「さぁ、飲みなさい。お前の転生を私と祝おうではないか」
「いや、あの、シオン様。私・・・未成年、お酒飲んじゃダメな年齢です」
とある日の聖域(サンクチュアリ)、教皇の間。
虹の女神ことは困っていた。
教皇であるシオンに再び地上に転生できた祝いとして酒を勧められていたのだ。
しかし、の頃と違って
人間のしかも未成年の女の子に転生した彼女は
お酒を飲むということは、御法度である。
「何を言うかよ。せっかくお前が再びこの地に生を受け、生きているのだ。
良いではないか、さぁ飲みなさい・・・よもや、私の勧める酒が飲めぬというのか?」
「シオン様、いくらシオン様のお言葉でもお酒を飲むことだけは出来ません」
「良いではないか。それにアルコールは少ないのにした。さぁ飲め」
グラスに注がれたお酒。
手に持ち苦い表情をする。
これ以上シオンに絡まれるのだけは嫌でも避けたい気持ちか
グラスを口元へと持っていく。
「はい、ストップ」
「あ」
「む!?」
すると、の手から突然グラスが消えた。
いや正確には取り上げられた・・・という表現が正しい。
は驚き、そしてシオンは怪訝そうな顔をしていた。
「まったく。我が師、シオン・・・になんてものを飲ませようとしているんですか」
「ムウ!」
の手からグラスを取り上げたのは
シオンの愛弟子であり、黄金聖闘士の1人牡羊座(アリエス)のムウだった。
思わぬ助け舟には心が晴れた。
「おのれムウ・・・邪魔をするでない!私に逆らう気か!?」
「お言葉ですがシオン様、は未成年です。その未成年にお酒を飲ませるなど教皇である
貴方自ら道徳に反することをしてどうするんです?皆に示しがつきませんよ」
「皆私の行いには目を瞑る」
「何我侭言ってるんですか!ダメなものはダメです。、席を立ちなさい。
こんな人に付き合っていたら君が危ない。白羊宮で私とゆっくり食事をしましょう・・・さぁ」
「・・・ぅ、うん」
の座っている椅子を少し引き、彼女を立たせようとしているムウ。
戸惑いながらもお酒を飲まずに済むのなら・・・と思いながら
は席を立つ。
「行かせぬぞ!」
「きゃっ!?」
「!?」
すると、席を立った途端
シオンがの手を引き自分の腕の中へと収めた。
あまりに突然の事ではおろか、ムウですら驚きを隠せない。
「あ、あの・・・お、お離しくださいシオン様ッ!」
「嫌じゃ。ムウのところになど行かせぬぞ、」
「ぇ、やっ、で・・・でも」
腕にこめられた力を振りほどこうにも解けない。
若草色の柔らかな横髪から香ってくる匂いには心臓が酷く鼓動していた。
「お前を離したくないのだ。私の側にずっと置いておきたい。
酒を飲ませるなど、口実にしか過ぎんのだ。私の側に居て、お前のぬくもりを感じたい。
これでも私の気持ち、お前はまだ分からぬというのか?」
「シ、シオン様」
見た目18歳の好青年に見えるが、その実261歳という超高齢者。
やはり、200年という人生・・・長く生きているからこそ出る言葉なのか
その見た目と実年齢との差にの心臓は、普段以上の速さで脈を打っていた。
「いけませんよ、」
「え?・・・あ、きゃっ!?」
「何をするかムウ!!」
すると今度は、シオンの腕からを救出し自分の腕の中に収めるムウ。
せっかくのいいムードだったのを
ものの見事に弟子に奪われ、ムウを睨み付けるシオン。
そんな師匠の視線を気にも留めず、の頬に触れジッと見つめる。
はそんなムウに見つめられ頬を染めた。
「君は私の言葉にだけ耳を傾ければいいんです。他の男の言葉に耳を傾け、鼓動するなんて許しませんよ。
他の男に心奪われるくらいなら、私が最初から骨の髄まで君を愛してあげます。そうすれば
君が他の男に夢中になることもありませんから・・・・いい考えとは思いませんか?」
「ムウ」
さすが歳が近い?だけあっての心を一気に引っ張るムウ。
ムウの言葉には心臓を鼓動させるだけでなく
頬までも赤く、そう林檎のように染まっていた。
ムウは勝ち誇ったかのように、シオンを見る。
「おのれ、ムウ!を渡せ!!」
「誰が渡すものですか!は絶対に渡しません!」
「ふ、2人とも落ち着いて」
ついに師弟がケンカを始めた。
まさかこんな展開になるとは思っても居らず、は
焦りながらケンカを始めた2人を止めに間に入る形になった。
「ならば決めるが良いよ」
「へ?」
「私かシオン様か・・・君に相応しい男はどちらかを」
シオンとムウのケンカを止めに間に入ったまでは良かったが
両端にいる2人が、それぞれの手を握る。
「お前はもちろん、このシオンを選ぶのだろう?子供には分からぬ、大人の魅力とやらを
たっぷりお前に教えてやる」
「シ、シオン様」
「君が選ぶのはもちろん、この牡羊座のムウですよね?君の心ごと愛しているのは
世界に私だけだということをいい加減分かりなさい」
「ム、ムウ」
お酒を飲む以前
どうやら、牡羊師弟2人の熱いラブコールに酔いそうな気分であった。
アルコール3パーセント、ラブコール97パーセント
(アルコールよりも、2人の熱いラブコールのほうが度数はかなり高め)