最近、メル友が出来た。







ー・・・メールばっかしてねぇで銀さんの相手はー?」


「すいません銀さん。メル友と何か話が盛り上がっちゃって」






メールを打ちながら、私は銀さんの言葉を返した。


他愛もない話を延々としているんだけれど
それが何だか楽しくてたまらない。







は銀さんより、メル友の方が大事なわけぇー?」


「違いますよ。銀さんの方が大事に決まってるじゃないですか」


「お!」


「え?・・・あっ、い、今の言葉は無かったことに」






思わず銀さんの言葉に乗っかってしまい、私を携帯で
メールを打つことだけに集中した。

しかし、今さっきの言葉を無かったこと・・・になんか、目の前の人物がしてくれるわけない。







「出来るかよ、んな事」



「あっ、ちょっと私の携帯!?」







すると、銀さんは私の携帯を取り上げ閉じた後
自分と私との身長差を利用して、手の届かない位置に携帯が持って行かれた。

背伸びをしようが、必死に手を伸ばして取ろうが・・・銀さんはニヤニヤしながら
私の携帯を返してくれない。






「銀さん、返して下さい私の携帯!!」


「えー?なにー?聞こえませんけど―?」


「携帯返して下さいっ!!」


「ダメ―。メル友ばっかりにチャン構うから嫌ですぅー」


「いいじゃないですか別に。友達とおしゃべりして何が悪いんですか!!」


「だったら俺ともお喋りしろよー。なーんで顔も見えない相手とお喋りするわけー?
喋るお口が付いてる俺より、喋らない手紙だけのやりとりの相手の方がおめぇは大事なんだな」






そう言いながら銀さんは取り上げた携帯を私に投げ返し、立ち上がり
何処かへと歩いていく。

背中から感じる不機嫌なオーラ。


確実にコレは、怒ってる。








「ぎ、銀さん・・・っ」


「もーいいよ。せっかく会う時間出来たってーのに、何でおめぇは俺よりも
顔も見えねぇ、喋りもしねぇ相手と楽しくやりとりしてんだか」


「あ、あの私・・・っ」


「ハイハイ。どーぞごゆっくり、メル友なり何なりとお喋りしててくださいな。
邪魔者はパチンコなり何なりに出かけてきますんで」


「銀さん!!」







そう言って、銀さんは扉を荒っぽく閉めて出て行った。

部屋に残ったのは私だけ。
銀さんを怒らせてしまったのは明らかに私のミス。


彼処まで機嫌を悪くさせてしまえば、多分しばらくは顔を合わせて話してくれないろう。
下手したら2〜3週間は口も聞いてくれない可能性だって有り得る。






「どうしよう」





戸惑っていると、手に握られた携帯。

私はそれを開いてメル友にこの事を相談してみた。









『サブちゃん。ちょっと相談に乗ってくれる?』









顔も見えない相手はアダ名でサブちゃん。
年上の男性、と本人から聞いた。

でも、やましい感情は私にもないし、向こうも無いものだと思っている。


サブちゃんに送ったメールはすぐさま返事が届く。








『どうしたの、たん?』







向こうは向こうで、私の事を「たん」と呼んでいる。
オタクか何かか?と思うが、其処も本人に聞いた所本人は公務員をしているらしい。
呼び方は少しでもこちらに馴染めるようにしているのだろう。








『あのね、私・・・彼氏と喧嘩しちゃった。サブちゃんとばっかりメールしてるからって』








私は先ほどの事を有りのまま、サブちゃんへのメールに書いて送った。


すると、ものの数秒で携帯が鳴りメールが届く。
メールの文面を両手打ちしているのか、と思うくらい返信速度は早い。








たん、彼氏居たんだよね。ダメだぉー、彼氏と居るのにメールしちゃ。そりゃあ彼氏も激おこぷんぷん丸だょ』








オタク、では無いのだが・・・一体公務員の彼は何処で
そういう知識を身に付けているのか、知りたくなった。


だが知識の会得は、置いといて
私はメール越し・・・彼と話を始める。







『だって、サブちゃんとのメール楽しんだもん。他にメール出来る子、私の周りに居ないし』



『でも、彼氏と居るときのメールは失礼だと思うよー?たんがもし逆の立場だったらどう思う?』









逆の立場。


もし、銀さんがメールを打てる人で
私と会うよりもメールを優先させていたら・・・?







『激おこプンプン丸』


『でしょぉ?彼氏と居るなら、メールは放っておいていいから彼氏と居てあげなきゃ。
それくらいでサブちゃんは怒りませんよぉ〜』








年上の説得力の大きさ、とはまさにこの事。


私の周りには
説得力の欠片もない人間ばっかりだから(特に職場)。


本当にそう言われると心が救われる。








『ありがとーサブちゃん!もう、サブちゃんみたいな人が仕事場の上司だったらいいのになぁ〜』



たんみたいな良い子が部下だったら、ギザ可愛がっちゃうぞぉ〜』








こんな人が仕事場の上司だったらどれだけ恵まれているだろうか。
むしろ、一緒に仕事をしたら楽しいだろうなぁ〜なんて思ってしまった。



引き抜き、とか有りかな?


引きぬくことを前提で・・・サブちゃんに会って話してみたい。








『ねぇ、サブちゃん・・・今度、会わない?もっと色々、サブちゃんと直接、話がしたいな』








そうメールを送った。

返信速度は凄まじい速さだから、すぐに返ってくるはず。
メールを待っていたら、玄関から扉を開ける音が聞こえてきた。

私は携帯をソファーに置いて、すぐさま駆ける。


其処に立っていたのは紛れも無く・・・銀さん。



しかし、さっきの事。
本人は未だ機嫌が悪く、私から目を背けて靴を脱ぎ始める。







「んだよ、まだ居たのかよ」


「ぁ、あの」


「おらぁパチンコ行って、ボロ負けして傷心中なの。さっさと見回りにでも何でも戻りやがれ税金泥棒」








靴が脱げて、銀さんは首を掻きながら私の横を通り過ぎる。
だから、咄嗟に―――――。









「・・・・何だよ。人様の服掴んで、何するんですかコノヤロー」








銀さんの着流しを少し掴んで動きを止めた。








「離せって。服伸びっだろ」


「ご・・・ごめんなさい」


「あ?」


「さっきは、すいませんでした」







謝れば済む問題、かどうかなんて分からないけれど
とにかく悪いのは私だというのは自分でも理解している。

だから後は、謝って許してくれるかどうか・・・銀さん次第になる。





「俺が謝られて許す人間だと思うか?」



「それは、半々かと」



「ったく。最近のガキは人と話す時にもやれ友達とメールだの、やれ友達と電話だので常識がなってねぇんだ。
カレカノの大事な時間云々差し置いても、さっきのおめぇは常識的に有り得ねぇって事なの」



「すいませんでした」



「俺はそれで怒ってんの。まぁもちろん、が俺の相手してくれなかったのでも怒ってるけどな」



「すいません、銀さん。今度からちゃんと銀さんの相手します」



「今度じゃなくて今しろ、今!」






そう言いながら銀さんは私の体を軽々と肩に担ぎあげ、部屋の中に入る。





「ちょっ、ぎ、銀さん!?」


「あっぶねー、危うくを3週間お預けすっとこだったわ。あー良かったパチンコ屋入る前に思い出して戻ってきて」


「結局そういうのでアンタ逆戻りしてきたんかい!!」


「というわけでチャン。今からたっぷり銀さんの相手しろよ?あと、さっき相手にしなかったお仕置きもしてやらぁ」


「ふぇ、えっ、ちょっ、私見回りに」


「ハイハイ。おめぇが戻るのは見回りじゃなくて、俺の相手ね」





銀さんの肩に担がれて、和室に連れこまれる。

ソファーに置いた携帯を見ると、メールの着信を知らせるランプが点滅していた。
中身はきっとサブちゃんからの返事。

どうなのか気にはなっているけれど、和室に入って襖を閉められたら
そんな事、次に携帯を開けるまで忘れてしまっていた。




















「いざ、会うとなると緊張するなぁ」





それから数日後。

銀さんの相手をしたあの後、結局夜携帯を開き
サブちゃんからのメールを読んだ。


『会ってもいいけど、幻滅しないでね?』という文章に
それはOKの意味と捉えてよかったのだろうと思い、場所と日時を記した文面を送り
私は現在、サブちゃんの到着を待っていた。

しかし、今までメールでしか話していない人。


顔も分からなければ、声も分からない。


新八から聞いた話だが、メールやネットで知り合った相手と会うときは
それを手がかりに会うという手段になっている。

多分、サブちゃんから何処に居る?みたいなメールが届くに違いないだろう。


そわそわしながら待っていると、ポケットに入れた携帯が振動で何かを伝える。
手に取るとメール。


もしかしてサブちゃん!?と思い、急いで開く。





たん、ゴメンごー。ちょっと仕事の会議が急に入って会えなくなっちゃった。
せっかくたんに会えたのに』





メールの文面は仕事の都合で会えなくなった、というサブちゃんからのメールだった。
仕事ならば致し方無い。

私は、気にしないでという文面を交えたメールを打ち込み
送ろうとした矢先、ディスプレイが突然着信画面に切り替わる。相手は、上司の土方さん。






「はい、何ですか?」


、友達と会う約束してるところ悪ぃが大丈夫か?』


「友達が仕事で来れなくなったというメールが来たんで、今は暇になりました」






素直に今の状況を土方さんに伝えると、電話向こうのかの人は「なら屯所に戻って来い」と言われ
通話を切断し、私はすぐさま真選組屯所へと足を戻した。














「重役会議に一端の私が付いてきて良かったんですか?」


「総悟が捕まらねぇんだ。近藤さんは会議室で合流するからな。お前は総悟の代理って訳だ」


「会議終わったら総悟とっ捕まえて、殺していいですか?」


「煮るなり、焼くなり、炙るなり、好きにしろ」


「はい」




どうやら、私は重役会議・・・しかも総悟の代理で呼ばれたらしい。
サブちゃんと会う事も出来なかったのだから、タイミングが良かったといえば、良かったのだろう。


土方さんの後ろを私は歩く。
すると、目の前から白の真選組のデザインと似たような隊服を身に纏った男がやってくる。

そして土方さんは男の目の前で動きを止める。その背後で私は目を鋭くさせた。





「これはこれは、真選組の土方さん。貴方も会議に?」


「これはこれは、見廻組の佐々木殿。アンタも会議に?」






目の前の男。

見廻組局長、佐々木異三郎。
文武両道であり「三天の怪物」と呼ばれる、名門佐々木家の長男。
私から言わせてみれば、エリートでボンボン。凄まじくいけ好かない人種になる。


ふと、佐々木の目が私に来る。





「ほほぉ・・・これが、あの真選組の華という人ですか。さん」


「お名前を覚えてくださって光栄ですわ」


「貴女も言わば名家の生まれ。戦争で亡くなられたお母様は確か名家の方のはず。こんな野蛮な人達と居るのはさぞ嫌でしょう」


「私にとっては家柄なんてどーでもいい話です。堅苦しいエリート様の中に居るよりか、田舎で育った田舎娘は
野蛮で無鉄砲な人達とつるんで居たほうがよっぽどいいですから」


「貴女ともどうやら反りが合わないようですね」


「奇遇ですね佐々木殿。私も貴方とは反りが合わないようです・・・一緒に仕事するのは無理ですわ」


「悲しいですねぇ。良い子だと思っていたのに残念ですよ」






そう言いながら佐々木は部下を連れて横切っていった。


ああいう人種とは死んでも仕事はしたくない。
私の職運は真選組に入った時に尽きたようなもんだけれども
今では「此処が一番」と思える場所でもある。

だから、ヘッドハンティングされても見廻組になんぞ死んでも行かない。

破廉恥行為全開の上司でも、年がら年中瞳孔開きっぱなしのマヨラー上司でも、破壊活動のドS上司でも
あんな血も涙もない男の下に付くよりか100万倍マシ。





「(後でサブちゃんに愚痴、聞いてもらおうかなぁ。サイアクな男に会ったよ―みたいな)」




気持ちの悪いモノは、何かで吐き出すのが一番。

今の私には大切な人の他に、顔も声も知らない友達が居る。
例え今は、会えなくても・・・何時か、会える日が来ると信じて、機械の文面に言葉を綴ろう。



「いつか、会えるよね・・・・・・サブちゃん」



















「・・・・ホラ。もう会えたじゃないですか・・・・・・たん」



「局長?」



「何でもありません。行きますよ」





見えないモノ程、実は見えている
(貴女は知らない。私が貴女の会いたい人なんて) inserted by FC2 system

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