俺には、好きな奴がいてだなー。
奴っていうか・・・子・・・好きな子が居る。しかも、そいつが年下で――――。
「先生」
「うぉっ!?な・・・なんだか。先生、小心者だからいきなり声掛けんな。心臓が止まっだろ」
「そうですか」
「もうちょっと、いい態度してくれたってよくね?」
自分のクラスの生徒です。さらに言うなら――――。
「そういうのは、女子に言って下さい。男の僕に言われても困ります」
男です。
そう俺が好きになった子は――年下で、生徒で、性別男の子!
はい、色んな意味で銀八先生警察に捕まります(ついでに教員免許剥奪されます)。
でも、よく言うじゃねーか・・・『好きなものは、好きだからしょうがない!』ってさ。
(別にどっかのゲームの名前パクったわけじゃないからな。)
「とにかく男の僕に言うのはやめて下さい。周りから気持ち悪がられます」
「へぇへぇ。んで、ぼっちゃん・・・何でごぜぇーましょうか?」
まぁが言う事は最もだよな。
男が男、好きになるのとか世間一般論から超ズレまくってる。
俺は頭を掻きながら、の話をとりあえず聞く事にした。
「これ、先日休んでた分のプリントです」
「おぉ、そうだったな。ごくろーさん」
からプリントを渡されそれを見る。
ふと思い出す。
そういえば、コイツ昨日体調不良で休んでたんだよなぁ。
道理で教室が異様に寂しくて、なーんか物足りなさを感じてたワケか。
「・・・・・・・・・・」
「先生?」
ダメだ・・・俺、相当末期だ。
俺は思わずから顔を逸らし、頭を黒板に付けた。
欠席で寂しいとか、物足りないとか思ってる時点でアウトだ。
何で、コイツ・・・・・女じゃねぇーんだよ。
「先生・・・・あの、提出したんでちゃんと単位くださいね」
「お・・・あぁ、分かってる」
に声を掛けられ、俺は何とか我に返り咳払いをする。
「まぁ・・・なんだ。体調悪いなら、あんま無理すんなよ」
「あ・・・はぃ」
俺はそう言いながらの頭を撫でる。
うわっ・・・髪の毛、超サラサラ・・・羨まし〜・・・じゃねぇし。
男がこんなサラサラヘアーでいいのか?むしろずっと撫でていてぇ〜。
スパーン!!!
瞬間、を撫でている手をとある魔の手によって裂かれた。
「・・・土方ぁ」
「すんませーん・・・ハエが飛んでたもんで、つい」
を撫でていた俺の手は、土方によって裂かれた。
どーも・・・俺がと話をしている最中ばっかりをコイツは邪魔してくる。
「・・・見回りに行くぞ」
「あ・・・は、はい・・・」
そう言って土方の奴はの手を握り、教室を去っていく。
てんめっ・・・俺だって、の手ぇ握った事ねぇのに!
(いや、握ったら俺の教師生命が絶たれる。)
ズカズカとの手を握り教室を出て行く土方。
俺は呆然としながらそれを見ていた。
「・・・・・・・・・」
もしかして・・・土方も、の事?
「えっ・・・うっそ〜〜ん!!」
俺は大声で叫んだ。
その声は教室中に響き、その場に居た誰もが驚いた表情で俺を見ていた。
俺は軽く咳を2〜3回し、何事も無かったように
そそくさと職員室へと戻るのだった。
「(土方のヤロー・・・独り占めしやがって)」
心の中でそんな悪態を付いて、苛立ちを周囲にばら撒いていた。
正直、まぁ・・・女じゃなくて、男に恋愛感情持った時点で
アウトだし、俺とアイツも・・・同じようなもんか。
「どーすっかなぁ・・・」
俺は頭を掻きながらふと、窓の外を見た。
すると、向かいの校舎に土方との姿が見えた。
見回りで何かを捕まえたのか、土方がの頭を軽く叩いている。
それでが・・・・・・・・笑う。
心が、チクって・・・何か、痛ぇのが刺さった。
「・・・いってぇ・・・」
アイツの笑顔が見れても、笑ってる相手は俺じゃなくて。
おもちゃを取られた子供みたいに、本当はむしゃくしゃしてる。
あー・・・腹立って仕方ねぇわ。
「こりゃ、俺ホモ決定だな」
てか、恋愛なんて個人の自由だし。
俺が誰を好きになろうが、外野にギャーギャー騒がれようが、もう知ったこっちゃねぇ。
好きになっちまったんだ・・・腹くくれよ俺。
いや、もう準備は出来てんだよ―――――この、障害のある恋に。
「待ってろってんだコノヤロー」
そう呟いて、俺は歩き出したのだった。
恋は障害があった方が燃えるって言うだろう?
(俺が好きになったのは、年下で生徒で・・・・・・男だった)