「え?あの間(ま)はそういう事だったんですか?」



「まぁな。それ初めて聞かされてびっくりしたわ俺」




バニーの誕生日の数日後。
私は街をブラブラしていたら、ばったりタイガーさんと遭遇。

そのまま近くのオープンカフェでコーヒーをご馳走してもらっていた。


飲んでいる最中。
話は、バニーの誕生日前日に放送されたラジオの話になる。



ビーストロガノフの件(くだり)辺りで、一瞬音声が消えたけど
すぐさまタイガーさんが喋りだした・・・其処辺りの話。






「いや、まさか・・・俺の退散して言った後、がバニーのためにビーストロガノフ作ってるって
あの時初めて聞いたわ」


「確かに・・・私、タイガーさんに言いませんでしたよね」





バニーと初めてキスをした日。
あの日、私は彼にビーストロガノフを用意していたのだ。

しかし、バニーの困惑や私の表情にタイガーさんは雰囲気を察したのか
その後の食事をせずにそそくさと退散していった。




「あの時黙り込んだのは、筆談してたんだよ。バニーが
”僕とが一緒に住み始めてギクシャクしていた日に貴方が来て
その後の雰囲気を考えて退散していった日ですよ“って
台本に書いたのを読んでたんだよ。それであの間が出来たってワケ」


「そんなことがあったんですね」





ようやく、誕生日前日に放送されたタイガーさんの間の理由が分かった。
しかし・・・そんなことがあったとは、思いも寄らなかったし
普通に喋りながらそんな事を書いているなんて・・・バニーは器用だなぁ、と感心していた。





「しっかしバニーだけずりぃ、って思った。おじさん、の手料理そんなに食べてねぇのにさ。
ビーストロガノフにロールキャベツにケーキとか・・・あー羨ましい〜」


「じゃあ今度タイガーさんのお家でお料理作りますね」


「お!いいねぇ〜・・・まぁお前がウチに来るって言うなら必然的にバニーも来るな」


「ウフフフ、そうですね」





タイガーさんの話に笑っていると、かの人が私をジッと見ていた。
その視線を感じ笑うのをやめる。





「タイガーさん?」



「その様子から見て、バニーの誕生日・・・上手く行ったみたいだな」



「・・・えぇ。バニー、とても喜んでくれました」







私の笑顔にタイガーさんは安堵の表情を浮かべた。


それまで私はずっと表情を曇らせてばかり。
カリーナにも何度も泣きついてばかりだった。

私とバニーの関係を知っている周囲の人たちは皆「大丈夫だろうか?」と
心配な面持ちで見守っていてくれた。



でも、誕生日当日。


彼の仕掛けられた罠に嵌ったとはいえ、大成功。

ネイサンから貰ったロゼも彼は喜んでくれたし
久々に作った思い出のビーストロガノフも、ドーム型のケーキも彼は全部食べてくれた。


ビーストロガノフも久々に作り味に少し心配があったのだが、彼はそれを一口食べた途端
「あの日食べた味と同じで、とても懐かしいです」と笑顔で言ってくれた。





「次の日は次の日で、バニーの惚気が全開だったからブルーローズ怒ってたぞ?
終いには”アイツ殴っていい?“とか言い出すからおじさんビックリしたわ」


「もう・・・バニーったら」





嬉しいのを表現するのは構わないのだが
本当に彼はそれを思いっきり、しかも目で分かるように他人に表現する。

ようするにお惚気兎がお出ましになる・・・と、アニエスさんから聞かされたことがある。


他人には誕生日を迎えられて嬉しそうにするバニーの姿だが
私とバニーの関係を見知った人達には完全に惚気てる、とだけ見えるらしい。


本当に、そういう所・・・直してほしいし、私としては恥ずかしい。


恥ずかしさのあまり目線を下に落すと・・・・・・。




「あ、いけない!」


「ん?どうした?」




私は立ち上がり、慌てる。





「す、すいませんタイガーさん、私今から行くところが」


「あ、マジ?悪ぃな、足止めさせて」


「いいえ。少し時間潰したかったし・・・あ、コーヒーご馳走様でした」


「おう、気をつけてな」


「はい!」






タイガーさんに別れを告げ、私はカフェを後にし小走り。

さっき目線を落として気付いたのは自分の腕にはめていた腕時計で時間を見てでの事。
私は小走りをしながらもう一度腕時計を見る。





「あと5分で着くよね」





そう呟いて、私は待ち合わせの場所へと駆けた。



























「それではお悩み相談も次で最後になりました」




僕はラジオの収録中。
そして、お悩み相談コーナーの最後、僕は一枚のハガキを手に取り読み上げる。






「R.N 泣き虫ウサギさん・・・ですね。いつもお手紙ありがとうございます」





ハガキを手に取って気付いたが、ハガキの主は『泣き虫ウサギ』。

という事は、という事になる。
しかし・・・僕の誕生日に彼女は言っていた・・・『もうハガキを送るのは、おしまいにするから』と。

だが、ハガキが送られてきた・・・まだ悩み事があるのか?と思っていた。






「『バーナビーさんのおかげで、彼と関係を修復することが出来ました。本当にありがとうございます』
あぁ、関係が元に戻った報告ですね。それならば良かったです」






誕生日を境に、僕らの関係は元に戻った。

僕は相変わらず忙しいけれどそれでもは笑顔であの部屋で待っていてくれる。

メールも送るようになったし、は気兼ねなく僕に電話を掛けてくれるようになった。
もちろんタイミングを考慮してメールに「今電話していい?」とメールで送ってから掛けて来るようにしている。


僕も、それだけで・・・と繋がっていれる、という気持ちになり
マンションに戻るまでの仕事をやり遂げようと言う気分になる。






「『それで・・・些細な悩みなんですが、今度彼とデートする約束をしたんです』・・・ふむ、成る程」







成る程、今度はデートでの・・・ってワケか。





「『久々のデートで緊張して、もしかしたらテンパって彼に迷惑をかけてしまいそうなんです。
バーナビーさんはそういう時に陥った場合緊張とかしたりしますか?私はいつも彼が側に居るだけで
ドキドキが止まらないんです』・・・というお悩みですね。何というか可愛らしいですね、泣き虫ウサギさん」








が僕の知らない間に、こんな手紙を書いているんだ・・・と考えたら
思わず「可愛らしい」という本音が漏れてしまった。

でも、本当の事だから仕方が無い。


そうか・・・、僕の側に居るだけで・・・・。



僕は一旦目を閉じ、笑みを浮かべながらマイクに向かい言葉を放つ。







「そうですね。僕がこういった場合に陥ったのなら・・・多分、同じように緊張してテンパってしまうかもですね。
結構こう見えて緊張しないタイプではないんですよ、僕。内心ドキドキしっぱなしって時もありますから」







ブース外の監督やスタッフは笑っているが
を前にした僕の、コレは率直な言葉だ。

彼女を前にしただけで心臓は酷いまでに高鳴り、平然を装うのも結構骨がいる。
正直、理性を保たせるだけでもいっぱいいっぱいだ。




が、あまりにも僕を夢中にさせるから。






「誰しも好きな人の前で緊張しない人は居ないと思います。だから、ありのままの君を
彼に見せてあげてください、そうすればきっと彼もまた君に夢中になっていくと思いますから」








夢中になるどころか・・・僕はもう、に溺れているがな。






「おっと、もうこんな時間だ。『泣き虫ウサギ』さん、これからも彼と仲良くしてくださいね。
それでは曲と共にお別れしましょう。曲はスカイハイさんで『Thanks, and thanks again!』ではまた次回・・・See you!!」






曲が流れ、提供の音声が流れる。

僕はヘッドフォンを外しすぐさまブースを出る。







「お疲れ様でした」


「お疲れバーナビー!やっぱり『泣き虫ウサギ』のハガキは」


「すいません。次の予定が入っているので僕今日はコレで」


「あ、そう・・・スーパーヒーローは忙しいからね」


「すいません。では、お疲れ様でした」






いつもは監督の話に捕まるのだが、この後の予定を考えたら
捕まるわけには行かない。

僕はすぐさま話を切り上げ、収録現場から立ち去る。

ジャケットのポケットに入れた携帯で時間を確認する。




約束まであと1分。



僕は小走りでラジオ局から出て、辺りを見渡す。
すると携帯が鳴り響く。






「はい」


『あ、バニー・・・ラジオ終わった?』


。・・・今しがた終わって、外に出てきましたよ・・・・君は何処ですか?」







とデートの約束をしていた僕。

しかも誘ったのは僕の方だから、待たせたりしては男として失格だ。

彼女には待ち合わせ場所を
僕のラジオを収録しているラジオ局周辺にと、指定していた。


しかし、辺りを見渡してもの姿が無い。






『こっちこっち』


「どっちですか?」


『バニーの後ろ』


「え?」






振り向くと、建物から体をひょっこり出して笑顔で僕に手招きをしているを見つける。



多分気にして人目につくところでの待ち合わせを避けたのだろう、と思い
僕は携帯を切り、すぐさまの元に駆け・・・・・・抱きしめた。







「ちょっ、バ、バニー!?」


「会いたかったですよ


「あ、朝もお喋りしたじゃん。たった数時間だよ?」


「それでも僕には長いように感じたんです。会いたかった」






を抱きしめ、めいいっぱいの愛情を表現する。



そして体を離しの顔を伺う。

少し鼻先が赤くなっていた。



季節的には肌寒いし、もしかして少しを待たせたかもしれない。
おでこを合わせ彼女を見る。





・・・もしかして、待ちました?」


「ふぇ?・・・そんなに待ってないよ?それに約束の時間はまだでしょ?」


「それでも君を待たせたことには変わりがありません。寒かったでしょう、すいません」


「うぅん、いいよバニー大丈夫」






ほら、君が笑うだけで僕の心臓が高鳴る。


緊張しているのは多分、君だけじゃないんだよ。


僕だって君の側に居るだけでこんなにも胸が熱く、そして鼓動はしない。






「車・・・すぐ持ってきますから、近くで待っててください」


「うん」


「夕食は何処がいいですか?」


「フォートレスタワーの展望台レストランがいいな。
この前そこでカリーナとピザ食べたの、美味しかったんだよ。
期間限定のデザート可愛くてね美味しそうだったんだ。でもお金足りなくて食べ損ねちゃった」


「分かりました、じゃあ夕食は其処に行きましょう。デザートも頼んでいいですよ」


「いいの?」


「もちろん。久々のデートですよ、たっぷり僕に甘えてください


「うん!・・・バニー大好き」






甘く、蕩けるような笑顔でそんな言葉を言われたら・・・僕だって・・・。







「僕も大好きですよ








君を愛さずにはいられず、それを表現したくて唇を重ねたのだった。






Marriages are made in heaven.
(”縁は異なもの味なもの“結びつきは不思議だけど何だかんだでうまくできている) inserted by FC2 system

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