『さぁ、今宵ハロウィン。なんとそんな日にやってきた悪戯者ジャック・オ・ランタン!
その腕に抱えて飛んでいるのは、ヒーロー達と慈善活動をしていた魔女の格好をしたスタッフ。
果たして、この魔女を無事助け出すヒーローは誰だぁああ?!?』








早速HEROTVとしてこの事件が生中継されている。

僕はと犯人を追いかけているが、向こうの能力が無限使用なのか
追いつくことが出来ない。

能力を使って追いつきたいが、如何せん5分しか持たない能力。
今使ってしまえば1時間は使用が不可能となる。


僕は走りすぎたのか、街灯に手を付き息を整えていた。
こんな所で足を休めている暇はないのに。







『おい、乗れバーナビーッ!!』



「え?・・・トランスポーター・・・・斉藤さん!?」






すると、目の前にアポロンメディアの社名が書いてあるトランスポーターが止まっていた。
中から斉藤さんがマイク越しに大声で僕に呼びかける。

僕は急いで中へと駆け込んだ。


すると斉藤さんがメガホンの着いたヘルメットをつけて現れる。






「すぐにスーツに着替えろ」


「そんなことしてる暇はありません、バイクだけお借りしていきます。
犯人は人質を連れて逃走しているんです・・・着替えている暇なんてないんですよ」


「お、おいっ!?」





そう言って僕はバイクに跨り、エンジンをかける。





『どうなっても知らんぞ!』



「いいですから。早く後ろを開けてください!!」








どうなろうと構うもんか。


を、を助け出すまでは・・・僕がどうなろうと、構わない。



マイクの切れる音がして、トランスポーターの後ろの扉が開く。
僕はアクセルを緩く捻り後退のまま外へと出る。

外に出た瞬間、一気にアクセルを捻り上げスピードを出して二人を追いかけた。











『さぁ・・・未だ人質を連れて逃走する犯人。・・・ん?おっと?アレは何だ?
黒いマントを靡かせて・・・・キタァァァァアア!!現キング・オブ・ヒーロー・・・バーナビー!!
なんとパワードスーツではなく、ハロウィン仕様なのかドラキュラのコスチュームのまま登場!!
さっすがバーナビー・・・何でも着こなしてますねぇ〜』







『ちょっと、バーナビー!?アンタ、何て格好で出てきてんのよ!?何でヒーロースタイルじゃ』


「そんなこと言ってる暇ないでしょう!が人質に取られているんですから、着替えている暇なんてありません!!」





PDA越しにアニエスさんの声が聞こえてきたが、僕はバイクを運転したまま
その言葉を切り返した。


着替えている暇なんてない。

が人質に取られている挙句、あの子が一番怖い思いをしている。

頭に拳銃を突きつけられて・・・仕舞いには・・・・。






「あの子は高いところが苦手なんですよ!!早く助けてあげないと・・・っ」







そう、は高所恐怖症。

だから犯人と一緒に飛び上がったとき、彼女は飛んだ光景を脳裏に焼き付けたに違いない。
今頃拳銃を突きつけられて怖い思いをしているどころか、その飛び上がっている高さでも怖がっているに違いない。






『わ、分かったわ。とにかく、スカイハイには準備してそっちに向かわせる。
見失うんじゃないわよバーナビー・・・それとあの子に傷1つつけたらアンタをクビにしてやるから覚悟しなさい』



「僕の大切なを傷つけたりはしませんから安心してください、おかあさん」



『誰がおかあさんよ!!さっさと行きなさいバカ兎っ!!』








通信が切れ、僕は犯人を追うことに集中し始める。

見失わないように運転をしながら頭上を見る。
未だに犯人はを抱えたままビルからビルへ飛び移り飛び回っている。

スカイハイさんの到着を待つしかない。
それか、犯人がどこかで止まりさえすれば能力を使って飛び上がれる。

犯人を捕まえなかったとしても、さえ助け出せれば。



僕はバイクで車と車の間をすり抜けて、見失わないように追いかける。


後ろからは警察のパトカーがサイレンを鳴らしながらやってくる。
そして僕のバイクに近づき、助手席の窓が開く。





「橋を渡られたらは工業地区になる。あそこまで行かれると厄介だ。
工業地区に繋がるブリッジを検問封鎖した。あとはこちらから追い詰めていこう」


「分かりました。じゃあ先に行きます」


「頼んだぞヒーロー」





警官と軽く会話をして、僕はアクセルを捻りスピードを上げた。
頭上を見ると、相変わらず犯人は飛び移りながら逃走。

多分落しはしないだろうけれど、の事が心配でならない。









・・・・、必ず助けます。それまで頑張ってください」







向かい風を切りながらそう呟く。


元はといえば、僕が彼女にあんな言い方をしたのが悪かった。
「やりたいならやればいい」はを自由にする言葉じゃなくて
きっと、僕自身が諦めていた言葉だった。

何も言わず、モデルの仕事をして・・・それが彼女の望んでいることだと勝手に思って
だから僕自身が諦めてあんな言葉をに言い放ち
彼女を悲しませてしまった。


きっと、モデルの仕事をしたにはアニエスさんの言うとおり理由があったに違いない。
は自分のことだけを考える子じゃないことくらい
僕が一番知っている。知っているからこそ、は「やめてほしい」と言ってほしかったんだと思う。






「(事件が解決したら、謝ろう)」





この事件が終わったら、に謝ろう。

そして誕生日を2人で祝いたい。例え、彼女が僕の誕生日を知らなかったとしても
「お誕生日おめでとう」との口から言われるその言葉が欲しいから。





考え込んでいると、高速道路を抜けブルックスブリッジまで出てきた。

数m先を見ると警察が検問で立っている。
犯人とを目で探すと、ブリッジ主塔の天辺に2つの影を見つけた。


僕はバイクを止め見上げる。







『聞こえるかー?お前は包囲された、大人しく人質を連れて其処から降りろー!!』






すると警察がメガホンで主塔にいる犯人に呼びかけた。






「金を用意しろ!!」





警察の呼びかけに犯人が大声で金を要求してきた。
典型的なタイプの犯罪だ。





『いくらだ?』



「10億シュテルンドル用意しろ!じゃないと、人質を海に落すぞ!!」



「なっ!?」




人質を海に落す・・・!?

の命がますます危ない状況に置かれてしまった。






『ちょっと、バーナビーッ!!何してんの、早く助けてあげてよ!!』





PDAからブルーローズさんの声が聞こえてくる。





「助けろって言っても、今手を出したらが危険です」


『こういうときにあんた能力使わなくてどうするのよ!5分でも、助けるには十分な時間でしょうがっ!』


「ですが、下手に僕が飛び込めばの命が」





能力を使えば確かにいいかもしれない。
此処までの距離なら飛び上がっても十分にいける距離だ。

しかし、下手に犯人を刺激してしまえばの命が危ない。

拳銃を突きつけられてる上、高いところに居る。

僕だけならまだしも、大切なをこれ以上危険な目に遭わせるわけにはいかない。





「おい、見ろ!何か燃えてるぞ!?」





すると警官の一人が主塔の2人に指を差す。
何やら炎が上がり、を抱えた犯人が動き回り。







「あっちぃいぃい!!」


「きゃっ!?・・・あっ」








主塔から犯人の手を逃れたが―――――。








「人質が落ちるぞ!!」





「僕が人質を助ける!!」




「おい、待てっ!!」







何百mとある高さから落ちてきた。

僕は能力を発動させ落下してくるの元へと飛び込んで
落ちるに手を伸ばす。







「・・・・・・ッ!」



「バ、バニーッ」






の目から零れる涙の粒が重力に逆らいながら、僕の頬をかすっていく。
急降下していく体で精一杯手を伸ばし、の手が近づく。


あともう少し、後もう少しで・・・・・・の手に。


そう心の中で念じていると、の手を握ることができ
そこから僕は思いっきり彼女の手を引き抱きしめた。






「バ、バニーッ・・・海に、落ちちゃう。私も、バニーも・・・死んじゃうっ」


「死なせない」


「え?」


「君だけは絶対死なせはしない」


「バニー・・・ッ」






例え海に落ちたとしても、だけは守ってみせる。


僕の身が滅びようとも、愛する彼女だけは絶対に。



すると凄まじい勢いで落下していた速度が徐々に低下していく。
そして、海面ギリギリで体が浮いていた。


まさか・・・・。














腕の中に居るを呼ぶと、彼女は顔をあげた。
いつもの目の色が・・・能力者特有のブルーアイズ、そして体に纏われた青色の発光。

がテレキネシスの能力を発動させていた。
だから、海面ギリギリのところで僕と彼女の体は浮いている。





、能力を」


「飛んでバニー」


「え?」


「今なら蹴りあがって飛べる。魔女の力は少ししか持たないから・・・・早く」






は笑みを浮かべて、僕にそう言ってきた。

僕は彼女をしっかりと抱きしめ―――――。






「行きますよ」


「うん」






能力を使い、勢い良く飛び上がった。

の能力の助けもあったおかげで、橋の下から
道路まで登ることが出来た。








「バニーッ!!」


ッ!!」






元いた場所に戻ると、ヒーロースーツに身を包んだ虎徹さんやブルーローズさんが待ち構えていた。
上を見上げればスカイハイさんが犯人を捕獲して
僕に親指を立てて見せてきた。









「犯人はスカイハイが捕まえた。をよく助け出したな」


「いえ。彼女を助け出すのは、当然です」






虎徹さんが駆け寄ってきた。
そしてを体から離すと、ブルーローズさんが心配そうな顔をして駆け寄ってきた。










〜ッ!!ごめん、ごめんね、私が近くに居たのに・・・ッ」


「ブルーローズ。大丈夫だよ、バニーが助けてくれたから」


「だからって。・・・・ちょっと、アンタ、右腕・・・血が出てるじゃない!!」



「え?」

「お、おい」








ブルーローズさんの声で僕と虎徹さんはすぐさまを見た。
僕らが見るとは右腕を隠した。

しかし、服に滲んだ血液は汚したことを物語っていた。
僕はすぐさまに近づいた。





、いつ・・・いつ」



「い、いつだろうね・・・気づかなかったよ」



「まさか、さっき」








海に叩きつけられそうになったのを能力で止めたのは、

さっきも主塔のところから突然火が上がった・・・それも考えたらの能力。


もし、その二つが彼女の体に負担の掛かるほどの力が働いてたとしたら。


がさっき言ってた「魔女の力は少ししか持たないから」という言葉は。





「病院に行きましょう。怪我してるんじゃ危ないわ」


「ぅ、うん」





ブルーローズさんがを連れて救急車へと向かう。
僕は、どうして・・・。





「バニー」





するとの声がして、僕は彼女のほうを見る。








「お家で待ってるから。早く帰ってきてね」







痛みを堪えた笑顔で僕にそう告げて去っていった。

救急車に乗せられたを僕は、見えなくなるまで見送った。







「服、後で着替えねぇとな」


「え?」






見送っていると虎徹さんがヘルメットのレンズを開けて
僕に話しかけてきた。

でも、今そんな話をされても気分が悪い。





「こんな時にそういう話やめてください」


「いや、だってお前・・・服見てみろ。本物のドラキュラみたいになってんぞ?」


「え?」




胸の辺りを指差され、僕は顔を落とすと
確かに白いブラウスに血が付いてて、まるでドラキュラが血を吸った後のように思えた。






のかもな」


「だと思います」






本当に、僕はドラキュラだ。

彼女の血も、何もかも吸い尽くすほど・・・残酷で惨い、男だ。




謝ると決めたのに・・・どうして、こうも僕と彼女の間には邪魔が多いんだろうか。




Good luck comes by cuffing.
(”好事魔多し“事件は解決。だけど良い時に限って、邪魔が多い) inserted by FC2 system

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