「俺の居ない半年の間に・・・一体、何があったってんだ」






半年ぶりにかぶき町に戻ってきた俺、坂田銀時。


風景そのものは変わっては居らず其処は其処で安堵した。

だが、しかし・・・変わってしまっていた。



俺の居ない半年の間で。










「何で皆、俺のこと覚えてねぇんだ!!」








そう!そうなんですよ!!


何も変わっていないかと思っていたら、一番此処が激変してますよ!!

皆「坂田銀時」、「銀さん」という主人公の存在を忘れてます。


俺の存在を忘れて、代わりに主人公の椅子に座ってるのが――――――。












「何であんな金髪サラサラストパーの奴に俺の大事な椅子奪われにゃならんのだ!」









坂田金時、という・・・金髪サラサラストレートパーマのわけの分からん男に全部奪われた。

主人公の椅子も、俺が皆と築いてきた5年分の絆も、DVDうん十巻分の歴史も。







「全部だ!!全部!!なーんであんなタイトルが完全に夕方の、しかも放送コードギリギリどころか
完全にアウトゾーン入ってる奴に奪われにゃならんのだ!!」






俺の築き上げてきた日常がまるまるそっくり、全部。
何もなかったかのように無くなっていた。


半年の間、此処−銀魂というアニメ−を留守にしたばかりに・・・。








「いや、待てよ!皆覚えてなくても、1人だけ覚えてそうな子居るじゃねぇか!!」







1人愚痴を零していたが、ふと思い出す。


この世界で少々異様な感じでいらっしゃる存在の人間が1人だけ居る。

いや、むしろ俺が一番真っ先に会いに行かなきゃいけねぇ・・・大好きな、子。








が居るじゃねぇか。俺ったら大事な女の存在忘れるところだったぜ」







俺にはが居た。

かけがえのない、俺が大切にしてやまない女。



この世界できっと唯一俺のことを覚えているであろう女の所に
俺は半年ぶりに浮かれながら向かうのだった。


だが、俺の浮かれ気分は一気に奈落の底へ叩き落された。














「どちら様でございましょうか?」



「は?」




の家に向かうと、出迎えたのは使用人のばばぁ。

いつもなら「何じゃ天パ。お嬢様なら居らんぞ」と俺の姿を見て
嫌味の一つや二つを平然と零すのだが、今し方俺は有り得ない言葉を放たれた。

どちら様って・・・有り得ない言葉だ。



むしろ完全に「赤の他人」扱いのような言い方。





「お、おいばばぁ。何寝言言ってんの?むしろ痴呆になってる場合じゃねぇだろ?
まだおめぇんトコのお嬢様は嫁に行ってねぇんだから」



「やかましいわ!ワシはお前のような縮れた天パはしらん!!」



「うっせぇ!!誰が縮れた天パだ!!コレは生まれつきなんです!!修正も何もしていない
綺麗まっさらな天然そのもの100%仕様のパーマなんです!!」



「要するに天パなんじゃろうが!!天パに縮れが混ざっておるわ!!」



「黙れくそばばぁ!!」





「ちょっと、ばぁや。玄関先で何言い争ってるの?」





聞き慣れた声に振り返る。


其処には―――――。









「っ・・・








真選組の隊服に身を包み、腰に長刀と脇差を差している
留守にする前と何ら変わらない姿をしていたが立っていた。







お嬢様、この者が・・・っ」






するとばばぁはに駆け寄り、俺をジッと睨みつける。


ばばぁはむしろ歳だ、痴呆だの物忘れだのが激しくなったに決まっている。
むしろ、ばばぁの言葉なんて論外も同然。


俺が今一番、欲しいのは・・・そう、目の前のから出てくる言葉――――。









『もう!銀さん!!何半年も私を放っておいたんですか!!銀さんのバカバカ!!』


『悪ぃな。大分待たせちまったが・・・もう心配ねぇ』


『銀さん・・・っ』


『おめぇは刀なんて握らなくていい。俺の手をずっと握ってろ、それで一生離すな。俺ももう二度と離さねぇから』


『銀さん、それって』


『俺のお嫁さんになってくれっていう言葉なんだけど、チャンはどう?銀さんのお嫁さんになりたい?』


『銀さん・・・っ!!』











なんて言う展開をすごく待っているんです!!

と結婚が出来るっていうなら、主役でも何でも明け渡して
コイツと仲睦まじく暮らすっていう手もありだと俺は考えていた。








「すみません・・・ウチの者が何かお客様に差し障るようなことを申したのでしたら謝ります。
それで、何かウチに御用でも?」




「へ?」






の口から出てきた言葉に俺は素っ頓狂な声を上げた。


待ってくれ。

俺は・・・恋愛漫画みたいな展開を待ってた。


しかし、俺の予想は遥か・・・右斜め上を行く展開が其処にはあった。



もしかして・・・ですら俺のこと、覚えてない?








「ちょっ、ちょっと待てよ。何お前まで寝ぼけたこと言ってんの?
ほ、ほら・・・昔お前を助けてやっただろ?銀さんだよ、銀さん。チャンが大好きな銀さん」



「銀さん?・・・ごめんなさい、私にそういう名前の知り合い居なくて。以前何処かで会いましたか?」









完全にの脳内から俺抹消されてる!!








・・・おま、お前までそんな事言うのかよ。忘れたのかよ、俺のこと」



「え?・・・あの、本当にごめんなさい。私、貴方のような人に会ったことないんです」







会ったこと、ないんです・・・だって。



半年の間留守にしたばかりに、何もかも・・・全部、消えた。



の中から・・・俺という存在が。








『 銀 さ ん 』









もう、俺に無邪気に笑いかけてくれるは居ない。







「邪魔したな。どうやら人違いだったようだ」



「え?・・・あの、何かお困りだったら」



「いや、いいよ。・・・・・・俺はもう、お前には必要ねぇんだな」






覚えていないアイツに無理強いな事はさせたくない。


半年の間留守にした俺が悪いんだ。
が何も覚えていなくて当然だ・・・好きな女置いて、おらぁ居なくなったんだから。



の家を出て、少し歩く。すると――――。






『よぉ、







嫌に耳にこびりついた聞き慣れた声が聞こえてきた。
俺はすぐさまの家に戻り、物陰から中の様子を伺う。

其処に居たのは・・・・・・―――――。










「どーした?」


「金さん。さっき、知らない男の人が来て」

「お嬢様に対して無礼を働いておりましたよ、金時様」








金髪サラサラストレート・・・坂田金時・・・・・・奴だった。









「知らねぇ男?何かされたのか?」


「いえ、何もされてませんよ。もうばぁや、大げさよ。相手の銀髪さんが困ってたから
金さんの所を紹介しようと思ってたんですが・・・その前に、此処を後にされて」


「銀髪の・・・・・・・・・そぉかい。また来たら教えといてくれ」


「はい」






金時の奴はに馴れ馴れしく話しかけていた。

に至ってはまるで以前の俺に接するかのようにアイツと話していた。







「金時様がいらっしゃったし、お茶でもお出ししますね。丁度美味しい芋羊羹があります」


「いいよばぁさん」


「金さん、上がっていってください。せっかくいらしたんで」


「そうかい?じゃあお言葉に甘えちまおうかな」


「では私はお茶の準備をしてまいります」






ばばぁは愛想よくいそいそと家の中へ戻る。

ていうか、扱いからして俺よりもすげぇ良いような気がする。


そして、玄関先でと並ぶ金髪のアイツ。







「ちょっと様子見がてら来たのに、悪ぃな


「いいんですよ」


「今日はもう仕事は終(しま)いか?」


「いえ、見回りの途中で家の近くを通ったもんだから少し休んで行こうかと」


「なら・・・・・・夜は時間があるって事だよな?」


「え?・・・えぇ、まぁ」


「だったら」







すると、金時のヤローはを引き寄せ耳元で何かを言っていた。
俺の居る場所からでは何を言ったのか分からず
それを聞いたは顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに一つ頷く。



前も、前も・・・は俺にあんな表情を見せていた。

それだと言うのに・・・気付けば、お前は――――――。










俺の知らない男の隣で、俺に見せていた表情をしている。









その表情も、心も、体も・・・何もかも全て「俺だけに見せているモノ」だとばかり思っていたのに。





空白は、無常にも俺から愛しい女までも奪っていった。








「・・・ちくしょ・・・」




そう言葉を零し、俺はの家を後にした。



男泣きなんてみっともねぇ。

女は星の数ほど居る・・・だけじゃない。

きっと俺に似合いの女がそのうち、そのうち――――――。













『 銀 さ ん 大 好 き で す 』












「クソ・・・ッ、手放したかねぇよ・・・おめぇだけは」








星の数ほど女はいる。

でも、は・・・俺の愛してやまないは1人しか居ない。

俺は・・・しか好きになれない、愛せない。




でも、もうその女も・・・俺の側にはいない。




絆を深めていった仲間も、愛し続けた女も
全て過去のものになってしまった。



そして、俺はフラフラとの家を離れ1人街へと歩き
酔いつぶれるほど酒を煽るのだった。


仲間と絆を深め合った大切な時間と、愛しい女と愛し合った時間を忘れるかのように。















「・・・」


どうした?誰か居るのか?」


「え?ああ・・・いえ、何も。大丈夫ですよ金さん」


「そうかい」


「(あの銀髪の人を突き放しただけで心が痛むのは、どうしてかな)」





間を空けると本当に厄介な事ばっかりだ
(みんな、一番大事な人のことを忘れてしまっていた?) inserted by FC2 system

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