「ちょっと、後5日よ!5日しかないのに何も考えてないってアンタバカ!?」
「ご、ごめんなさい」
「もうお嬢をそんなに怒らないわよブルーローズ」
「そうだよ。さんは悪くないよー」
ある日のトレーニングルーム。
私はカリーナに重大な事を告げた瞬間凄まじい勢いで怒られていた。
もちろんそれを宥めていたのは、ネイサンやパオリンだった。
私が何を告げたのかと言うと・・・・・・・。
「呆れた。前、あれだけ必死こいて動き回ってたのに、今年は何もしてないなんてどういう意味よ!!」
「別に何もしてないってわけじゃ」
「だからって何で5日前になって”バニーの誕生日プレゼントどうしよう”なんて言い始めるのよアンタは〜!!」
「ご、ごめんひゃしゃ〜い」
そう。
残り5日と迫ったバニーの誕生日の事についてだった。
別に何もしてないって訳ではない。
でも、プレゼント自体思いつかないのは事実。
去年は彼と迎える初めての誕生日だったから色々と準備をしてサプライズをした。
結果大成功に終わったし、バニーもバニーで喜んでくれた。
だが、今年に限って・・・私はプレゼントの準備を怠った。
料理はもちろん、彼の好きなモノを用意し、またケーキだって去年より少し豪華にしようと思っている。
しかし、肝心のプレゼントが見事に疎かになってしまった・・・彼の誕生日5日前の事。
「何でアンタはこういう肝心な時に限って」
「だ、だってバニーが・・・っ」
「・・・・・まさか、アンタラジオの事鵜呑みにしてんじゃないでしょうね!?」
「だっ、だって・・・」
「ラジオ?」
「ハンサムのラジオの事かしらん?」
完全に蚊帳の外のパオリンとネイサン。
しかし、それを無視して私とカリーナは会話を続ける。
「あのね!アイツはアンタが送ったって知らないの!!知らないでああいうコメントをしたのよ」
「で、でも・・・私が、少しでも側に居ることで・・・その、今まで空いた隙間埋まるんだったらって思ったら」
「でもプレゼントを用意しないってのはお粗末な話じゃないの?」
「それは、そうだけど・・・っ」
カリーナに言われ何も言い返せなかった。
確かに私が側に居ることで空いた隙間が埋まると言うのならそれはそれでいいと思う。
しかし、彼がそれだけで満足するのか?と聞かれたら・・・正直なところ分からない。
去年、あれだけの事をしたのに・・・今年は、って思われてもおかしくない。
「あと5日しかないのよ、私に今更頼られても困るからね」
「自分の失態だから、自分で何とかする」
「あっそ、好きにすれば」
そう言ってカリーナは呆れた表情を浮べトレーニングへと戻って行った。
「ブルーローズ、かなり怒ってたね」
「もう恋に悩めるお嬢にあんな風に言わなくてもいいのに」
「自分でやらかした事だから仕方ないよ。自分で何とかしなきゃ」
パオリンとネイサンが宥めてくれるも、元々は私自身が起こした失態。
もう5日しかないけれど、今更バイトをする余裕もなければプレゼントを買う余裕も無い。
何とか、やるしかない。
「お嬢、困ってるならお金貸すけどぉ?」
「いいよ、大丈夫」
「ホントに大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
少し、いやかなり不安だけど・・・もう周りに迷惑は掛けられない。
彼の誕生日は、彼の側で祝ってあげたい。
「バニー・・・読んでくれるかな」
私はあるモノをテーブルに置いてリビングを去り寝室へと向かう。
彼がテーブルに置いたモノを読んでくれると、信じて私は眠りに就くのだった。
『バニーへ。
5日後の10月31日お話したいことがあります。
出来るなら早く帰ってきてください。とても大事なことなので、出来る限り早く。
ワガママかもしれないけれど、お願いします』
「大事なこと」とは、アナタと共に、貴方の誕生日を祝うことです。
だから、最初で最後のワガママ。
バニー・・・31日は早く帰ってきてください。
After a storm comes a calm.
(”待てば海路の日和あり“焦らず、じっと我慢して・・・私は待ち続ける。そうすればきっと・・・)