常日頃から暇だからって、街をふらつくもんじゃねぇ。
俺は見てしまった。
『これとかどう？』
『いやぁ〜有り得ねぇってこういうの。こっちで良くね？』
『えー･･･でもこっちが似合うって』
『俺にあてながら考えんじゃねェよ』
『じゃあ誰見て考えろってーのよアホ総悟。あ！見てみて！コレとか良くない？！』
『てめぇのセンス疑うわ』
可愛い年下彼女のが･･･自分とこの上司である、ドＳのクソガキと
何故か仲睦まじく歩いている姿を！！
隊服を着ているのであれば「あー仕事だよなぁ」って思うところだが！
俺が電柱の陰から見ている二人の姿は
真選組の服を着て･･･いない！！そう！！もろ私服だ！！
私服姿の2人が並んだらそらぁ美男美女カップルだろうよ！！
だが、男の隣にいる女は、あのガキの女じゃなくて「俺の女」なワケ！！
「（浮気？が浮気なんかするの？恋愛に奥手すぎる可愛い可愛い俺のチャンが
浮気なんて芸当出来たっけ？いや、出来ないよな、うん、出来ないって銀さん信じてるよ）」
は恋愛に疎い。
俺とのやりとりを見れば一目瞭然だ。
だからアイツが「浮気」だなんて事は１００パー有り得ないわけだ。
でも、今俺の目に映っているのは紛れも無く、で･･･隣にはアイツの上司。
しかもだ！
ガキの袖掴んで歩いてやがる。
下手したら手を握っちゃう距離でもあるよソレ！！
俺だって！俺だって！！が「恥ずかしいからすいません」って言われてさ
白昼堂々手なんて握らせてくんねぇよ？
それだって言うのにさ、何で？何でアイツ今にも手を握りそうな距離なわけ？！
他の男とは手ぇ繋げて、銀さんと繋げないのはおかしくない！？
あまりにも気になりすぎて
俺は達の後を気付かれないように付ける。
『こーすっと、おめぇも女らしいんだな』
『は？』
『仕事とプライベートじゃ、てめぇの印象も違ぇって話』
『そういう事言うんだ、アンタでも』
『まぁ生き血は通ってっからな。おめぇも違いねぇだろ？』
『まぁね』
そんなやりとりをして、２人は何か笑ってやがった。
の、笑う姿を見ていて･･･胸が痛かった。
初めての痛み、そう感じた。
あのガキとは同い年だし、意気投合する部分もあるだろう。
同世代の男女、歳が離れている俺と比べたら盛り上がる話もあるだろう。
傍から見れば、アレが「似合いの男女」とも言えるだろう。
手を伸ばそうとしたら、好きな女が自分の手をすり抜けていくように思えた。
声を出して呼んでも、好きな女は足を止めることなく知らない誰かの元へ走っていくように思えた。
は浮気なんて出来やしない、そう思っていたのは
多分アイツを独り占めしたいが為に自分に言い聞かせていただけなのかもしれない。
本当は、は･･･俺とは違う男を好きだったのかもしれない。
溺れていたのは、お互いじゃない･･･俺だけ。
好きだったのは、お互いじゃない･･･俺だけ。
愛していたのは･･････俺だけ。
「･･･」
の名前を呼んでみた自分が、虚しかった。
ちゃんちゃらおかしくて、何か笑った。
踵を返して、後を付けるのをやめた。
これ以上自分の目にひどい光景を映し入れたくない、ただそれだけだ。
最近、めっきりウチに来ないと思ったら
は俺とは違う、同世代の新しい男と一緒に居たのか･･･なんて思うと
「俺って一体にとって何だった？」ってしか思えなくなった。
「ケッ。むしゃくしゃしてきた･･･パチンコにでも行ってくっか」
そう言いながら俺はパチンコ屋へと足をフラフラと進めた。
心の何処かで「何かの間違い」だと信じたい自分がいる。
そう、きっと間違いなんだと思いたいんだ俺は。
だって、好きなんだよ俺は。
誰よりもの事大切にしてやってるし、大好きだし。
この気持ちの大きさは正直、かぶき町中の誰よりも負けてねぇって思う！
そうさ！真選組のアホ共よりも負けてねぇよ！！
誰にも負けてねぇ･･･負けてねぇはずなのに･･････。
「完全敗北した気分だっつーの」
あんな光景を見て、そう言い切ってた事が全部無になった。
愛情なんて、やっぱ俺には重すぎたのかもしれねぇ。
いや、俺が重すぎたんじゃない･･･が俺の愛情に耐え切れなかったんだろうな。
違う男を選んで、当然･･･なのかもしれねぇな、きっと。
好きの押し売りも酷すぎるとダメになる？
(今までのって、俺の一方的な愛情だったワケ？)