「だからって、何で俺なんでぃ?」


「ちょうど暇そうな顔してたから」


「おい」






屯所で眠りこけていたところを、非番のに連れられ
私服に着替えて肩を並べて街を歩く。

突然のことでなにかと思えば、旦那の誕生日の品定めらしい。







「誕生日プレゼントなら、旦那に直接聞きゃぁいいだろ。何で仕事の俺を連れ出すんでぃ」



「バカね。それじゃあサプライズにならないじゃない。私は銀さんをびっくりさせたいの!
つーか、屯所で寝てたお前が言えた口か」



「びっくりねぇ〜」





俺は頭を掻きながら、の隣を歩く。


コイツが何でもあげりゃ、万事屋の旦那は飛び跳ねて喜ぶに違ぇねぇ。
「誕生日プレゼント?マジでか!?さっすが俺の可愛いチャン!」とか言って鼻の下伸ばすんだろうて。

旦那は、いつも死んだ魚のような目ぇしてるけど
の前じゃ鼻の下伸ばすか、訳の分からんデレデレした顔するか・・・・・・。






殺伐とした戦場に咲く華を慈しむかのような、顔をするか。







長くバカの付き合いをしている、俺達でも知らないような表情をする。





それほど、旦那にとってのっていう人物は何者にも変えがたい存在なんだろうって思った。
正直俺がぶんどる隙も無いくらい、旦那はコイツに惚れこんでいる。









「(考えてたら・・・なーんか、虚しくなってきた)」


「ねぇ総悟、これとかどう?」





が俺の服の袖を掴んで、品物を指差す。
多分旦那に似合うであろう洋服だ。






「いやぁ〜有り得ねぇってこういうの。こっちで良くね?」






何となく、上手く関係が行っているから邪魔立てしたくなる。
的には似合うと思う品を、俺は別の品で良い様に仕向ける。







「えー・・・でもこっちが銀さんなら似合う感じがするんだけど」


「俺にあてながら考えんじゃねェよ」






別の品で仕向けても、やっぱり自分の選んだものをあげたいらしい。
服を俺にあてながら悩む様を見ると、胸が痛むこっちの身にもなってほしいくれぇだ。






「じゃあ誰見て考えろってーのよアホ総悟。あ!見てみて!コレとか良くない?!」


「てめぇのセンス疑うわ」





他の服を持ち込んできたから、この際おじゃんにしてやろうという
言葉を言い放つと「うーん、じゃあ洋服はナシだな」と言って先に進む。

まだまだこのお嬢様は俺を連れまわしたいようだ。

ため息を零し、の横を歩く。
旦那に似合いの品を見つけるたびに袖を掴んで引っ張って足を止める。


横目で目を輝かせながらその表情を見ると―――――。







「こーすっと、おめぇも女らしいんだな」


「は?」





女らしい一面を垣間見ている気がした。

普段は刀を差し、勇ましい黒服に身を包んでいるのだけど
それが女物の小袖に身を包めば印象も、何もかも違ってくる。






「仕事とプライベートじゃ、てめぇの印象も違ぇって話」



「そういう事言うんだ、アンタでも」



「まぁ生き血は通ってっからな。おめぇも違いねぇだろ?」



「まぁね」





そういうと、アイツは笑った。


旦那は本当に羨ましい限りの人だ。
のこんな表情を、いつも隣で見てると思うと・・・ああ、憎たらしいったらねぇや。


ふと、アイツは後ろを振り返る。






「あ?どうしてぇ?」



「いや、何か・・・呼ばれたような気がしたんだけど」






後ろを見るも、こちらを見る人も居なければ
見知ったヤツも居ない。






「空耳じゃねぇの?」



「そう、かな?銀さんの声が聞こえたんだけど、違うよね。
ホラ、総悟・・・次行くわよ」



「へぇへぇ」






袖から手を離し、アイツは俺の前を歩く。
旦那の声が聞こえた・・・ふと、もう一度後ろを見ると、人ごみの中に―――――銀髪の天パ。


何だかモノ寂しげな背中と空気を漂わせて歩いている、目立つその風貌。


ありゃ旦那だな。

多分俺らの光景をアイツの浮気だと勘違いして落ち込んでんだ。
Sは打たれ弱ぇからな、こういうの見たらそらぁビルから突き落とされる程ツレぇだろうに。







「悪ぃな旦那ァ。アンタの女、しばらくアンタのトコに返してやれそうにねぇや」







ニヤリ、と俺の悪戯心に火がついた。

あの人のああいう様が見れるとなれば、面白いことを思いついた。






「なぁ」


「ん?何?」


「俺に聞くよりか、旦那を知ってる色んな男と考えて選んだ方がいいんじゃねぇの?
手始めに旦那と歳が近ぇ土方さんと一緒に考えれば良くねぇ?」







の横に色んな男を立たせて、旦那の落ち込む様を楽しむのも悪かねぇ。

男をとっかえひっかえする女を見て旦那はどんな反応をするだろうかねぇ。



あ、やべ・・・そう考えたら面白くなってきやがった。







「土方さんって・・・銀さんといろんな意味で真逆な人じゃない。つーか二人とも仲悪いし」


「いやいや。ああ見えて、あの二人何やかんやで息ぴったりだからよぉ。
旦那と歳の離れた俺よりも、旦那と歳の近ぇ土方さんと誕生日の品定めした方が無難だと思うんだがねぇ」






上手いこと誘導した。


多分、この誘い・・・―――――。






「そうよね、そう考えたらそうかも」






乗った。






「土方さんには俺から言っとく」


「あら?総悟が珍しいことしてくれるじゃない。何か考えてんじゃないでしょうね?」


「アホ、厚意だ厚意。上司の思いやりを無駄にすんじゃねぇよ」





コイツのためだと思えば、多分土方さんも乗ってくれるだろう。



さて、こっからどう引っ掻き回してやろうかねぇ。
旦那ァ・・・もちっと、俺のささやかな反乱に付き合っておくんなせぇ。




悪ガキ様のささやかな反乱
(さて、どうしてやろうか。楽しみだぜ) inserted by FC2 system

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