「御免下さい」
「あーアル!!」
「よォ」
「さんこんにちは」
見回りの最中。
フラッと万事屋に立ち寄ったが、銀さん達の姿が見えず
もしかして、と思い下の階に店を構えているお登勢さんのスナックへと私は来た。
案の定、万事屋のメンバーは此処に降りて
銀さんと神楽はご飯を食べていた。
「やっぱりみんな此処に居たんですね」
「何だい、。アンタまで飯たかりに来たのかい?」
「ご飯はさっき行きつけのお店で済ませてきました。お水かお茶貰えますか?」
「それくらいならお安いご用さ。全く手のかからない子ってのは
まさにこの子の事だねぇ。アンタも見習いな銀時」
「うっせぇよクソババア。ホラ、新八ずれろ。、銀さんの隣においでー。
むしろ銀さんの隣はいつでもチャン専用で空けとくからな」
「さんが来るとすぐ鼻の下伸ばすんだから。さん、どうぞ」
「ゴメンね新八。ありがとう」
新八に横にズレてもらい、私は銀さんの隣に座る。
そして目の前にお登勢さんが用意してくれた温かいお茶が置かれた。
「、手に持ってるそれ何アルか?」
ふと、神楽が私の手に持たれていたある物に気が付く。
「ああ、これ?たくさん咲いてたから、作ってきたのお花の冠」
私はテーブルの上に、作ってきた花の冠を置いた。
「おーすげぇな」
「へぇ〜器用じゃないかい」
「うわぁ〜凄いですねさん」
「川原降りたらいっぱい咲いてたから、懐かしくなって作っちゃったの」
「冠なら付けてイイ?」
「付けてあげようか。神楽おいで」
私が手招きをすると神楽は目を輝かせてこちらにやってきた。
頭に作った花の冠を被せると、神楽は飛び跳ね喜んでいた。
「うほー!凄いネ!!可愛いし綺麗ネ!!」
「喜んで頂けてありがとうございます。でも、コレ作ってるとよく探したくなるんだよね」
「探すって一体何をですさん?」
花の冠を作っている最中・・・よく、私は「ある物」を探していた。
見つかるかどうかも分からない幻の―――――――。
「四つ葉のクローバーよ。幸せになれるっていうソレ」
「あぁ聞いたことあります。でもアレって幻なんですよね」
「幻って言われるくらいだからどれくらいの確率なのかなぁ〜って思って」
「確率なら、此処に居るポンコツからくりに調べて計算してもらえばいいだろ?」
「お呼びでしょうか?」
「うわぁあ!!いきなり出てくんなよおめぇえ!!ビックリすんだろうが!!」
銀さんの言葉に、どこからともなく
からくり家政婦のたまが現れた。
銀さんはおろか、私もいきなりの登場にちょっと驚いた。
「何か御用でも?」
「ねぇ、たま。四つ葉のクローバーが見つかる確率ってどれくらいなの?アバウトでいいから計算してもらえる?」
「四つ葉のクローバー・・・・・・かしこまりました。少々お待ちを」
すると、たまは黙りこんだ。
多分計算しているに違いないと思い、彼女の返答を待つ。
「出ました」
「それで?どれくらいなの?」
「四つ葉のクローバーが見つかる確率は1万分の1の確率です」
あまりにも生々しいその数に、頭が混乱し始める。
「規模が大きすぎて分からねぇよ。もっと分かりやすくしてくれや」
すると、銀さんがウマイ助け舟を言い放つ。
「分かりました。大体それと比較的な確率を申しますと・・・」
「うん」
「人間が自動車事故で亡くなる確率と同じ、ということです」
「怖すぎる情報はいらねぇよ!!幸せ求めすぎて三途の川に逝っちゃってどーすんだよ!!」
「あと、男性の勃起した時の長さの確率を見つけたんですが」
「おめぇの頭ん中は一体どんな確率計算機が入ってんだよ!!源外のジジィのとこ行ってそれ直して来い!!・・・ったく」
ひとしきり銀さんがたまに罵声を浴びせ、椅子に座り直した。
私はその隣で苦笑を浮かべながら、たまを見る。
「要は見つけにくいってことなんだよね、たま」
「はい。四つ葉のクローバーが生まれるまでが見つかる確率よりも更に低いので、見つけにくいんです。
しかし四つ葉だけに限らず五つ葉、六つ葉、七つ葉、八つ葉といった
葉の数をしたモノ少なからずある、という確認があったそうです」
「でも、見つけるだけでも困難なのに見つけた人は凄いですね」
「つーか、。なーんでそんな確率の話聞いた?」
「え?あ・・・ああ」
銀さんの言葉に、私は神楽の頭に被せた花の冠を見る。
「昔、ああやって作った時・・・母がよく、近くで探してたんです。見つけたら幸せになれるからって。
母は平和主義者のような人だったので・・・家族三人幸せに暮らせたら、って言いながらいつも探してたんです。
結局母は四つ葉を見つけられず、死んでしまいましたけどね。
欲しいなぁって思ってたんですけど・・・其処まで低い確率叩きだされたら探す気失せちゃいました」
花の冠を作りながら、自分でもふと探してみた。
だけど、1万分の1の確率で見つかるものなのだからそう容易く見つかるわけもない。
幸せを掴めず、母はこの世から居なくなってしまった。
「さてと・・・のんびりしたし、そろそろ見回りに戻るとします」
私は椅子から立ち上がり、扉へと歩く。
扉を少し開けた後、私は振り返る。
「神楽、それあげる。お花が枯れたら捨てていいからね」
「何言ってるアルか!水につけたらお花は大丈夫ネ!!せっかくが作ったんだもん!!大事にするアル!!」
その言葉に驚きながらも私は笑みを浮かべる。
「そう。なら大事にしてあげてね。お邪魔しました」
「お勤めご苦労さん」
お登勢さんの声を耳に入れ外に出て扉を閉め、かぶき町を歩き出した私。
1万分の1の幸せ。
きっと、数限りない幸せなのだろう。
欲しいけど、今でも十分に私は幸せだ。
家族が居て、仲間が居て、友達が居て・・・大切な人が居る。
コレ以上の幸せを望んだらバチが当たりそう。
でも、心の何処かに「いつか手に入ったら」なんて、思ってしまった。
1万分の1の確率の幸せ
(ふと、彼女はそんな事を考えていた)