「シャカ、はい」
「何かね？･･･何だね、その包みは？」
は嬉しそうに綺麗な包みをしたモノをシャカに渡す。
しかし渡されたシャカはというと誕生日でもないのに
何故綺麗な包みを渡しているのだ？と内心思っていた。
「あれ？知らない？バレンタイン」
「異教徒の祭り事等に興味はない」
「いいじゃない今日くらい。異教徒の祭り事に参加して･･･はい、チョコレート」
そう、が持ってきたのはバレンタインのチョコである。
渡された箱をシャカはまじまじと見て、を見る。
「よ」
「何？」
「異教徒である私にそのようなものを渡すなどと。ましてや、ちょこれーと･･･なるものなど
私は生まれてこの方食べたことがない。口にするのもおぞましい」
「酷い言い様ねシャカ」
「当たり前だ。分かったなら帰りたまえ」
を軽くあしらい、瞑想を始めるシャカ。
チョコに対しての偏見なのか、それともバレンタインに対しての偏見なのか。
どちらとも捉えるシャカの態度には口端をピクリと動かし――――。
「１つぐらい食べてから物言いなさいよ！」
「な、何をすっ･･･んごっ！？」
は包みを開け、チョコレートを無理矢理シャカの口の中へ入れた。
あまりに突然すぎる行動かつ、普段のからは考えられない行動でシャカは驚きのあまり
口を開けてしまい、茶色の甘い香りを放つ物体を口の中に放り込まれた。
手で口を押さえつつシャカはチョコレートを口の中で恐る恐るかみ締める。
「どうよ？」
「･･･････甘い味がするのだな」
「チョコレートだからね」
「しかし、口の中が何だかべちゃべちゃする。このちょこれーとが柔らかすぎるのではないのか？」
「生チョコだからそういうのなんです。ホントに知らないのねシャカ」
初めて食べる味に相変わらず文句を垂れるシャカ。
最初はその態度をしていたシャカに腹立たしく思っていただったが
何だかまるで幼い子供のように自分に言ってくる彼の態度に思わず笑みを零していた。
クスクスと笑うに、少々不服そうな表情を浮かべるシャカ。
「何故笑うのだ？」
「貴方が知らなさ過ぎるからよ。これで分かったチョコレートってモノ」
「うむ。甘くて柔らかいモノなのだな」
「フフフ･･･やっぱり知らなさ過ぎる」
シャカの言葉には笑う。
食べたものを率直に告げたまでなのに何故笑われなければならん、とシャカは
内心そう思っていた。
「笑うのはその辺でやめたまえ、失礼だ」
「フフフ、ごめん」
「･････なぁ、」
「ん？」
「ちょこれーと、という物はよく理解した。では、ばれんたいんとは･･･何なのだ？」
シャカの質問に、は目を見開かせ驚き少し考えながら――――。
「そうね」
「うむ」
「好きな人に、チョコレート食べてもらう日かしら」
「な、に？」
は満面の笑みで答え、シャカは思わず閉じていた目を開かせ驚いていた。
「あ、シャカが開眼した」
「馬鹿者。驚いているのだから目が開いて当然だ」
「びっくりした？」
「そうだな。口の中にちょこれーとを放り込まれるよりも遙かに驚いている」
「おシャカ様、初体験のバレンタインはいかがでしたか？」
「不思議な気分だよ」
落ち着いた声色でシャカはを引き寄せた。
身長差のある２人、はシャカを見上げ･･･またシャカはを見下ろしていた。
「口の中は甘くて、少々気だるい。こんな覇気のない食べ物が世の中にあるのだと思うと
やはり俗世のものは私には口に合わないと改めて痛感した」
「じゃあバレンタイン、嫌い？」
「さぁ･･･どうだか。しかし、君から貰うものなら悪くはない」
「え？」
シャカは笑みを浮かべ、の頬に触れ
空よりも青く澄んでいる瞳が愛しい人を見つめていた。
「シャカ、あの、それって」
「黙りたまえ。答えは聞かずとも、君は分かっているだろう」
そう言って、言葉は唇で塞がれた。
交し合った唇からは、ほのかに甘いチョコレートの味がしたという。
はつたいけん・ばれんたいん・ちょこれぃと
(初めての日、初めての味。全部君から貰うものなら悪くはない)