「どうですか、さん。何か思い出せましたか?」
「特にこれと言って・・・何も」
「ですよね」
江戸の町を歩く、山崎と。
先ほどの「デート発言」にその場に居た土方、沖田の両者に鋭く睨まれ
慌ててを連れて屯所を出た山崎。
とりあえず、デートうんぬんは置いといて
町を歩けば何か思い出すやも知れないと思い、山崎はと肩を並べて歩く。
「(しっかし、こうも思い出せないんじゃなぁ・・・このまま屯所へは帰れないぞ)」
と肩を並べて歩く傍ら、山崎は心の中で呟いた。
無理もない。
地味キャラにオイシイポジションを持っていかれた土方、沖田両名は今現在腸(はらわた)が
煮えくり返るくらい山崎に対して、怒りを持っている。
このまま何の収穫もなしに、屯所に帰ったら確実に山崎はあの世逝き決定である。
「(俺、ヤバイ・・・死ぬよコレ)」
「あ、山崎さん」
「ん?あぁ、旦那に新八君、神楽ちゃんじゃないですか」
一人悩んでいると、後ろから声を掛けられ山崎は振り返る。
其処には、万事屋銀ちゃんのメンバー。
坂田銀時、志村新八、神楽のおなじみのメンバーが並んでいた。
「なーにやってんだおめぇ、こんな所でぇぇええって、何この地味キャラと一緒に居るんだよ!?
何で俺の隣じゃなくて、こんな地味キャラの隣に居るんだよ!!」
「旦那、流石に二回言われると傷つきます」
山崎が油を売っているところを銀時はバカにしようと思っていたが
その山崎の隣に居るの存在に気づき、銀時は思いっきり発狂した。
「あ、でもちょうど良かったかも」
「え?何がですか山崎さん」
「さん、ホラ・・・万事屋の旦那、坂田銀時さんですよ」
山崎は隣に居るに銀時を紹介した。
銀時の顔をジッと見て何も喋らない。
「な、何だよ。あんま見つめんな・・・て、照れるじゃね」
「どなたですか、この方?」
「おぃいいぃい!?!?ちょっと待てやお前ぇぇ!!!」
「旦那ぁ!!掴みかかる相手間違えてますよー!!」
顔を凝視したにも関わらず、のあっけらかんとした発言に
銀時は山崎の胸元を掴んで怒鳴り始めた。
「俺が大好きなに掴みかかれるわけねぇだろうが!!八つ当たりだコノヤロー!!」
「八つ当たりってはっきり言う事かアンタは!!」
「銀さん、落ち着いてください!明らかにさんの様子がおかしいに決まってるでしょ!
山崎さんに八つ当たりしても意味ないですから!!」
怒り心頭している銀時を何とか新八が宥める。
新八の言葉に、銀時は何とかやり場のない怒りを鎮め腕を組んだ。
何とか屯所に戻る前に死なずに助かった山崎。・・・命拾いしたな。
「ナレーションさん、だから俺の扱い酷いって」
「ナレーションは常に俺の味方だからな。お前の味方は端(はな)からいねぇよ」
「旦那、マジアンタ主役ですか?」
私のキャラに対する扱いの方面は置いといて。
「置いとかれたし」
山崎は胸元を先ほど銀時に掴まれ、少し咳をする。
するとそっと、背中に触れた手。
山崎は隣を見る。
「退さん、大丈夫ですか?」
「さん」
が心配そうな面持ちで山崎に声をかけた。
今現在オイシイポジションに居るのにかなり不憫扱いされている山崎にとっては
は女神、もしくは天使のようにも思えた。
「だ、大丈夫ですよ、これくらいへっちゃらです」
「で、でも・・・退さんが」
「俺は男ですから。これくらいでやられてたら、真選組の密偵なんて勤まりません」
「退さん」
結構不憫扱い厳しいはずなのに、の前では男気をみせる山崎。
地味キャラなのにここぞという場面で、カッコいいところを見せる地味キャラ山崎。
「おいおい、。マジどうしちまったんだよ。隣の地味キャラより
目の前には君の大好きな銀さんが居るじゃねぇか?今すぐ地味キャラから離れて俺の所に来い!
そして俺の嫁になれ!」
「所有物発言で仕舞いにはプロポーズまがいな事言ってますね銀さん」
「見っとも無い大人ネ。こういう大人にだけはなりたくないアル」
「そうだね。僕もこういう大人にだけはなりたくないね」
「ガキはすっこんでろ!・・・山崎、とりあえずポジション変われ。の隣には俺が立つ!!」
「何見っとも無い事言ってんですか旦那!?さん、何も覚えてないんですから仕方ないんですよ今は!!」
銀時の見に余る行動に、山崎はやり過ごせないと思ったのか
それとも、もう相手にするのが面倒になったのか、どちらかは分からないが
今現在のの状況を口から零した。
「、覚えてないアルか?」
「何も覚えてねぇって・・・おい、それって」
「さん、もしかして」
「記憶喪失です。今は何も覚えてないんですよ、俺らの事も旦那達の事も」
そして山崎は、に何が起こったのか
近藤から聞いた話を洗いざらい銀時達に話した。
「なるほどねぇ〜・・・だから俺らの事も覚えてねぇってワケか」
「でも、何でさん・・・山崎さんにだけそんな状態なんですか?」
新八の疑問に、山崎は答える。
「俺もよくは、分からないんですが。何か、懐かれちゃったみたいなんですよ」
「羨ましいこったぁ・・・俺もそんなに四六時中ベタベタされたいわ」
「地味キャラだからナ、地味にの目に映っただけネきっと」
「だよなー・・・あー、俺も地味キャラになりてぇ・・・今だけ」
「「アンタ等、とりあえず死んでくれませんか?」」
地味キャラを代表とした、新八と山崎は声を揃えて銀時と神楽に言い放った。
「とにかく、俺懐かれちゃったんで・・・さんを連れて江戸の町を歩いてるんです」
「おい、何か俺・・・似たような体験した事あるぞ?」
「それ前、僕らがアンタにした事だよ」
「でも、何も思い出せなかったらどうするネ?、ずっと私や銀ちゃんたちのこと忘れたままになるヨ」
神楽の一言に、全員が落ちた。
さすが神楽・・・恐ろしい子。
「と、とにかく・・・俺は懐かれた責任をとって、さんの記憶取り戻してみせます!」
「チッ・・・俺がする役目を、山崎に譲るとか・・・マジ不服のほかでもねぇよ」
「銀さん。・・・・山崎さん、大変ですけど頑張ってくださいね。僕らで力になれるような事があったら言ってください」
「ありがとう新八君。じゃあさん、行きましょうか?」
「はい、退さん」
そう銀時達に挨拶をして、二人は何処かへと歩いて行った。
その場に残された銀時達。
「なーんか、納得いかねぇ」
「銀さん?」
「銀ちゃんどうしたアルか?」
山崎とが去った後、銀時は呟いた。
「何か納得いかねぇなぁ」
「納得いかないも何も、さんが記憶失くしてるんですから仕方ないですよ」
「ちげぇよ、んなことじゃねぇって」
「え?じゃあどういう事ですか?」
記憶を失くしている事に納得が行ってないと思っていた新八だったが
すぐさまその言葉を銀時は「違う」の一言で消し去った。
「何で懐いてんのが山崎なワケ?マヨラーとかドSとかゴリラじゃなかっただけでも
よかったようなもんだけどさぁ・・・・・・何で山崎?」
「あ、そっちに納得が行ってないんですね」
相変わらず銀時が思う視点は「何で懐いている人物が山崎なのか?」というところだった。
「ったくよぉ、アレみてぇなもんじゃねぇか」
「アレって何ですか、銀さん?」
「アレだよ、アレ。雛鳥が一番初めに見たモノを親鳥と勘違いするアレだよ」
「あぁ、すり込みのことですねそれ」
「の目に俺が映ってたら、は俺に懐いてたはずなのに・・・何でよりにもよって山崎なんだよぉ〜〜っ」
「結局アンタはそういうことしか考えてねぇのかよ!!」
銀時の言葉に、すかさずツッコミを入れる新八。
山崎を不憫と思うべきか、それとも銀時を不憫と思うべきか・・・微妙なところである。
まぁ多分、山崎が僅差で不憫とは思われる。
「ちくしょう!このまま引き下がる俺じゃねぇぞ!」
すると、銀時。
が懐いてくれないという気持ちを奮い立たせ、二人が歩いていった方向を睨む。
「銀ちゃん、何するアルか?」
「絶対よからぬことを考えているに違いないと思う」
「二人を尾行する。このまま良い関係に持ち込ませてなるものかぁあ!!
は俺のモンだ!!」
「やっぱりよからぬ事だった」
「相変わらず見っとも無い大人ネ、銀ちゃん」
よからぬ事が予想できた新八と銀時の言葉を聞いた神楽は
彼を呆れた表情で見つめていた。
多分、止めても無駄だろうと二人は心の中で思っている。
「新八!神楽!子供はお家に帰ってなさい!!」
「「はーい」」
「おらぁちょっくら仕事してくっからよ」
「捕まらない程度にしてくださいね」
「行ってこいヨ見っとも無いダメ大人」
「うっせぇーお前ら黙ってろ!」
そう言って、コソコソと電柱の影に隠れながら銀時は
山崎との二人を尾行するのだった。
人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ!
(俺が邪魔するんじゃなくて、地味キャラが俺とアイツの恋路を邪魔してるだけだってーの)