「お嬢様。松平様からお電話でございます」
「オジサマから?」
明日も仕事で、部屋で寝る準備をしていると
トネさんが電話を持ってやって来た。
私はそれを受け取り、すぐさま耳にあてた。
「もしもし?」
『お〜う、ちゃん。元気にしてるかよ?』
「えぇ。オジサマこそ、お元気そうで」
電話に出るなり、相変わらずの低音ボイスで挨拶を交わす。
「しかしオジサマ、こんな夜分遅くにいかがなさったんですか?
御用がおありでしたら、明日にでも屯所のほうにお越しになればよろしいでしょう?
それか、オジサマの所に直接私が行きましょうか?」
別に電話でなくとも、何かあるなら
呼べばいいだろう。
一介の真選組隊士と、警察庁のトップなのだから・・・・位からしてみれば、私が
出向いて尋ねるのが筋。
わざわざ何で松平のオジサマが私に電話を掛けてきたのか分からない。
『ちょっとな。ちゃんに頼みたい事があるんだけんどもさ・・・聞いてもらえるかい?』
「頼みごと、ですか?」
『と〜っても重要なことなんだよぉ〜オジサマの一生のお願い、聞いてくれねぇか?』
「お話次第で、考えさせていただきます」
しかし、私はオジサマから聞いた「頼みごと」を考える暇もなく
承諾をしたのだった。
何事も準備は怠らないように!
(それは一本の電話から始まった)