―――――――ポロン・・・ポロン・・・ポロン・・・。
時々、晋助さんが三味線を奏でる。
多分他の人が聴いたら出鱈目のように聴こえるだろうけれど
私にはなんだか、それがとても心地よかった。
「どなたかのお歌ですか?」
「あ?」
よく弾いてる曲だから、何の曲だろうと思い私は晋助さんに尋ねた。
「よく弾いていらっしゃるので。どなたかの曲かと思って」
「・・・お前、コレが出鱈目とか思ってんだろ?」
「他の方が聴けばそう捉えるかもしれないですね。でも私は好きですよ」
私が笑みを浮かべ答えると、晋助さんも笑う。
「こいつぁな・・・・・恋歌だよ」
「え?」
「他のヤツには出鱈目で曖昧に聴こえるが、おめぇには多分丁度いいんだろうな」
「晋助さん」
「聴きたいときはいつでも言え・・・弾いててやるよ。むしろ、この曲は
おめぇにだけ聴こえときゃいいんだよ、他のやつの前で弾く気はねぇしよぉ。
出鱈目なんだのって、バカにされかねぇからな」
そう言いながら晋助さんは、あの曲を弾き始めた。
軽快じゃなくても、曖昧が丁度いい。
貴方の恋歌−ラブソング−は、私にだけ届いていればそれだけで幸せです。
僕の曖昧なラブソングなんて、君だけに聞こえていればいいんだ
(出鱈目に聞こえる曲も、君にだけに捧げる恋歌に聞こえていればいい)