「銀ちゃん、私コレ行きたいネ」
「あ?」
とある日、神楽が一枚の紙切れを見せてきた。
新八がそれを受け取り、俺は後ろからそれを見る。
「かぶき町納涼祭りぃ〜?」
「町内会の夏祭りですよ。ほら、場所が近所の神社です」
「ホントだ」
神楽が持ってきたのは、近所の神社で毎年行われている
夏祭りのお知らせのチラシだった。
つかどこで拾ってきたんだよこのチラシ。
「ねー!どうせ暇だから行こうヨ!ていうか、行きたいネ!!」
「行きたいっつっても何しに行くんだよ?」
「いろいろ食べ歩くネ!!焼きそば、焼きトウモロコシ、綿あめ、リンゴ飴。いっぱい遊ぶものもあるヨ!
射的に、ヨーヨー釣り、お化け屋敷とカ」
「お化け屋敷は激しく却下だな」
「そこの受け答えは早いですね銀さん」
神楽の口から出るのはやはり食い物か。
大体は予想していたが、このガキから出る言葉はそれしかねぇ。
俺は頭を掻きながら目の前ではしゃぐ神楽を見てため息を零す。
「神楽ちゃん、神楽ちゃん。はしゃぐのは大変よろしいこったが・・・そんなお金、どこにあるってんだよ?」
「え?」
現実を見ろ。
ウチには金がねぇ!痛いほど分かってる、だがコレが現実だ!
祭りに行く金すらねぇよ。
「金がねぇのに、行けるかよ」
「そうだよ神楽ちゃん。行きたい気持ちは分かるけどお金がないからね」
「じゃあ仕事しろヨ」
「あったらとっくの昔にしてるだろ。ねぇから言ってんだ。夏祭りは諦めろ」
「えー!!やだヨー!お祭り行きたいネ!」
俺が言うと神楽は駄々をこね始めた。
しかも相当これは行きたい証拠。行かせてやりたいのはやまやまだが
如何せん俺の財布は相変わらずすっからかん状態。
さすがに今回ばかりは俺も心を鬼にする。
だって金ねぇもん。ねぇもんはねぇんだ!!
「銀さん。神楽ちゃん行きたがってますよ?」
「放っとけ、放っとけ。そのうち静かになる」
俺はそう言いながら、椅子に座ってジャンプを読む。
相変わらず神楽は「夏祭り行きたい」の一点張りの声を上げる。
そんな神楽を新八はなんとか宥め、俺は完全無視を貫く。
だが、こうもうるさいと――――――。
「銀ちゃん行ーきーたーいー!!!」
「だぁぁぁああ!!!もううっせぇな!神楽っ、少しは学習しろ!!ウチには金がねぇんだよ!!
底辺状態なの!カスカスなの!!そこらへん分かりなさい!!」
「分かりたくないネ!!元はといえば、銀ちゃんがパチンコで負けるのがいけないネ!!」
「うっ!?」
痛いトコを突かれると、俺も反論の仕様がない。
「銀ちゃんがパチンコに負けるからご飯も質素ネ。何で負けてくるアルか!!
行ったからには勝って、金増やして帰って来いヨ!!」
「神楽ちゃん。良い事言ってたのに、後半大分汚い話になってる」
「うっせぇな!大人の遊びだ!!ガキがいちいち口出しすんじゃねぇーよ!!」
「アンタも開き直るなよ!!・・・と、とにかく二人とも、落ち着いて」
新八が俺と神楽の言い合いの宥めに入ろうとするも
生憎とちょっとカッティーンと来た俺の怒りは治まるわけがねぇ。
売り言葉に買い言葉。
神楽の言葉に俺は大人気なく言い返し、そのまま口げんかに発展していた。
「真昼間から何やってるんですか。外まで馬鹿でかい声、聞こえてきてますよ」
「あ、」
「ー!!」
「ちょっ、神楽てっめ!俺が呼ぼうとした時に重ねんな!!」
すると、其処に俺の可愛い彼女のが登場。
の名前を俺が呼ぼうとした時、神楽が泣きながらの名前を呼びアイツに抱きついていった。
「っと・・・か、神楽?ど、どうした?」
「ー、ー聞いてヨー!銀ちゃんも新八も酷いネー!!」
「え?何が酷いの?」
神楽はに抱きつき、胸をスリスリしながら泣きついてる。
つか、おい!!!!
何アイツ羨ましいことしてんの!!
アイツ一目散に抱きついて、の胸スリスリしてんの!?羨ましいことしてんじゃねーよ!!
俺はそんな神楽を睨みつける。
くそ・・・羨ましいことしやがって・・・っ。
「実は、神楽ちゃん・・・近所の夏祭りに行きたいって言ってて」
「だったら連れて行ってあげたらいいじゃない。本人が行きたいって言ってるんだから」
「行けるわけねーだろ。ウチ金ねぇもん」
俺は頭を掻き、不貞腐れながら言葉を返した。
「じゃあ、神楽・・・私と行こうか?」
「え?」
「は?」
「さん?」
俺の言葉に、は神楽を見ながら言う。
彼女の言葉にその場に居た誰もが目を見開かせ驚いた。
はというと、あの夏祭りのチラシを見ていた。
「・・・でも、仕事ハ?」
「ん?ちょうどこの日非番だし。家に一日中居るのも勿体無いからね。私でよかったら一緒に行こうか」
「ホントカ!?ホントに夏祭り行くアルか?!」
「私でよければだけど」
「もちろんネ!!なら大丈夫アル!!」
「じゃあ決まりね・・・ウフフ」
喜ぶ神楽の頭をは笑みを浮かべて撫でていた。
あ、何かつまんねぇ。
チャン・・・銀さんに構ってくれない。
俺はさらに不貞腐れるように椅子を回し、窓の外を見る。
ちぇっ、女はいいよなぁ〜・・・。
あーあ、もう銀さんいじけちゃおうかなぁ〜。
「じゃあ、神楽・・・浴衣着ていこうか」
ふと、の口から零れた言葉が耳に入ってきた。
浴衣、だと?
「浴衣?・・・姉御たちが着てるような服カ?」
「お妙さんたちが着てる服に似てるけどちょっと違うかな?私の小さいときに着てたのがあるし
夏祭りなんだから、浴衣着て行こうか」
「おぉ!面白そうネ!着て行くネ!!」
の「浴衣一緒に着て行こう」の言葉に、さらに喜びを増す神楽。
浴衣?
の浴衣?
めったに女物系を着ないの浴衣姿?
「待てぇぇえぇええ!!!」
「え?銀さん?」
「何アルか銀ちゃん?」
俺は椅子から立ち上がり、二人の目の前に立つ。
「未成年の夜の出歩きは非常に危険なので、保護者同伴で銀さんが付いていきます!」
「え?ぎ、銀さん?」
「下心みえみえネ銀ちゃん」
「完全にさんの浴衣姿見たいだけだろアンタ」
「んだとクソガキ共。俺の何処に下心が」
「「鼻血拭けよ天パ」」
「なっ!?」
新八と神楽の言葉に俺は鼻を拭うと、見事に手に赤いモノが付着していた。
ちょっ・・・完全に下心がっ!!
俺はティッシュを持ちながら、言う。
「違う!コレは・・・アレだ!!ちょっと暑さでおかしくなったんだよ〜。マジ下心ないからね!いやマジでないから!!」
「は、はぁ」
「とにかくだ!おめぇらガキ共だけじゃ危ねぇから銀さんが同伴します」
「銀ちゃんが同伴とか言うと、変に聞こえるネ」
「下心が丸分かりな大人だからね」
「おめぇらは黙ってろ!!」
鼻にティッシュを突っ込んで、何とか力説。
そらぁ、危ないだろ?
なんたって、の貴重すぎる浴衣姿だぞ?振り向かないヤローが居ないわけないだろ?
おまけに非番だから刀なんて差してるわけねーし
は普通の格好すれば、みんな振り返る美人なんだよ!!
危なすぎてそっちが放っとけねぇし。
「はぁ〜、仕方ないネ。ー・・・銀ちゃんも行くっテ〜」
「まぁ、新八も居て銀さんも居てくれるなら安心かな。女の子だけじゃやっぱり危ないからね」
そう言いながらは俺の顔を見て微笑んだ。
・・・マジこの子天使。
ていうか、フォローの仕方がマジうまいですよこの子!!
(アッチのほうは鈍すぎて逆にそれが可愛くて仕方ないんですけど。)
あぁ、ホント・・・結婚するならやっぱりみたいな子・・・じゃなくて、絶対だな!
「よかったですね銀さん。さんと行けて」
「うっ、うっせぇよ」
新八が笑いながら俺に言う。
あぁ、ちくしょう・・・完全に俺カッコわりぃ。
「良かったネ銀ちゃん。と行けテ」
「黙ってろ神楽・・・つか、お前いつまでに抱きついてんだよ!!いい加減離れろ!むしろポジション変われ!!」
「ちょっ、ぎ、銀さん!?は、恥ずかしいこと言わないでくださいっ!」
「嫌アル〜。の胸フカフカしてて気持ちいいネ〜」
「か、神楽も変なこと言わないの!!」
「二人とも落ち着いて。さん困ってるでしょう」
「「黙ってろダメガネ!」」
「ナニソレ」
夏といえば、やっぱり夏祭りでしょ!
(夏は誘惑的なイベントが盛りだくさん!)