「ただいま」




服を着替えて、僕はマンションへ戻ってきた。

でも、が先に帰ってきているはずなのに
部屋の電気は真っ暗のままだった。


確かにさっき彼女は「お家で待っているから」と言っていた。
の帰ってくる家は僕のところしか考えられない。

だけど「ただいま」と声を出しても「おかえり」の返事が返ってこない。







「ついに愛想つかされたか」





に謝らなかった挙句、今日はあんな怖い目に遭わせて
仕舞いには怪我を負わせしまった。

誕生日だというのに、本当についていない。
こんなことなら虎徹さんたちの誘いを断らなければ良かったかも・・・などと思っていた。

今年からまた1人で祝うのに逆戻りか・・・と思いながらリビングの扉を開け
電気を点けた。






「・・・え」





電気を点けた時、僕は目に飛び込んできた光景に驚いた。


テーブルに並んだあたたかい食事と、大きなデコレーションケーキ。
近づいてみると、ケーキのホワイトチョコのプレートには『Happy Birthday Barnaby』と
チョコレートの文字が書かれてあった。








-------パァアン!







「うわっ!?」







突然後ろから甲高い割れるような音がして、僕は驚いた。
振り返ると其処には―――――。







「アハハ、びっくりした?」



!?」







割れたクラッカーを持った私服姿のが立っていた。
の登場にも驚いたが、僕が何より驚いたのは目の前に用意された食事だった。






、あのコレは一体・・・?」



「今日はハロウィンだけじゃないでしょ?バニー・・・・誕生日、おめでとう」



「僕の誕生日、知ってたんですか?」



「知ってたっていうか、カリーナに教えてもらったの。もう、今月誕生日なら早く言ってよね。
色々と準備するの大変だったんだから。何で言ってくれなかったの?」



「いえ・・・あ、あの・・・」






言えるわけがない。

君の慌てる顔見たさに言わなかった、なんて。





「まぁいいけどね。あ、コレ・・・誕生日プレゼント、はい」



「え?・・・ぼ、僕にですか?」



「今日誕生日なのは誰ですか?」



「ぼ、僕です」



「ならバニーのね。はいどうぞ」







そう言ってが僕に2つの袋を渡してきた。

1つは手作り感のある袋で、もう1つはどこか店の袋だった。

2つともなんだが全然タイプの違うものだった。
気になるほうを開けたかったので、手作り感のある袋を床に置き
どこかの店の袋のものから見る。
袋の口を塞がれたテープを取り、中を見ると黒い箱が入っていた。






「あの、コレは?」



「いいから開けてみて」





に尋ねると、開けてみてとしか言われず
とにかく僕はそれを開けた。

箱の蓋を開けた瞬間、目を見開かせ驚いた。


僕のしているネックレスと似ているデザインのモノが入っていた。
しかも、誕生日と名前入り。








、あの、これ・・・っ」



「びっくりした?」



「当たり前です。高かったでしょう・・・でも、どうやってコレを買ったんです?」







似ているものを探し当てたとはいえ、高かったに違いない。
ましてや名前を入れてもらうとなると元の値段に上乗せされて
さらに高くなる。

の学費以外、生活面のお金は全部僕が出している。
それだというのにこのネックレスを一体、どうやって・・・?

どうやって買ったのか?と尋ねると、は―――――。








「あのね、ずっとバニーに隠してたの」



「な、何を?」



「アルバイトしてたんだ私。アニエスさんとかカリーナに頼んで
お仕事回してもらってたの・・・雑務ばっかりだったけどね。あ、ロイズさんの書類整理も手伝ってたんだよ」



「それじゃあ・・・もしかして・・・・モデルの仕事は」








まさか・・・このために?

僕のプレゼント買うために、モデルの仕事を?








「うん。アニエスさんがね、一気に弾む方法って言って誘ってきたの。
恥ずかしくて出来ないって思ったんだけど・・・そのネックレスを、どうしてもバニーにプレゼントしたくて・・・それで」








あぁ、やっぱり僕はアニエスさんの言うとおり
大きな勘違いをしていた。


は、自分のために引き受けたんじゃない・・・僕のために引き受けたんだ。


僕の、このプレゼントを買うために。



それだというのに・・・僕ときたら・・・・・。







「すいませんでした



「え?・・・や、何で謝るのバニー。今日、バニー誕生日なんだよ?謝らなくていいよ」



「いえ、謝らないと僕の気が済まないんです。君に酷いことを言ってしまって。
君は・・・僕の、僕の誕生日プレゼントのためにしてくれたことなのに・・・それなのに、僕ときたら
そんな君の想いを踏みにじるような言葉を言ってしまって」



「バニー」






そうか、だから「やめてほしい」とは僕に言ったんだ。
僕の性格を知ってるから、が他の人の目に映ることを嫌がってるから。

分かっていてくれたから・・・言ったんだ。

「やりたいならやればいい」じゃなくて「やめてほしい」と。


それを言わなかった僕に、は泣いたんだ・・・傷ついたんだ。



彼女はこんなにも僕の事を想っていたのに。

裏切ったのは彼女じゃない、僕のほうだったんだ。








「ごめんなさい。傷つけてごめんなさい」


「バニー・・・泣かないで」






気づいたら目から涙が零れ、頬を伝っていた。

涙が伝う頬にが優しく触れる。
目の前の彼女は僕に微笑んでいた。







「貴方をビックリさせたかったの。いつも貴方にはたくさんたくさん愛してもらってるから。
何かしてあげたかった、少しでも私なりに恩返しがしたかった、私も愛してるよって伝えたかった」







「モデルもいい経験のうちだから。でも、そんな華やかな世界に行くより
私は貴方の側にずっと、ずーっといることが何よりも幸せなの。貴方にもう寂しい思いさせたくないから」



「・・・君という子は」






嬉しさのあまり、僕はを抱きしめた。


僕は多分今・・・世界で一番幸せな男かもしれない。



こんなに彼女に愛されて。

こんなに彼女に想われて。



寂しいわけがない。

寂しいと想うのは、と離れたときだけしかもう感じない。


僕はから離れ彼女を見る。








「つけてみて、いいですか?」



「うんいいよ。あ、つけてあげるね」





がそう言うと、僕は彼女が付けやすいように
床に腰を下ろし元々つけていた自分のネックレスを外す。

ネックレスを外すと新しいネックレスが、僕の首にかかる。
体温と違うのか、プレートが肌に当たって冷たかった。

付け終わったのかの気配が後ろから消え、すぐさま前に来る。






「似合ってますか?」



「うん、似合ってる。カッコいいよバニー」



「ありがとうございます」





彼女から言われる「カッコいい」は普段言われているものよりも
なんだか恥ずかしくて・・・凄く嬉しい。




「あの、もう1つのプレゼントは何ですか?」


「あれはね、手作りのお香だよ。バニー最近お香にハマってるじゃない?
だから前、バニーが言ってたキンモクセイの香りで作ろうと思ったんだけど・・・・できなかったの。
自然のお花からだと水分多いからって。でもね、ネイサンに落ち着く香りをチョイスしてもらってそれで作ったんだ」










何から何まで。

僕が驚かそうと思ったのに、逆に僕が驚かされてしまった。
こんなに素敵な誕生日・・・きっと生きていなければ、祝うことだってできなかった。

今までツラかった誕生日が、素敵で嬉しいものだったなんて。







「あ、ご飯食べよう。ロールキャベツ作ったの、バニー好きでしょ?」


「君は何処まで僕の事を把握してるんです?嬉しすぎて涙が滝のように出そうですよ」


「ウフフ。あ、でもね・・・ロールキャベツのスープ、コンソメかトマトで悩んだんだ。バニーどっちが好きなんだろうって。
とりあえずトマトで作ってみたけど・・・・美味しくなかったらごめんね」


「美味しくないわけがないでしょう」





そう言いながら僕はを抱きしめた。







の作ったものはみんな美味しいんですから。の作るもの全部僕の大好物ですよ」



「ありがとうバニー。そう言ってくれるだけで嬉しい」



「嬉しいのは僕のほうです。こんなに嬉しい誕生日はとても久しぶりです」



「じゃあ毎年祝ってあげるね。・・・・・・バニー」








名前を呼ばれると、頬に彼女の唇が触れた。

すぐさま離れて頬を赤らめたが僕と視線を合わせる。







「お誕生日おめでとう。生まれてきてくれて、ありがとう」



「ありがとうございます・・・・・・・愛してます」



「私も愛してるよバニー」









その言葉を耳に入れ、僕はと唇を重ねた。





All's well that ends well.
(”終わりよければ全て良し“びっくりするほど素敵な誕生日をありがとう) inserted by FC2 system

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