「アンタ、もうすぐバーナビーの誕生日だけど・・・何か用意してる?」
「へ?」
ある休日。カリーナに言われ私は目が点になる。
私の返答に、カリーナのほうも同じように目が点になっていた。
「へ?」
「え?」
「疑問を疑問で返さないで」
「あ、ご、ごめん。ていうか、バニー・・・もうすぐ誕生日だったの?」
「珍しい。知らなかったの?」
知ってた・・・といえば、嘘になる。
ぶっちゃけた話、すいません・・・知りませんでした。
カリーナに言われて気づいた私。
何だかバニーに申し訳ない。
いっぱい、バニーは私に色んなものくれるのに。
「へぇ〜でも知らないことあったんだ」
「バ、バニーには言わないでね」
「言わないわよ。まぁ教えてあげて正解だったみたいだけど・・・まだ日にちあるし
プレゼントとか決めたら?」
「うん」
カリーナに言われて、バニーの誕生日に向けてのプレゼントを頭の中で考える。
だがあのバニーに何を渡せば良いのか。
「前のアイツの誕生日には私達でウサギのぬいぐるみ、あげたのよね」
「あ、それクローゼットの中に入ってた。今は出してるけど」
そういえば、タイガーさんから聞いた話だ。
あのウサギのぬいぐるみは前のバニーの誕生日の時皆で
バニーに贈ったものだと。
私が見つけるまでクローゼットの奥にひっそりと置かれていたが
今はちゃんと目の届く場所に置いてある。
むしろ、私がよく抱きしめている。可愛いもん。
「へぇぬいぐるみ出してんだ」
「ていうか、私がよく抱きしめてるんだけどね。そしたらバニーが
”そっちじゃなくて僕を抱きしめてくださいよ“とか言い出す」
「アンタに溺愛のアイツなら言い兼ねない言葉ね」
「私も、何かあげたいなぁ。バニーにはすごくお世話になってるし」
「お世話になってるじゃなくて、愛されてるの間違いじゃないの?」
「ふぇ!?えっ、あ・・・や、そのぉ・・・」
カリーナの言葉に私は何も言えなくなった。
確かにそれは当たってる。
お世話にもなってるし、愛されてもいる。
だからこそ・・・だからこそ、その分を少しでもプレゼントで返せることが出来たら・・・。
「今ならまだ間に合うよね?」
「そうね。31日だし十分だと思うわよ・・・まぁハロウィンと被るのが微妙なところだけどね」
そう言いながら私とカリーナは歩いた。
彼女と話しながら帰る中・・・私は頭の中で、何が良いのだろうと考えていた。
バニー・・・何が良いのかな?
しばらく2人で街を歩いていると、ウィンドウに飾ってあるモノに目が留まった。
「?・・・どうしたの?」
「これ、バニーがつけてるプレートのネックレスに似てる」
お店のウィンドウに飾ってあったネックレス。
それは何処となく彼がいつも身につけているプレートのネックレスに似ていた。
「ホント、似てるわね」
「ねぇこういうのってさぁ・・・名前とか入れてもらえるかな?」
「入れてもらえるんじゃない?・・・でもそれって追加料金になるわよ絶対」
確かに。
普通にこういうのを買うのならまだいいかもしれない。
しかし、そのプレートに名前などを入れてもらうとなると・・・更に料金が嵩(かさ)む。
でも、これ・・・あげたい。
「カリーナ」
「何?」
「私、バニーの誕生日プレゼントこれにしようかなって思う。名前も入れてもらって」
「はぁ?!」
私はウィンドウを見て、カリーナの顔を見る。
しかし、私の言葉に彼女は呆れた声を上げて、ため息を零す。
「アンタ、それ値段見て言える?」
「え?・・・・・・あ」
カリーナのため息の理由が分かった。
私はネックレスの値段を見て、何も言えなくなった。
た・・・高い。コレは学生には高すぎる。
「私からしたら給料の、何分の一だし。アイツの給料からしたらその倍分の一。
でも一般学生からしたらそのネックレスを買う分だけのお金は2ヶ月分ね。バイトしてたらの話だけど」
凄まじい現実を叩きつけられた。
私の学費は、出張中のお母さんが払ってくれているし
ほかの事に関したら全部バニーがお金を出してくれている。
「一緒に生活してるんですし、の好きなものでも何でも買ってきて良いですからね」って
いつもバニーは笑顔で十分すぎるくらいのお金を渡してくる。
元々彼は裕福なお家の育ちだから、金銭感覚というものが違いすぎる。
バニーからしたらこのネックレス買うには容易いだろう。
しかし、私からしたら相当だ。
「バイトして、コレを買うか・・・それとも他のを買うか。まぁ2つに1つよね」
「う〜」
「アニエスさんに頼んだら、良いバイトくれるかもよ?メディア関係の会社に勤めてるんだし」
「あ」
「メディア関係な会社の広告料は相当よ?バイト代も結構弾んでくれるんじゃない?」
カリーナの言葉に私は目を光らせた。
そうだ!その手があった!!
「私今からアニエスさんのところに行って来る!」
「ちょっ、ちょっと!!会社にはバーナビー居るんじゃ」
「部署が違うから平気!」
「も、もう待ってよ〜」
思い立ったら吉日。
私はすぐさまお店のウィンドウから離れ
アニエスさんが居るアポロンメディアへと足を進めた。
きっと、アニエスさんなら良い知恵を貸してくれるかもしれない。
バニーの誕生日のためなら・・・私、何でもやる。
バニーに喜んで欲しいから。
「バイトがしたい?」
アポロンメディアにやってきた私は
受付でアニエスさんの名前を出すと、取り次いでもらい
応接室に通された。
すると、アニエスさんが数分してやってきて事情を話した。
「バニーの誕生日プレゼントがどうしても買いたくて」
「ブルーローズも?」
「私はこの子を追いかけてきただけ」
「あの、ワガママだって分かってるんです。でも・・・いつも、バニーには私・・・」
せめて、せめて何か贈りたい。
いつもいっぱい愛情を貰っているから・・・私は何か彼にちゃんとしてあげたい。
たとえそれが小さなお返しであったとしても・・・彼が生まれてきてくれて、私は本当に嬉しいから。
「そうねぇ・・・他の部署にも掛け合ってみてもいいわよ」
「ホントですか!?」
すると、アニエスさんから嬉しい言葉が返ってきた。
私は思わず座っていた椅子から立ち上がる。
「バイトだから雑用程度しかくれないかもしれないけど。それなりのお金にはなるわ」
「それでもいいです。バニーに・・・バニーに、誕生日贈れるものができるなら」
喜んでもらいたい。
たった1人、世界で一番私の大好きな人に喜んでもらえるならそれでもいい。
頑張れるもん。
「はぁ〜・・・母親代わりの私としては、あんな男にを取られてる気分だと思うと腹立たしいわ」
「幼馴染の私としても同感ね」
「ちょっ、ちょっと2人とも酷いよ!」
アニエスさんやカリーナの言葉に私は顔を赤くして答える。
「とりあえず、バーナビーには内密に動きましょう。どうせ、アイツも仕事忙しくて誕生日なんて忘れてると思うし」
「よろしくお願いします」
「よかったわね」
「うん!」
彼の誕生日まで、まだまだ先。
だけど思い立ったが吉日、何でもやってみる価値はある。
あのプレートのネックレスに名前を入れてもらって
バニーの誕生日の日に渡すのが最終目標!
それまで頑張れ私!
Make hay while the sun shines.
(”思い立ったが吉日“そう、何事もすぐに行動すると良いことあるんですよきっと)