次の日、私はアポロンメディアから渡された企画書の書類を
ネイサンのヘリオスエナジーに持っていっていた。








「あらん、お嬢じゃない」


「こんにちは。あ、これ企画書の書類です」


「ん、ありがと」






丁度良いと思っていた私は、すぐさまネイサンに逢うことができ
書類を渡したと同時に、ある話を持ちかけた。







「ネイサン」



「何?」



「お香の作り方とか、知ってる?」



「え?」







私の言葉に、ネイサンはびっくりした表情で見てきた。






「いきなりどうしたの、お嬢?」



「え・・・あ、いや・・・えーっと・・・」



「さては、ハンサムが原因かしら?」



「原因ってわけじゃないけど」







原因というよりか、きっかけっていうか。

私はネイサンなら口は堅いだろうと思い、素直に話し始める。







「もうすぐ、バニー・・・誕生日なの」



「あら?もうそんな時期?早いわね」



「それで、バニーの誕生日プレゼントに」



「手作りのお香を渡したいって事ね」



「うん。バニー・・・最近、お香にハマってるって言ったの思い出したんだ。
それで・・・この花の香りで、作りたくて」







私はポケットに小瓶に入れた花をネイサンに渡す。

ネイサンはそれを受け取ると、キャップを取って手で中の匂いを引き寄せる。








「あら、良い匂いじゃない。何て花の名前なの?」



「キンモクセイって言う花。昨日、バニーのジャケットにこの匂いついてて
それで、バニーが・・・この花の匂いは落ち着いて好きですって言ってたの」







昨日、バニーがジャケットに付いたキンモクセイの花の香りに
少し落ち着いたようで私に言ってきた。

それで思いついたのだ・・・この香りをお香にして、彼のもう1つのプレゼントにしたい。



彼の好きなもの、喜ぶものは、私の出来る限りの範囲で揃えて渡したい。









「ネイサンならお香の作り方知ってるかなぁって・・・聞いて、みたんだけど」



「ん〜・・・まぁ、分からないこともなくはない」



「ホント!?」



「でも、手間は掛かるわよ?・・・誕生日までには間に合うからいいとしてもその分手間は掛かるわ」



「いいよ。誕生日まで間に合えば」








ネイサンの言葉に、私はホッとした。

これでまた1つ・・・バニーが喜んでくれるだろう要素が増えた。

プレートのネックレスは、私がギリギリまでバイトしなきゃ
手に入らないものだけど・・・お香なら、手作りで手間がかかっても
誕生日までに間に合えば、例えネックレスが間に合わなくても・・・喜んでくれると思っている。






「やけに、ハンサムの誕生日・・・気合入ってるわねお嬢」



「え?」







私の表情に、ネイサンがニヤニヤしながら見ている。

それを見た私は思わず顔を赤らめ
目を下へ向けた。

は、恥ずかしい。

バニーに見られていないだけまだいいけれど、見知った人間にこういう顔を見られると恥ずかしい。






「ホント、アンタ達って相思相愛よね。羨ましいわ」



「そ、相思相愛って」



「傍から見てたらそう見えるの。ハンサムはお嬢を想ってて、お嬢はハンサムを想う。
まさに赤い糸で繋がりあったの愛ってヤツ?素敵じゃないそういうの、アタシは好きよ」



「私、いつも・・・バニーに色んなもの貰ってばっかりだよ。夢も、生きる希望も、愛情も」








バニーから貰うものは、全てが輝いてて美しい。

時々恥ずかしいと思うモノは、きっと愛情。


たまにケンカもしちゃうし、すれ違ったりもする。
でもそれは恋人同士にとっては当たり前のことだし、そういうのはヒーローも、一般人も関係ない。


でも、バニーから貰うものは・・・私の小さな体じゃ返しきれないものばかり。







「だから、せめて・・・何か彼の喜ぶようなことをしてあげたいし・・・贈ってあげたい」



「それでお香?」



「お香のほかにちゃんと考えてる」



「だからアルバイトしてるんでしょ?ハンサムの誕生日プレゼントにどうしてもお金が必要だから」





やっぱり、バレてた。
でも私はそれを驚きもせず苦笑を浮かべた。









「バニーには内緒にしててね。当日、ビックリさせたいから」


「もちろんよ。でも、もし・・・ハンサムにあげるプレゼントで、お金・・・足りなくなったら貸してあげるわ。
女の子の力になってあげるのがアタシの役目だからね」


「ネイサン。・・・・・ありがとう」









こう言った時、やっぱり友達は助けになる。

だったらカリーナにも話してみようとは思うから
今度話してみようかな。

すごく嫌な顔されそうだけど。でもそんな顔しながらも
「仕方ないわね。手伝って、あげてもいいけど」なんて良いながら承諾するのが目に浮かぶ。


私は持っている小瓶を見つめ、笑みを浮かべた。


作れたら、いいなぁ・・・この香りのお香。
そしたらきっと、もっとバニーが喜んでくれると思うから。















−2日後−







「ただいま。、居ますか?」





取材の時間にはまだあったから僕は家に戻ってきた。

今日は休日で
も学校が休み、だから家に居るだろうと思っていたが
声を上げるも返事がない。

朝はちゃんと居たのに、おかしい・・・と思いながら
僕はリビングに足を進める。






?・・・・・・何だ、いるじゃないか」






リビングの扉を開けると、がカーペットの床に寝ていた。
しかも、寝ている自分の近くにはやたら何枚もの紙切れを散らかして。


彼女にしては珍しい。

いつもならちゃんと身なりは整えるし、片付けるのに。


僕は「まぁこんな日もあるだろう」と思いながら
散らかった紙切れを拾い上げ、整理する。



ふと、手に握った紙切れを見る。








「お香の・・・作り方?勉強してたんじゃないのか?」






紙切れはどうやらコピー用紙のようなもので
そこに書かれていた文字は印刷。

勉強していたと思いきや、どうやら調べていたモノらしい。


しかし、またなんでお香?






「・・・・・・んっ」





ふと、下から起きるような声がした。
僕が目線を落すと、の閉じていた目がゆっくりと開いていき
は寝転ばせていた体を起こした。







「お目覚めですか?」



「バニィ?・・・・ぅん、ごめ・・・寝てた」



「大丈夫ですよ。でも風邪を引きますから寝るときはベッドに行ってくださいね」



「うん」






そういうと、は眠気眼で僕を見る。

瞬間眠かった目が、徐々に大きく開き―――――。








「か、返してそれ!」


「え?」







凄い勢いで持っている紙切れを返せと言ってきた。
あまりのことで僕は思わず驚く。

は床に散らばった紙切れを全部集め、またさらに僕を見上げる。






「返してってば!」



「あ・・・は、はい」






僕が持っていたものをに渡すと、はそれを取り
集めた紙切れと混ぜ立ち上がった。

あまりにもがいつもするような行動じゃないし
ましてやこんなに僕に強く言うわけもない。


は慌てながら僕の横を通り過ぎていく。







「お香でも作るんですか?」







僕の言葉には立ち止まり、こちらに振り返りもしない。








「カ、カリーナと、作るの。好きな匂いがあるから、作りたいねって・・・話してて、調べてただけ。
バニーには関係ないよ」



「そうですか。すいません、勝手に見たりして・・・今度から気をつけます」



「い、いいよ。大丈夫だから」






そう言ってはリビングを後にした。


あんな行動されたのは、もしかしたら初めてかもしれない。

があんなに強く僕に言うなんてこと、ケンカをするとき以外ないし
ましてや、いつもなら振り返ってから僕に言う言葉も、振り返りもせず言い放ってきた。


何だか、見るからに行動的に怪しい。







「そういえば・・・最近、・・・おかしいな」








怪しいといえば、最近のの行動。


休日はやたら僕と同じ時間帯に出て行くし
しかも、たまに街で見かけるときのの格好はパンツスタイルのスーツ。

時々なにやらこそこそしているように思えて仕方がない。

それに加え、さっきの態度。



最近のを考えたら、いつも通り・・・とは言い難い。








「何かあるのか?」






そうとしか思えない行動ばかり。

僕は少しだけ悪いとは思うが、の行動を探ることにした。






それから次の日。
休日、相変わらずは僕と同じ時間に出てる準備をする。
しかし今日はスーツではなく私服。

「どこかへ行くんですか?」と問いかけると「うん、ちょっとね」と
カバンを整理しながら準備を整え、僕より先に出る。

僕も数分して、の後を追うように部屋を出ての後を追いかけた。







「一体何処へ行くんだ?」





の後を追いかけながら、僕は呟く。

彼女の行動に何かを感じるのは確かだ。
違和感らしきもの。

そして「何隠している」ということ。



僕は見失わないように、道行く人に声を掛けられ
サインを求められてもすぐさま書きあげ、それを渡してを追いかけた。

時々ショーウィンドウのガラスで髪型をチェックしたり
「まさか他の男とデート?」と思いながら、もしそうだとしたら
確実に邪魔に入るつもりだ。を他の男に渡すわけには行かない・・・彼女は僕のだ。


そうこう考えているうちに、とある巨大ビルの中にが入っていく。
聳え立つ、そのビルは―――――。









「タイタンインダストリー?」






重工業産業としては業界屈指のタイタンインダストリー社。
そんな中にが入っていく・・・ということは。







「カリーナさんと待ち合わせ、か。待ち合わせ場所としては最適かもな」






此処の所属のヒーローは、ブルーローズ・・・つまり、カリーナさん。
そうではなければがこの会社に用事があるとはいえない、しかも私服で。







「僕の考えすぎかな」





考えすぎた自分と、後をつけた申し訳なさに僕は頭を掻き
アポロンメディアへと足を進めたのであった。

















「あれ?珍しいね、が私服でウチの会社に来るなんて」


「いや・・・うん、ちょっとね」





カリーナの居るタイタンインダストリーに着くや否や、カリーナがエントランスで
出迎えてくれた。しかし今日に限っての私の格好に彼女は驚いていた。






「何かあったの?」


「いや、バニーになんか怪しまれてたっぽいから。此処まで後ろ付けてきたし」


「アイツ・・・ストーカーか」







エントランスで話をしながら私は苦笑を浮かべる。

しかし、まさか後ろをつけてくるとは思っていなかった。

私が気づいたのはショーウィンドウで髪型を整えているとき
窓に反射して映ったのは、バニーが道行く人にサインをねだれてそれに応えてる時。
思わず驚いたが、此処で私が振り返ると逆に怪しまれると思い
私は振り返りもせず此処にきた。






「今は?」



「多分、もうアポロンに行ったと思う。この前もお香の作り方のコピーしたの見られたから
すごい焦ってるんだよね」



「大丈夫なの?」



「お香はカリーナと作るからって。でも一番本命なのはバレてない」



「アレがバレたら終わりね。私も出来る限り手伝うわ、ドラゴンキッドにも相談したら
色々あの子のマネージャーが手を回してくれるって言ってたし。必要なときに言ってね」



「ありがとう。パオリンにも連絡入れなきゃ」





そう言って、私が携帯を取り出すと丁度タイミングよく着信が入る。
表示された名前は『アニエスさん』。






「もしもし」


『やけに出るの早かったわね』


「丁度手に持ってたんで」


『そう。ねぇ、・・・思いっきり給料の弾むことしてみない?』


「え?」





アニエスさんの言葉に私は隣に居たカリーナの顔を見る。
私の顔を見た彼女は自分も私の持っている携帯に耳を近づけてきた。






「あの、思いっきりお給料の弾むことって・・・・?」



『広告宣伝部の同僚からの話なんだけど・・・近々、大手化粧品メーカーの化粧品が発売されるのよ。
そのモデルの片割れがどうしても決まらないって言っててね。貴女の写真見せたら、連れて来て欲しいって言われたの』



「えっと・・・その、つまり」



『モデル、してほしいのよ。同僚は給料弾ませるって言ってたから、どう?やってみない?』






バニーの誕生日プレゼントのためなら、と思っている反面
大丈夫かな?と心配な気持ちが今の私の中で混ざり合っていた。





Nobody knows what tomorrow might bring.
(”一寸先は闇“突然舞い込んだ大幅アップのチャンス、でもこれは予想してない展開だ!) inserted by FC2 system

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