』
「はい、失礼します」
そう言って僕は携帯の通話を切断した。
が、一気に・・・どん底に突き落とされた。
「きょ、恭弥様・・・あの一体何が?」
「緊急事態・・・の両親が帰ってきた」
「え!?だ、旦那様と奥様が・・・っ!?!?」
僕の言葉に、無能執事ですら顔を真っ青に驚きの表情を見せる。
何でこんなよりによってタイミングの悪い時に帰ってくるんだ。
高々幼馴染の両親だと思わないでほしい。
の父親と母親は僕がもっとも苦手なタイプだからだ。
いろんな意味での両親は僕は昔から苦手だった・・・特に父親の方には。
「ていうか、何で君が嫌がるの?」
「僕だって旦那様と奥様には苦手意識というものが・・・拾っていただいたのは大変光栄な事ですが
未だに僕ですら・・・特に旦那様の方には・・・」
「あ、やっぱり。・・・僕もの父親苦手なんだよね・・・アレだし」
「確かに・・・旦那様は・・・アレですから」
アレ・・・って言っても通じないかもしれないね。
まぁそれはまた追々話すとしよう。
とにかく、今どうするかって話で・・・・・・。
「さっきの電話、の母親からなんだけど・・・に逢いたいって」
「え!?・・・で、ですが・・・お嬢様が今、こんなんじゃ・・・」
「説明しても通じるかどうかの問題・・・だよね」
「恭ちゃんもさとしも何話してるの?」
僕と無能執事の話が気になったのか
は、不思議そうな顔をして僕と彼を見ていた。
「」
「何、恭ちゃん?」
「・・・・・・パパと、ママに逢いたい?」
「パパとママ?・・・・逢いたい!!逢えるの?」
はそれこそ、瞳をキラキラと輝かせて
まさに逢いたいオーラ全開で僕に訴えかけている。
「今、帰ってきてるんだ・・・日本に」
「ホントー?・・・パパとママに逢いたいよ、恭ちゃん!」
「ホントにいいの?」
「逢えるんでしょ?パパとママに・・・うん!いいよ!!」
ダメだ・・・この微笑みには僕は勝てない。
「恭弥様・・・どうしましょう」
「本人が逢いたいって言ってるから・・・尊重しようよ」
「ですが・・・っ」
「何とか頑張るよ・・・・あの二人に通じるよう僕も知恵を絞るつもり」
「では、僕も一緒に参ります!・・・いけません、か?」
「好きにしなよ」
そうため息を零して、僕は無能執事に答えた。
「では、お嬢様。旦那様と奥様に逢うには綺麗なお洋服を召しましょう」
「うん!恭ちゃん、待っててね」
「行っておいで」
そう言っておめかしをしに、は無能執事と一緒に奥へと引っ込んで行った。
僕はソファーに深く腰掛け・・・盛大なため息をして・・・・・・・・・・・。
「・・・・あー・・・最悪・・・」
と、だけ言葉を零したのだった。
暴風族襲来〜並盛一帯壊滅ご用心!〜
(幼馴染の両親だからって舐めてかかったら、痛い目を見るよ)