俺には好きな人が居る。





でも、その人には好きな人が居て


その好きな人も、その人が好きで―――俺の気持ちはいつも宙ぶらりんになっていた。










「お疲れ〜」


「お疲れ様です」


「お、ザキじゃん。密偵から戻り?」


「はい」







密偵から戻ってくると
ちょうど屯所を後にしようとしてるさんとすれ違った。





「今からお帰りに?」


「うん。報告書も終わった事だし・・・ていっても、総悟の奴がいないから意味ないんだけど。
まぁ後はアイツの仕事だし。私の今日のお役目は終わり。アイツの机に報告書全部積んできた」



「あ、そ、そうですか」







一番隊隊士で、沖田隊長の右腕のさん。

女の子なのに・・・凄く強くて、近藤局長や土方副長も一目置くほどの実力。
入隊試験では筆記でも満点を取るほど、頭も良い。


俗にいう”才女“という人なんだろう。



俺よりも年下・・・だけど、大人っぽいし・・・時々、女性らしい仕草もする。







だから――――好きになった。













「ザキ?どうした?」


「あ?!い、いえ・・・何でも」







年下だけど、一応隊士で・・・局長や副長たちが一目置く人だから俺は敬語を使っている。








「あ、そうだ!お前、もう帰る?」


「え?・・・あぁ・・・まぁ、報告が終わったらですけど」







すると、何やら楽しそうに俺に言ってきた。
ちょっとその表情だけで心臓動いた・・・女性のこういう時の顔って破壊力半端ないなぁ、と実感。






「新しく出来た甘味処があるんだよ!今日早上がりしたし、ばぁやに何か買っていってやりたいんだ。
だから、ちょっと付き合って欲しいんだけど」


「荷物持ちですかぁ〜?勘弁してくださいよぉ〜」


「まぁ荷物持ちもそうだけど、何か奢ってあげるから・・・お願い山崎ーっ」





両手を合わせ俺にお願いをする、あの人。


あぁ、なんていうか・・・ホント、女の人って無自覚だよなぁ。
無自覚でこういう事するから・・・どんどん好きになっていく割合が増していくに違いない。


まぁ好きな人じゃないと・・・そういう気持ちあがらないんだと思うけど。








「んー・・・じゃあ、報告が終わってからならいいですよ」



「マジ!ありがとう山崎〜、大好き!」



「え?」











『大好き』









計り知れない、言葉が俺の心占めた。


初めて言われた・・・初めて聞いた、さんの口から零れたその言葉。

想われていなくても思わず気分が上がって・・・顔が、綻ぶし・・・頬が赤くなる。








「じゃ、じゃあ・・・すぐ報告済ませてきますね」


「うん。此処で待って」




















「おめぇら、んなトコで何してんだ?」






すると、聞き慣れた声が聞こえてきた。
上がっていた気持ちが、段々と落ちていく音・・・というよりも崩れていく音がした。








「旦那」


「銀さん!」






其処にいたのは、万事屋・坂田銀時の旦那。

スクーターには乗っておらず、どこかほっつき歩いていたに違いない。




計算?まさか・・・そんなはずない。・・・きっと偶然だ。








「な〜にしてんだおめぇら」


「それはこっちのセリフですよ、旦那。何でこんな所ほっつき歩いてるんですか?」







俺は勘付かれないように、いつもどおりの対応をする。





「パチンコ行って大負けした。・・・・おかげでもう財布すっからかんだよ。全財産賭けたのが間違いだったか」


「相変わらずですね銀さん」


「つか、真面目に働けよアンタ」


「負けた気晴らしに散歩だよ。あ〜あ・・・勝ったら新しくオープンした甘味屋でパフェ食べようと思ってたのによぉ」








あ・・・・・・しまった。











「銀さん、あのお店行きたかったんですか?」


「ん?だって一昨日オープンしたんだぜ?・・・外から見た感じ、パフェうまそうじゃん。
フルーツジャンボパフェとか大江戸スペシャルあんみつとか」


「じゃあ一緒に行きませんか?」


「え?!マジで!?」








この男・・・・・・やっぱり。




俺は唇を噛みしめた。








「ちょうど、山崎と一緒に行こうって言ってたんですよ・・・ねぇ、ザ」


「俺・・・そういえば、まだ頼まれた仕事残ってたんすよ。さん、旦那と一緒に行って下さい」


「え?・・・ザキ?でも・・・っ」


「いいんですよ俺は」






俺の行動が分かったのか、旦那を見ると・・・目は相変わらず死んだ魚のような目をしている。
だが、視線は違っていた・・・・・・「そう、それでいいんだよ」っていう。


確実に、旦那は・・・計算して、来た。
むしろさんを此処で待ち伏せしていたに違いない。


そしてタイミングを見計らって・・・さんに声を掛けようとしてたんだ。









「じゃあ・・・ザキ、何かお土産買ってくるからね。明日あげるから」



「は、はい・・・ありがとうございます」






そう言って、さんは・・・旦那と歩いて行った。
俺はそんな2人を見送った。



楽しげに話しながら旦那はさんの手を握る。

あまりに突然の事で、さんが顔を赤くし、慌てふためく。
そんなあの人の表情を愛しい眼差しで見る旦那。


そんな旦那の表情に安心したのか、さんは嬉しそうに・・・・・笑っていた。









いつも、思う。


そう、いつも。


いっそ、こんな気持ち・・・捨てることができたら・・・―――――。










「好きなんです・・・さん、アナタが」










どんなに楽だろうか。





いっそ捨てることが出来たら、どんなに
(でも、きっとずっと、捨てることはできない貴女を想う気持ち) inserted by FC2 system

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