「幕府高官の接待場所が何でオカマバーなんですか、近藤さん」


「高官殿が一度でいいからオカマバーに行ってみたいって言うから。
それに、おめぇ彼処の常連だろ?」


「そうですけど」





近藤の言葉にはたじろぎながら答える。


とある日の夜。場所はかぶき町。

ネオンが彩る町に、一際目立つ黒の車の中で
と近藤は話をしていた。


本日は幕府高官の接待の為に赴いたのだが
何故か其処は男達が集うキャバクラ、とは打って変わった場所。

オカマ、と言われる人種が集うオカマバー・かまっ娘倶楽部に居た。






「物好きが居たもんですね。オカマバーに行きたいなんて」


「キャバクラ遊びも飽きたんだろうよ。そこで気分を変えてオカマバーに行こうって話になったらしい」


「だったらヤローだけ連れていけばいいじゃないですか。何で私まで」







オカマバーに行きたいと言うのであれば
女性であるが居るのは正直な話、場違い。

オカマの天敵である女は目の敵にされてもおかしくないのだ。






「この店の常連であるおめぇ連れてきゃ勝手が分かるだろうし。
何やかんやでやっぱり華が居たほうがいいだろ?」


「私連れて行くくらいならキャバクラ行けキャバクラ」


「んな事言うなよ〜。おめぇだけが頼りなんだって。なぁこの通り!!頼むわ!!」







の目の前で近藤が手を合わせ頭を下げている。
上司に其処までされたとなっては、も引き下がれなくなる。

近藤の行動にはため息を零す。







「今回だけですよ近藤さん。私を二度と高官の接待に連れて来ないでくださいね」


「恩に着る!!お!タイミングよく来たな・・・ホラ、外に出るぞ


「はーい」






高官を乗せた車が到着したのか、近藤とは外に出た。


二人や他の隊士達の姿を見たのか
気分よく車から高官は現れた。







「いやぁ〜近藤くん今日は悪いねぇ〜」


「いえいえとんでもない!ご要望どおり、此処がかぶき町一のオカマバー・かまっ娘倶楽部。
ウチのモンがよく訪れる店でして」


「ほぉ〜、それは楽しみだな」






高官は近藤の背中をバシバシと叩きながら、話をしている。
そんな2人の後ろ姿を見ては呆れたようなため息を零した。








さん・・・だ、大丈夫なんスかね、此処」









すると、の背後から山崎が話しかけてきた。








「大丈夫でしょ。まぁ人手が足りないってほざいてたけど、何とか集めろっては言っておいたし」


「いや、そうじゃなくて」


「え?何?」







山崎の心配を他所に、は無表情で彼を見た。








「俺達も此処入るってことですよね?」


「当たり前でしょ。接待とはいえ、護衛も仰せつかってんだから」


「俺ら・・・食われたり、しませんよね?」








山崎を含めた隊士数名が何やら怯えたような表情でを見ていた。
そんな顔を見たは少し考えながら―――――。










「さぁ・・・どうだろうねぇ」










沖田ばりのSを含んだ笑みを見せ、店へと歩き始める。







「ほら、いくぞー」


「ちょっと待ってさん!!今の笑みは何!?何を意味してたの!?」

さん!!マジ俺ら食われるのだけはゴメンですよ!!」


「大丈夫だって〜食われたりしないよ。舐めマワされる可能性は高いけどね」


『ひぃいぃい!!』







そう言って、は近藤の元へと行き、扉の向こう
蝶、というより蛾が舞う世界に向かった。


扉を開けて、中に入ると
大勢のオカマたちがドスのきいた声で「いらっしゃいませぇ〜」と出迎えた。

は馴染みの店なのか堂々としているも
彼女の後ろには山崎や他の隊士達が怯えながら其処を歩く。

すると、彼女の前に巨人のようなオカマが現れる。








「今日はありがとうね」


「どーいたしまして、西郷さん」







現れたのは、店のオーナーであるマドマーゼル西郷。


と並ぶさまはまさに美女と野獣そのものの光景。







「あら。後ろの男達は?」


「ウチの隊士達。まぁ・・・・・・可愛がってやってよ」





はそう言いながら空いている席へと向かい
腰に差していた刀を置いて、座る。






「さっそく俺たちを売りやがった!!」


「ひ、ひどすぎる!!」


「お、お慈悲をぉおぉお!!」




「アホか。私は1人で飲みたいの。あんた等の相手はオカマがすんの、つーわけだから西郷」






手で払う仕草をして、完全に山崎達を厄介払いした。







「アンタも相変わらず鬼ねぇ。みんなぁ〜真選組の人達と楽しんじゃってぇ〜」


『はぁあぁいい』







西郷の声と共に大勢のオカマが山崎達を取り囲み
別の席へ強制連行していくのだった。


ようやく厄介払いが出来たのか、は安堵の溜息を零した。







「相変わらずねぇ

「もぅ〜容赦ないんだからぁ」


「アゴ美、ワカメ」





すると、の座っている席に店の古株である
アゴ美(あずみ)とワカメがニコニコしながらやってきた。

馴染みの顔ぶれには笑う。






「私の相手は相変わらずあんた等ってワケ?」


「ママや他の娘はみーんなアンタんトコの上司や部下、それとお偉いさんの相手だしね」


「でも今日は、心強いヘルプが居るんだから」


「心強いヘルプ?」





ワカメの言葉には首を傾げる。







「何よもぉ〜・・・呼ばれたかと思ったらアゴ美達の席なのぉ〜?」


「仕方ないですよ。ていうか、遅れて来といてワガママ言うとかどんだけなんですか?」




「え?」






ふと、聞き慣れた声には振り返る。

其処には――――――。











「どもー・・・パー子で」

「初めましてパチ恵で」


「・・・・・・・・・」







振り返った姿にの目が点になり、そして彼女を見ている2人の人物も目が点になった。



其処に立っていたのは
パー子とパチ恵という源氏名を名乗る、女装した坂田銀時と志村新八の2人だった。




酒の肴に小粋なオカマはいかが?
(気分を変えてやってきた所に居た見知った人達)
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