バニーの誕生日を4日後に迫ったある日。
ネイサンに呼び出され
私はヘリオスエナジーへと足を運んだ。
「いらっしゃぁ〜いお嬢」
「突然呼び出すからどうかしたのネイサン?」
「ん〜ん・・・実はイイ代物が入ってね」
「代物?」
応接室に着いた私が突っ立っていたら
ネイサンに「ちょっと座って待っててん」と言いネイサン本人は何処かに行く。
一方の私はというと大人しく椅子に腰掛けネイサンの帰りを待った。
「お・ま・た・せ」
一分足らずでネイサンは応接室にあるモノを持って戻ってきた。
テーブルに置かれたのは、ワインボトル。
「え?ネイサン?」
「昨日。お得意さんから頂いた年代モノのロゼよ」
「それは凄いものって分かるけど・・・私、未成年だよ。お酒飲めない」
そう、私は18歳で未成年だ。
お酒を買うことも、ましてや飲むことも禁止されている年齢。
「バカね。飲むのはアンタじゃないの」
「へ?」
「ハンサムよ」
「バニー?え、どういうこと?」
飲むのは私じゃなくバニー。
でも、渡すなら私じゃなく直接バニーに渡せばいいのではないだろうか?
意味が分からず首を傾げていたら・・・・・・。
「あーた、ホント鈍い子ね」
「え?」
「あと4日したら、何の日よ?」
「4日したらって・・・そりゃ、バニーの誕生日・・・・え?ネイサン、じゃあ」
もしかして、バニーが飲むって事は・・・。
「アタシから、ほんのささやかなお手伝いよ」
「ネイサン」
目の前のワインボトルは、ネイサンからの支援品だった。
「ハンサム・・・ロゼがお好みらしいのよ」
「知らなかった」
去年は彼の部屋に置いてあったスパークリングワインで彼にはお酒を飲んでもらった。
てっきり私はそれが彼の好きなモノとばかり思っていた。
「あらん。お嬢でも知らないことあったのね」
「うん。いつもバニー、冷蔵庫にスパークリングワインかミネラルウォーターしか入れてないから」
「聞かなかったの好きなお酒?」
「聞いても私買えないよ、未成年だもん」
「鈍いって言うか、真面目って言うか・・・お嬢のそういう所がハンサムは惚れこんでるのよねきっと」
ネイサンからそれを言われ赤くなった。
「でも・・・いいの、ネイサン?」
「何が?」
「こんな高価なもの貰って」
いくらバニーの誕生日とは言え、年代モノのロゼ。
タダで貰うには何だか申し訳ないような気がしてならない。
「あら、アタシはいいのよ別に」
「でも、何かタダで貰うの申し訳ないよ」
「去年、あーたは十分アタシ達のために動いてくれたじゃない、それでいいのよ」
「でもぉ」
「つべこべ言わず持って買える。当日、ハンサムをうんと驚かせてやりなさいよ。
どうやって買ったのか、って聞かれたら”乙女の秘密“って答えるのよ、いいわね?」
「ネイサン」
そう言ってワインボトルを綺麗な袋に入れて私に渡してくれた。
「素敵なバースディになるといいわね」
「・・・・うん!」
そう言ってヘリオスエナジーを出た。
マンションに戻る際、貰ったワインボトルを見ながら考える。
誕生日プレゼント、用意できないかもしれないけれどワインに合う
料理は作りたい。
せっかく良い物を貰ったのだから、何か見合うもの・・・と考えては見るもののなかなか思いつかない。
「困ったなぁ・・・去年と同じわけには行かないし・・・」
去年と同じようロールキャベツでソースを変えようかと考えたけれど
何だかそれだけじゃ味気がないように思えてきた。
ケーキも、クリームのケーキでもいいけれど
チョコでコーティングしたのも捨てがたい。いっその事、別のモノ・・・とも考えている。
結局は試行錯誤を繰り返して、決まっていない。
「どうしよう・・・・・・・・・あ」
困り果ててふと、立ち止まった。
其処は郵便局。
本当は、この前のハガキで『泣き虫ウサギ』のフリはやめようと思っていた。
けれど・・・このままじゃ、何も思いつかない。
確か、次の放送は・・・30日。
収録は、その前の日だとかバニーが言っていた気がする。
これで、最初で最後にしよう。
私は郵便局でハガキを買って、その日のうちに書いて、その日のうちにポストへと
思いの丈を詰め込んだハガキを投函した。
最初で最後、この泣き虫なアナタを待ち続ける私に・・・ウサギさん、お願いします。
不確かでも、貴方を喜ばせる・・・この泣き虫な私に
最初で最後の知恵をお貸しください。
Knowledge is power.
(”知恵は力なり“貴方の言葉は皆や私に大きな影響を与える)