とある日の双魚宮。
が暇を持て余しやってきた。
「ホント、アフロディーテのところには花がたくさん置いてあるのね」
「花は美しいからね。でもあまり触れないほうがいいよ」
「え?」
私の言葉に彼女の手が止まった。
どうやら触れる直前でなんとか留まったらしい。
「花は花でも、私のところに置いてある花はすべて毒があるからね」
「ど、毒!?」
「あぁそうさ。君が触れようとしたマリーゴールドは毒を持っているし。
その隣に置いてあるアマリリスにも毒がある。私の宮に置いてある花は全て毒性を持っている花たちばかりさ。
容易に触れないほうが良い・・・花の種類によっては死に至ることもあるからね」
「そ、そうなんだ」
せっかく生まれ変わり、この世に新たな生を受けた彼女を
私の花たちで傷つけたりしたら、それこそ生まれ変わってきた意味がない。
「じゃあこの、スズランも?」
すると、は小さな植木鉢に植わった白く愛らしいスズランを私に見せてきた。
「あぁ、スズランも毒性の花だよ。愛らしい姿をしておきながら
その効果は人を死に至らしめるほどだからね」
「そうなんだね・・・意外」
「花は美しく、そしてその命も儚い。儚い命だからこそ、美しく咲き誇りたいのだよ。
例え毒をもっていたとしても。・・・・美しい花には棘がある、彼らにはその言葉がぴったりさ」
「アフロディーテらしい言葉だね。なんだか感動しちゃった」
は笑みを浮かべながら私を見ていた。
そんな彼女の頭を私は優しく撫でる。
「だが、私は随分前から、私の目の前に咲いている花の毒に侵されているようだ」
「え?」
「スズランではないよ。君さ、」
「わ、私?!わ、私毒なんて持ってないよ」
私の言葉には頬を染めながら言う。
ほら、君の知らないうちに毒が出て私を侵していく。
「気づいてないようだけど、君の名前からしてそうじゃないか」
「名前?のほう?それとものほう?」
「両方」
「え?!?りょ、両方とか・・・」
は開いた口が塞がらないらしい。
まぁ無理もないだろう。
「虹の神なのに知らなかったのかい?ギリシア読みではイリスではあるけど、アレを英語読みしたら
君の名前になるんだよ。それには花で言うアヤメを意味しているんだ。
アヤメは毒をもった花なんだよ」
「ホントだ、何か・・・繋がってる」
「気づいてなかったのが滑稽だよ」
「自分の名前の由来とかし、知らないし・・・そんな花に共通してるとか、分かんないよ」
「まぁそうだろうね。でも、本当に君は毒だよ・・・私にとってね」
私はの頬を包み込みジッと見つめる。
愛らしい顔がすぐ近くにある。
「名前の意味で言ってる?」
「そうじゃないさ。まぁ君を見続けていたら眩暈や動悸を感じることはあるね」
「苦しいのアフロディーテ?」
「そうだね・・・」
君を好きすぎるあまり、苦しくて仕方がない。
「どんな花の猛毒にも解毒はあると思うけど、きっと・・・君という猛毒に掛かってしまえば
もう治す術がないだろうね・・・死ぬまで、君を想い続けている限り」
「アフロディーテ」
「好きだよ、。これからも、ずっと」
君という”毒の花“で私を、狂わせてくれ。
花の猛毒について
(どんな花よりも君という花が一番の猛毒)