「バーナビー!前回のお悩み相談、反響良かったよ。ホラ、こんなにハガキやメールたくさん届いてる!」
「ありがとうございます」
「やっぱりアレだね。最後に答えた『泣き虫ウサギ』の恋愛相談が良かったみたい」
「は、はぁ・・・」
反響が良くてコーナーが持続するのは良い事だ。
むしろ、良くなかったらそれ一回で終わっていたのかもしれない。
そう考えたらコーナーが持続するのは良いことではある。
だがしかし、僕自身は良い事の一つも身に起こっていない。
最初の泣き虫ウサギのハガキに触発され、自分からに電話するはずだった。
アドバイスはその逆だったのだが。
しかし、タイミングが悪かったのかロイズさんから急な仕事を頼まれてしまい
結局僕はの携帯に留守電を残すことしか出来ず、それから相変わらずズルズルと
離ればなれのような状態が続いていた。
僕が留守電を残したけれど、からの着信はなかった。
多分僕のスケジュールや時間を気にしてからか電話を掛けてこないのかもしれない。
何にせよ、結局は自分から踏み出したことだけど失敗だ。
僕は失敗に終わったけど、泣き虫ウサギは上手くいっただろうか?
そんなことをふと、思っていた。
「んで、ほい」
「え?」
ふと、監督から一枚のハガキを渡された。
「反響を呼んだ子から来たよ」
「反響を呼んだ・・・って」
まさか、と思い僕はすぐさまハガキを受け取った。
裏面の一番下を見ると・・・・『泣き虫ウサギ』と書いてある。
「今回も一番最後にこの子のハガキは読んでいいから」
「はい」
「あと、それ持って帰るんだろ?コソッと持って帰れよ、上にバレたらどやされるからな」
「はい、ありがとうございます」
そう言って僕はブース内に入り準備をする。
もちろん、渡された悩み相談のハガキやメールを一枚一枚チェックするため。
そして一番最後にあの、泣き虫ウサギのハガキを見る。
上手くいっただろうか?僕は失敗に終わったけれど
きっと良い子に違いないだろう泣き虫ウサギさんは成功した・・・と思っていた。
「え?」
でも、読んでみた文面に僕は驚きを隠せなかった。
「オリガミはっきょいラブさん、大丈夫ですよ。僕らの仲間の折紙サイクロンも陰ながら皆の役に立ちたいと願っていて
努力をしています、だから貴方も頑張ってください。曲は折紙サイクロンで【見切れ桜】でした。
それでは、最後のお悩み相談です」
僕は淡々とラジオのコーナーをこなし、お悩み相談のコーナーも最後になる。
「最後の相談者は、前回とても恋に悩んでいた泣き虫ウサギさんからです。おハガキありがとうございます」
最後の最後で、僕はこの子の相談を持ってきた。
「『バーナビーさん、前回はお悩みを聞いてくださってありがとうございます。彼に電話を掛けようと思ったのですが
勇気が出せずに電話をすることが出来ませんでした』それは・・・残念ですね」
最後の部分、感情をこめて僕はハガキを読んだ。
内容をあらかじめ読んだのだが結局、僕も失敗に終わり、泣き虫ウサギも失敗に終わってしまった。
泣き虫ウサギは勇気が出せずに失敗し。
僕は自分から踏み込んだけれど失敗に終わった。
「『せっかくバーナビーさんがアドバイスをしてくださったのに本当にすいません』いえいえ、僕の方こそお力になれずにすいません。
『もうすぐ彼の誕生日が近付いてきているんですが、どうしたらいいでしょうか?このままの状態を続けていれば
きっと彼の誕生日、上手く祝えないような気がしてならないです』ほぉ・・・もうすぐ彼がお誕生日なんですね」
最後の文面に書かれていた『とても不安でたまりません』を敢えて僕は口に出す事無く
僕は言葉を発した。
不安でたまらないだろう。
何せ自分から電話も出来ず、彼との接触が出来なかったのだから。
此処は、何か良いアドバイスをしなければ。
もし、もし僕との場合ならどうだろうか?
再び僕らにして置き換えてみた。
すると、それは自然と答えが見えてくる。
「誕生日を上手く祝おうとか、考えようとせず・・・ただ純粋に、彼に喜んでほしいと思い
料理やケーキを振舞ってみてはどうでしょうか?」
僕だったら、きっとから何をしてもらっても嬉しくてたまらない。
去年やってきた誕生日も、とても・・・嬉しかった。
僕のために頑張ってくれた・・・の姿。
驚かすために、色々してくれた・・・思い出しただけで嬉しい気持ちがこみ上げてくる。
首に下がった誕生日と名前入りのネックレスが何よりの証。
だけど、モノよりももっと大切なことがある。
「飾らず、彼の誕生日はきっとアナタが側に居てくれれば十分だと思います。
アナタと彼で、素敵な誕生日を過ごしてください。きっと今までに空いた隙間もその日を境に少しずつ埋まっていくと思います」
憶測でモノを言うのは良くないと思っている。
だけど、僕がダメでも・・・泣き虫ウサギの為に僕は出来る限りのアドバイスはしてあげたい。
良い方向に、少しでも向かわせたい。
僕とは、すれ違ってばかりだけど・・・僕らの関係だっていつか、以前のように元に戻る。
まだその方法は見つけることは出来ないけれど・・・いつか・・・・・・・・。
「すいません、若輩者の僕がこんな事を言って。泣き虫ウサギさんの心が少しでも癒える様にこの曲をお送りします。
バーナビー・ブルックスJrで・・・【No Farwell】」
曲が流れる間ヘッドフォンを外しため息を零した。
僕が何か考え込んでいると分かったのか、音響室の誰も僕に声を掛けようとはしなかった。
今度こそ、上手く行ってほしい。
泣き虫ウサギの、泣き虫が・・・なくなるように。
そして、いい加減・・・僕の側に居る女の子涙を止めなくては。
も、きっと・・・寂しくて、泣いているに違いない。
早く、はやく止めないと。
気持ちは思うだけなのに、中々行動に移すことが出来ず
ただ、ただ僕は落胆するしかなかった。
「バーナビー、良かったよ。何か、俺珍しく目が潤んだ」
「ありがとうございます」
収録を終え、ブースから出ると監督が嬉々として僕に話しかけてきた。
「ていうか、泣き虫ウサギのハガキで思い出したんだけど」
「はい」
「バーナビー、あとちょっとで誕生日じゃね?俺の記憶に間違いがなければ」
「え?」
それを言われて、ふと思い出し首に下がったネックレスに触れた。
「(・・・・・・)」
僕の誕生日に、僕と彼女の距離は縮まるのだろうか?
Who will bell the cat?
(”言うは易く行うは難し“簡単なようで実際凄く難しい問題)