とマニゴルドが?」



「そうなんだよ・・・何か意味深な会話してた。あれは絶対なんか隠してるって」





宝瓶宮の書庫。

本を読んでいたらカルディアが面白そうな顔をしてやってきた。

最初は「気が散る。帰れ」と言ってあしらったが
カルディアは「面白い話持ってきたんだよ。の話聞きたくねぇの?」と
私を誘惑?してくるものだからとりあえず耳を傾ける程度にしていた。

だが話の内容が
此処最近のの行動に拍車をかけるような内容。


マニゴルドと意味深な会話をしていた。





「今日も良いか?」というマニゴルドの問いに
最初は戸惑いながら「いいの?」と言うと、彼は「あぁ」と二言返事。
それには嬉々とした表情で「行く」と答えたとのこと。





「おい、デジェル。コレが浮気だったらどうするよ?!」


「な、何でそうなる!?」





私が考え込んでいると、カルディアが身を乗り出し言って来た。



浮気?

コレは浮気になるのか?





「だって毎夜毎晩が宝瓶宮から出て、朝帰りなんて。お前って言う恋人が居るのに
何でそんな毎日夜出掛ける必要があるんだよ!しかも、マニゴルドとあんな意味深な会話しといて
それが浮気だったらお前、どうするんだよ!?」



「べ、別にコレが浮気だという証拠がないだろう。勝手に決め付けるな」



「決め付けたくもなるだろうがバカ!お前・・・が浮気しないって根拠あんのかよ?」



「そ、それは・・・」





疑いたくはない。

しかし、頭の中でそういう不安は過ぎる。


でも昨日、あんなに愛し合ったし・・・嫌というくらい求めた。

だって・・・アイツだって。


私を受け入れてくれた・・・だから、やってはいけないと分かっていながら・・・のナカに愛を注いだ。
1度ならず、2度、3度と・・・。





「こんな所でのんきに本なんかとにらめっこしてる場合じゃねぇぞ」



「・・・・・・・」



「あっそ、気にならないなら別にいいけど。が浮気しようがお前には関係ねぇって話か。
お前のへの愛情ってそれっぽっちのモンだったってことか」






カチンと来た。

私は本を閉じ、それを机に叩きつけて立ち上がった。





「ふざけるなカルディア。その程度の愛情だと思われたら困る」



「愛する女の不審な行動に無関心なんて、お前のへの愛情・・・その程度のもんだろ?」



「浮気かどうかも分からない、証拠もない、そういう話を信じろというのが無理な話だ」



「本を読みすぎて脳みそ固まりすぎたかぁ、知の聖闘士さんよぉ?何だったら、俺が奪ってもいいんだぜ?」



「貴様・・・ッ」






私は怒りに身を任せ、カルディアの顔面を殴った。

思いがけない行動に自分の拳を見て、目の前でうな垂れたカルディアを見た。


勢いでやったことだから思わず息が上がる。






「フフッ」



「な、何がおかしいカルディア」





するとうな垂れたカルディアは笑みを零した。

腹立たしいなんともバカにした笑い声にも聞こえた。
もう一発くらい殴るか、それともいっそコイツを凍らせてしまおうか・・・。






「出来るじゃねぇか」


「は?」


「そういう勢い大事だぜデジェル。たまには勢いに身を任せてみろよ・・・根拠があろうが無かろうがさ。
自分の目で見ないと何も始まらねぇだろ?」



「カルディア」





口端に付いた血を拭いながらカルディアは言う。


「イテテテ」と言いながら腰をさする彼に私は手を差し伸べた。





「んだよ?まだやんのか?」


「違う。掴まれ・・・殴ったことは謝る、すまなかったな」


「分かればいいんですよ〜っと」




カルディアを引っ張り上げた。





「で?今晩は行かれるおつもりで?」


「あぁ。自分の目で確かめてみないと分からないからな、勢いが必要なんだろ?」


「ハハッ・・・面白そうだな、俺も付き合うぜ」


「気づかれるような真似だけはしないでくれよ」






自分の目で確かめてみないと、何も始まらない。


これが浮気じゃないことを信じたい。


それだったら・・・今まで愛し合ってきた私たちの記憶はなんだったのだろうかと
落胆してしまいそうになる。





夜が更けた。



私は先に寝室のベッドに入り寝た。もちろん寝たフリだ。
するとが隣に入ってきたが1時間くらいしてから、動き出した。

音を立てぬよう扉を開けて、外に出て閉めた。

私は起き上がり―――――。





「さて・・・行くか」




黄金色の聖衣を身に纏い、部屋を後にし
に気づかれぬよう後を付けた。



宝瓶宮を出て、磨羯宮、人馬宮へと降りていく。

こんな真夜中だ・・・エルシドもシジフォスも眠りに就いている頃。
普通に通り過ぎても多分何の問題も無い。

アイツは一体何処に行くというんだ?



天蠍宮に差し掛かり、それでもは足を止めず駆け降りて行く。





「おい、デジェル」


「?・・・カルディア」





すると小声で呼び止められ、横を見ると柱にカルディアが居た。
どうやら身を潜めていたらしい。





「聖域を出る気かのヤツ?」


「分からん。とにかく追うしかないだろ」







そう言って私とカルディアはの後を付けた。

天蠍宮を抜けたら天秤宮だ・・・本当にカルディアの言うとおり、聖域を出るつもりなのか?
などと思っていたら―――――。







「遅ぇ」


「アハハ、お待たせマニゴルド」





天秤宮へ降りる階段に人が居た。


そう、マニゴルドだった。






「マニゴルドと待ち合わせか」


「つか、前々から思ってたけどさ・・・あいつ等なんか仲良さげじゃね?」


「私から見たらお前とも仲が良いじゃないか」






マニゴルドと合流したらの表情に
カルディアは疑問をもらした。


しかし、私から言わせてみればカルディアとだって仲が良い。





「いや、俺とアイツは悪友同然な付き合いだからな」


「悪がき2人組だからなお前たちは」


「うっせ。いや、そうじゃなくて・・・・なんか、マニゴルドと居るときのってさなんか
安心しきってるっていうか・・・」


「何だ?」


「何て言ったらいいんだ?なんつーか・・・お前を見てるときのの顔と、マニゴルド見てるときのの顔って
何か・・・何か違うんだよな?」


「は?」




カルディアの言葉に私は目を見開かせ驚いていた。





「お前とさ居る時のの顔って、楽しそうだし嬉しい表情したりってしてるけど。
何ていうんだろ・・・マニゴルドと居るときって、若干安心しきったような・・・心許してる?そういう顔してる」



「まるで私と居る時のは安心していないとでも言いたいのか?」



「そういう意味じゃなくてだなぁ・・・だから、その〜」



「はっきりしろバカ蠍」



「おまっ!そういうのをな、偏見って言うん」



「シッ、ちょっと黙れ」






カルディアの口を手で塞ぎ、私はとマニゴルドの2人を見る。


何か話している。

私たちの居る位置からじゃ聞こえないが、の表情は分かる。



嬉しそうに、笑っている。


あんな顔・・・・・今まで見たことが、あっただろうか?



体の力が徐々に抜けて、カルディアの口を塞いでいた手が下に落ちていく。




「お、おいデジェル?・・・デジェル、しっかりしろって」






カルディアの声が耳に入らない。







『ゴメン、遅くなって』


『別にいいけどよぉ。お前、足音うるせぇ』


『仕方ないでしょ。でも此処来るまで誰も起きた気配ないし平気平気』


『それで歩かれるとうっせぇから、こうするぞ』


『ちょっ!?・・・も、もう強引』






自分の目を疑った。

コレは夢なのかと?


マニゴルドがを抱き上げ、はそうされても嫌がる素振りもしない。


私が抱き上げようとすると・・・嫌がるくせに。
どうして、私じゃないマニゴルドの時はそんな風にしないんだ?





『それで歩かれるとうるせぇし、夜が明けちまう。行くぞ』


『私、女の子なんだから丁寧に扱いなさいよ』


『はいはい』






そう言いながらマニゴルドはを抱き上げたまま
天秤宮へと続く階段を降りていった。



夢だというのなら、覚めてほしい。


嘘だというなら、誰か言ってくれ。






お前は本当に、私のことが好きなのか?










「デジェル・・・デジェルしっかりしろって!」


「カルディア」






カルディアの声で遠のいていた意識が戻ってきた。






「何かの間違いだって。が、お前を裏切るとかねぇって」


「・・・・・・だ、だが・・・」





あんな表情・・・私の前では一度も、してくれない。







は・・・本当に、私のことを好いてくれているのか・・・不安になってきた」




「お、おいデジェル!しっかりしろって!!」







ダメだ。

目の前の光景があまりにも衝撃的過ぎて、魂が抜けたような気分だ。



私だけ?

私だけが・・・を愛していたのか?


私だけが一方的に、を愛していただけ?


じゃあお前はどうしてマニゴルドと居る?

いや、毎夜毎晩・・・私の愛が嫌で・・・宝瓶宮を抜けるのか?











私 の 愛 が お 前 に は 重 す ぎ た の か ?













「カルディア、戻ろう」


「デ、デジェル・・・でも、連れ戻さなきゃッ」


「もういい。もう・・・いいんだ」




私は踵を返して、自分の宮へと戻る。



そうか。

よく分かった・・・毎夜毎晩、どうして居なくなるのか。






・・・お前には私の愛が重すぎたんだな・・・きっと。






重すぎた愛情
(居なくなる理由が、私が注いだ愛情のせい) inserted by FC2 system

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