「誰?」
「俺は・・・坂田金時だ」
アイツ-銀時-の居ない心の隙間に入り込むのは容易かった。
源外のジイさんや、新八、神楽の3人から話を聞いていたし
もちろん「彼女」の事はしっかりとプログラミングされていた。
。
真選組唯一の女隊士で、坂田銀時が想いを寄せていた女。
想いを寄せていた・・・というよりも、むしろ独占していたという表現が正しい。
そして、肉体関係をも持っていた。
銀時のコンプレックスを全て凌駕し、出来上がった俺は
洋服を身に纏い向かった先が・・・此処・・・つまり、の居る家だった。
そう、一目散に俺はの家に向かい・・・考えた。
「アイツ−坂田銀時−」の不在でぽっかり空いた穴を「俺−坂田金時−」という存在で埋めてやる事を。
そして、の心の中から完全に銀時を抹消してやることを。
「坂田、金時?銀さんに兄弟なんて居ないわよ」
「アイツとはある意味キョウダイみたいなもんさ。しばらくの間、万事屋を任されちまってな。
それで新八や神楽が仲良くしてるって聞いたもんで・・・俺もご挨拶を兼ねてやってきたってわけ」
「あ、そう」
「隣いいかい?」
「ご自由に」
そう言って俺はの隣に腰を下ろす。
写真や色んな物を通して見てきたいたものだったが
間近で見てはっきり分かる。
「アンタ、綺麗だな」
「え?」
綺麗。
その一言に尽きた。
真選組隊士、という存在だから正直気の強そうな女をイメージしていた。
むしろ新八や神楽が持ってきた写真が、そういう我の強いものばっかりだった。
しかし、目の当たりにした女はどうだろうか?
我が強いどころか・・・凛と咲く華のように思えた。
情熱的な薔薇というよりも、静かに佇む百合。
静かに佇む百合というよりも、健気に咲き誇る菫(すみれ)。
喩えようのない、言葉が俺の頭の中を駆け巡り並ぶ。
だからだろうか?
想像以上に酷く・・・惹きつけられた。
想像以上に目に・・・焼き付いた。
想像以上に・・・――――――。
「ひでぇよな銀時も。こんな綺麗な女置いて、どっか行っちまうんだからさ。俺だったらゼッテェ離したりしねぇのに。
むしろ、一緒に連れて行くってーの。例え、天国だろうと地獄の果てまでだろうとな」
「金時、さん」
欲しいと、思った。
泣きそうな横顔を髪からそっと撫でると、は俺の方に顔を向けた。
俺を見た顔はやっぱり・・・泣くのを堪えていた。
ああ、そんな顔されたら引くに引けねぇ。
むしろ言われたんだ・・・新八のヤツから。
「さんにだけは手を出したり、ましてや自分のモノにしようと考えないでほしい」と。
釘を差されたけど、こんな泣き顔見せられたら
男としてどうよ?引き下がれるかって?
「泣くなよ、。俺が・・・金さんが側に居てやっから」
「金、さん」
答えは「NO」だ。
泣きそうな女見て、黙って引き下がれるわけねぇ。
むしろ・・・そう、コレは「チャンス」なんだ。
銀時を、主役の椅子から引きずり下ろすどころか・・・大事にしてる女まで何もかもを奪う。
全てを手に入れ、ぶち壊すには丁度いい。
何もかも手に入れた後は・・・――――――。
「・・・俺が、何もかも消してやる」
「金、さん」
「だから、今は俺だけを考えろ。俺だけを見ろ・・・俺だけに、全部委ねてくれ。
愛しいお前を・・・俺はこの世界から守ってやるから」
「金さん・・・っ」
「・・・好きだ、愛してる」
この女と共に、生きればいい。
此処ではない何処か、違う世界-アニメ-で。
だから、お前は此処から先、ずっと・・・俺だけを見ていればいい。
そして俺だけを愛すればいい、俺だけを欲すればいい。
アイツ-銀時-のことなんかすぐに忘れさせてやる、ラクにしてやる。
火遊びなんて言わせない。
コレを「本気の恋愛」にすればいい。
銀色の愛に染まりきった体を、心を、金色に塗り替えてやる。
そう、身も心も、何もかも。
火遊びには必ず当事者が居る
(言い出したのは俺、誘ったのも俺だった)