ある人間をベースに俺は作られた。
ある人間をモデルとして俺は作られた。
だから、顔、声はある人間と同じだ。
違う部分といえば、内面的な性格だけ。そのほかは大体あの男に似て
俺は作られた。
だからか、好きになる人も同じだった。
そう、俺はその人間の好きな女性を好きになった。
手の届かない、叶わない恋を俺はしていた。
「はぁ〜・・・」
『どうしました、白血球王』
「はっ!?・・・た、たま様」
1人ため息を零していると、主人であるたま様(ドット)がやってきた。
突然のたま様の登場に俺はすぐさま跪いた。
『ため息が多いようですが・・・何かありましたか?』
「いえ・・・あの・・・何も。たま様の体内はこの白血球王が居る限り、大丈夫です。ご安心ください」
『そうではありません。私が心配しているのは貴方のほうです。他の白血球たちが貴方がため息ばかりが
多いと言っていたので・・・心配で見にきたのです。何かあったんですか?』
ドット絵であるたま様の表情は分からないが、声からして
この俺を心配していることが伺えた。
信じてもらえないかもしれないが・・・・・話してみるか。
「実は・・・」
『はい』
「よく、俺にも分からないのです」
『どういうことですか?』
「俺は、俺は!・・・貴方を守るセキリュティとして、貴方のデータや記憶等で生まれました。
ですが・・・こんな気持ち、俺は・・・どうすればいいのか・・・っ」
『白血球王』
「たま様教えてください!どうすれば・・・・・・」
「俺は様に逢うことができるのでしょうか!?」
『え?』
たま様が、あの人に視線を合わせればあわせるほど
俺はあの人に魅入られ、視線を逸らせなくなる。
たま様があの人と会話をすればするほど
俺はあの声をずっと聴いていたいと、そればかり望んでしまう。
どうすればいい?どうすればいい?と悩んでしまう。
挙句、逢えることもできないのに・・・逢いたいとまで思い始めた。
「分からないんです。たま様が、様と逢うたび、話すたび・・・俺のこの胸はしめつけられて。
悪性のウィルスを駆除しても・・・俺のこの気持ちが晴れることはありません。俺は俺は一体どうしたというのでしょうか!!」
『白血球王、それは・・・』
『恋なのではないでしょうか?』
「はい?」
たま様の言葉に俺は目を見開かせ驚いた。
恋?・・・恋とは?・・・コレが、恋なのか?
『しかし、まさか・・・貴方が様をお慕いするとは』
「うっ・・・」
たま様の言葉に俺は言葉も出なかった。
当たり前だ、こんなこと・・・普通に考えたら信じてもらえない。
たま様があきれて当然なのだ。
『さすがは銀時様のデータで構築された貴方というべきなのでしょうね』
「え?・・・あの、男?・・・たま様それは一体どういう!?」
たま様の口から零れてきたのは
俺のこの顔と体、そして強さ(内面的な性格以外)・・・そのデータの全ては、坂田銀時という男から得たもの。
なぜあの雑菌だらけの男が?
『貴方と銀時様は性格以外は瓜二つ。好きになる相手が同じというのは決しておかしいことではありません』
「あの男も・・・様を?」
俺の言葉にたま様は頷いた。
あの男も、彼女のことを。
『貴方が様をお慕いしているのでしたら、後押ししないわけにはいきません』
「たま様」
『貴方には幾度と私の体を守ってきてもらっている恩があります。その恩を少しでも私は返したい』
「そんな・・・たま様のことをお守りするのが我々セキュリティソフト白血球の務め。恩などと・・・」
『いいえ。これはせめてもの恩返しです。貴方が様にお逢いできるよう、私も出来る限りの力で手助けします』
「たま様・・・・・・・・ありがとうございます」
「では早速戻って源外様に相談してきます」と言って、ドット化したたま様は此処を去った。
俺は消え行くドットを見つめた。
逢える・・・逢えるのか本当に、あの人に。
いや・・・・・・俺は――――――。
「逢いたい・・・あの人に」
様・・・俺は、貴女に逢いたい。
出来損ないのセキリュティソフトだが・・・貴女に逢えるのなら
俺はもう何も望まない。
貴女に逢えるのなら、それ以上の幸せ・・・何もいらない。
「・・・様」
頭上高く伸ばした手の先には、光。
まるで雲をも掴むみたいな・・・俺の恋。
届いてくれ・・・俺の、この溢れ出しそうな想いを。
恋愛とは離れた分だけ、燃える恋が其処にはある
(例えば、人間に恋をしたセキリュティソフトの王様とか?)