「カミュの作り出す氷って透き通ってて綺麗ね」



「そうか?あまりそういうのを気にしたことがないから、よく分からんな」





突然、がそんなことを言ってきた。


自分自身あまり気にしたことがないから、何とも微妙な返答になってしまった。






「こういうのでカキ氷とか作ったら絶対美味しいと思う」



「お前は色気より食い気を優先させるんだな」



「違うよー。一般論を述べたまでの事だって、むしろこの方が多分分かりやすい・・・はず」



「私もお前も答えが微妙すぎたな」



「だねー」






互いの微妙すぎる返答に笑いあう。






「でも、こういうのでオブジェとか作ったらきっと綺麗だと思うわ。
カミュの創り出す氷は透き通ってるから凄く映えるよ」



「オブジェか」



「アテナのオブジェとか作ってみたら?沙織喜びそう」



「アテナの元まで持って行くまでが大変だろう。むしろ見せる前に溶けてしまうさ」



「そこは、何とか頑張って」



「大分無茶を言うなお前は」






私の言葉にが再び考え込む。
そんな彼女の姿を見て、私はほくそ笑んだ。





「小さいサイズとかダメ?」



「まだ考えていたのか?むしろ、小さいサイズってどれくらいの事を言っているんだ?」





どうやら諦めきれないのかは大きいのがダメなら
小さいものという発想に切り替えたらしい。

しかし、小さいサイズとは・・・どれくらいのことを指しているのだろうか?





「うーん、うーん・・・・・・手のひらサイズ」


「大分小さいな、それは」


「両手に乗るくらいの・・・オルゴールみたいな!」


「土台があって、上に人形があるみたいなのか?」


「そう!そんな感じの。そういうのが理想的」







理想的、と言ったの表情は
本当に自分の理想そのままを述べているように見えた。


オルゴールみたい、なのか。


作れば、喜ぶ・・・のか?




アテナではなく・・・・・・、お前が。






「あ、でも・・・ゴメン。ワガママだったよねカミュ」




「え?」


「沙織にあげるって言うか完全に私の理想だし
私と同じものを沙織が好むかどうかって言うのが問題でもあったよね。ゴメン今の忘れて」






その言葉を聞いたとき、何だか心が切なくなった。

「忘れて」といわれたその言葉に、私はの辛いのを堪えて笑っている表情を見て
私は目を閉じた。


見ていられなかった、そして――――。







「そろそろ、沙織のところに」




「待て



「何?・・・え?」







私は手のひらに、の描いたとおりのものを氷で創り出した。

楕円の土台の上に乗った、手を合わせまるで今にも
ワルツを踊りだしそうな人形を創った。







「これで良いか?」



「わ、私に?」



「あぁ。お前が気に入るかどうか分からん。こんなものしか創れなくてすまない」



「カミュ・・・で、でも」



「どうした?受け取らんのか?」






お前が喜ぶと思って創ったのに。


はおどおどしながら、氷の人形に触れる。









「持って帰ったら・・・カミュが、せっかく作ってくれたのに・・・溶けちゃうよ」







「気持ちは嬉しいよ。でも・・・・・溶けてなくなるのはすごく、嫌」







そうか。

だから、お前はそんな苦しい表情をしていたのか。



私はフッと笑みを浮かべた。






「ならば、此処にずっと置いておく」



「え?」



「そうすれば、溶ける事もあるまい。見に来たいときに見に来ればいい。
お前が飽きたというまでコイツは残しておく」



「カミュ」



「それに、お前のために特別で私が創ってやったのだ。そう容易く溶けてなくなれば意味がないであろう?」







・・・お前が喜ぶと思って私は創ったんだ。


お前がそんな苦しい顔をしてしまえば、私はとても悲しいし辛い。
そんな表情はして欲しくない。


お前はずっと、私の側で笑っていてくれればいい。



お前の笑顔のためなら・・・お前が喜ぶためなら、私はなんだって出来る。







「じゃあ・・・此処に、置いてて。私、絶対また見に来るから」



「あぁ」



「それまで、溶けないようにしててね」



「分かっている。早くアテナのところへ戻れ、アテナが心配されるだろう」



「うん。・・・じゃあね、カミュ・・・ありがとう」






そう言って宝瓶宮をは嬉しそうに駆け出し出て行った。

私は手に作り出したものをそっと棚の上に置き、氷のケースを作り
それを人形の上に被せた。

こうすれば溶けたりはしないだろう。







「ありがとう・・・か」






ケースに入った人形を眺めつつ私は呟いた。

あの時の、の表情。
本当に嬉しそうな顔をしていた。それこそ、私の望んだ瞬間。


の笑顔が、私の心を和らげていく。




ただ、ほんのひと時。

と居るときだけの時間が・・・私の氷を溶かしていく。
あの子の笑顔こそ、私の生きる糧ともなる。







「いつか、・・・お前と、こんな風に抱き合い踊りたいものだな」







ケースに入った踊る人形は
私自身が夢見る、彼女と私の2人だけの舞踏会。






スノーダンス
(滑らかに優雅に踊ろう、2人で、いつの日か) inserted by FC2 system

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