「何ですか、3人揃って」
虫の居所が悪い中。
何故か目の前で総悟、土方さん、近藤さんが土下座をしていた。
私の声に、3人は頭をあげる素振りすらなかった。
「なんて言うか」
「お、お遊びが過ぎたっていうか」
「俺ぁ別に謝るつもりなんてないでさァ」
「おい、三番目。だったら何でてめぇ土下座してんだよ」
近藤さん、土方さんは何やら謝る意思はあるようだが
三番目の・・・総悟だけがどうやら謝る気はないという、言葉を投げてきた。
言い返したいけれど、今現在の私にはそんな気力はまったくと言っていいほどなかった。
溜息がこぼれ、目の前で頭をあげない3人を見る。
「あの、よく分かりませんけど・・・とりあえず、今すぐ目の前から消え失せてくれます?
正直今機嫌が悪いことくらい馬鹿のアンタたちでもお分かりでしょう」
「あのな・・・っ」
「万事屋との件は」
「ぜーんぶ俺が仕組んだイタズラなんでィ」
「は?」
聞き捨てならない言葉が三番目の人間から聞こえてきた。
全部仕組んだイタズラ?
「おい、三番目。素直に全部白状しろ」
「テメェの隣に色んな男ふっ付けて浮気まがいな現場を見せて、旦那のメンタルズタボロにしてやろうっていうイタズラ」
「そう・・・そうなの」
私は立ち上がりながら、脇に差していた刀の柄を握る。
柄に手をかけた音が聞こえたのか、頭を下げていた近藤さんと土方さんが
途端頭をあげる。
「死ね総悟ぉぉおお!!!」
「待て!!待てっ!!」
「俺達も悪かったんだ!!コイツに何かあっとは思ってたけど
つーかこんな展開になるって思ってもなかったんだよ!!」
「アンタたちも同罪だよ!!いい大人が寄ってたかって恋する乙女の恋路を邪魔しやがって!!
馬に蹴られて死んでこいやこのクソども!!!」
総悟に斬りかかろうとした私を近藤さんと土方さんが止めに入る。
結局は何?
私はいいように総悟のおもちゃにされたということになる。
私は私で必死に銀さんが喜んでくれそうな品物を選んでいたのに
総悟も、土方さんも近藤さんも寄ってたかって・・・私の乙女心を食い物にした。
おかげさまで、先日銀さんからは破局宣言を言われる始末。
正直・・・この苛立ちは何したって晴れやしない。
「アンタの・・・っ、アンタのせいで銀さんに嫌われちゃったじゃない!!どうしてくれんのよ総悟っ!!」
『金輪際、俺の前に現れんな』
刀を握る手が緩み、目からは涙がこぼれ落ち始める。
そして頭の中に蘇ってくる・・・苦しい表情で私を卑下するような言葉を浴びせる銀さんの姿。
「私は・・・私はただ、あの人に・・・喜んで・・・欲しかったのに」
『おめぇも、結局は俺を捨てるんだな』
違う、違うと何度も否定をするけれど
あの人の耳に、私の声はもう届いていなかった。
目から流れる涙も、口から放たれる罵声も・・・もうとどまるところを知らない。
「死ね!!死んで詫びろバカ総悟!!今すぐその首根っこからたたっ斬ってやるんだから!!」
「悪ィって思ってっから・・・頭下げてんだろォ」
「え?」
声を荒らげ、暴れる私に総悟の声がスッと耳に届いた。
その声に動きも涙も、止まった。
「悪ノリしすぎた」
「そ、総悟」
「ぶっちゃけ、あんな展開になるなんて思ってなかったんでィ。
テメェの、んな顔・・・見るつもりも、なかった。・・・すまなかったな」
あの総悟が素直に謝る辺り何かあるに違いない、と頭の中で過ったけれど
余計なことを考えれば結局バカを見る羽目になる。
だったら此処は、素直かどうかも分からない謝罪を受け取ろう。
でも、銀さんと関係を修復するまでは許すつもりはない。
「コレで修復できなかったら、アンタのせいだからね」
「そん時は俺の首なり命なりテメェの好きにしろ」
「・・・分かった」
暴れないと分かったのか、近藤さんと土方さんが私の体から離れた。
私は袖で涙を拭う。
「すまねぇな」
「マジ、悪かった」
「いいえ。お二人は悪ガキのお遊びに付き合ったまでですから・・・いいです。
見回りに・・・行ってきます」
そう言って私は部屋を後にした。
街を歩きながら考える。
修復出来るだろうか?
あんなことを言われて、正直関係を元に戻せる自信はない。
だけど、あの人が居ないと・・・きっと、私は生きてはいけない。
「銀さん」
『』
銀さんの表情が浮かんで、私は零れ落ちそうになる涙を堪え歩き出す。
何度謝っても、何を話しても、貴方はきっと誤解した気持ちを理解してはくれないだろうけど
私がこの世で一番に大切で愛しているのは貴方だという事を忘れないでください。
私は誰よりも、貴方が生まれてきてくれた事を心より感謝しているのですから。
破れたものは大体貼っつけたら直るもの
(すれ違った関係も、そうなればいいな)