「え?バニーの誕生日?」
「そうなの。それでいつなのバニーさんの誕生日」
「10月31日だけど」
お昼休み。突然だった。
エミリーから突然バニーの誕生日の事を尋ねられた。
「今月末じゃん」
「ギリギリセーフ。ねぇねぇ。ウチらでさぁ今回はバニーさんの誕生日お祝いしてあげようよ」
「え?・・・あ、あの、何で?」
お祝いしようという言葉に内心嫌な予感がよぎり始める。
思わずお弁当を食べる手が止まった。
「毎回2人でお祝いしてるっていうからさぁ〜たまには皆でお祝いしてあげたほうが
何かと盛り上がるじゃんっていう話」
「ていうか、2人の愛の巣にお邪魔したいのが一番なんだけどね」
「ねぇねぇやろうよーー・・・ていうか、二人の住まい見てみたいー」
「み、見てもおもしろくないよ!!バ、バニーの部屋なんだから、私の居住スペースなんて無いに等しいよ」
此処は何としてでも、バニーの部屋に私以外の人間を踏み入れる事を拒まなければならない。
見知った人達ならまだしも、完全に他人。
極めつけは彼が・・・この街のスーパーヒーローであるということ。
そんな事が世間様にバレてしまえば、メディアは大騒ぎ。
バニーに一番迷惑を掛けてしまう羽目になる。
それに今回ばかりはどうしても断らなければならない理由が
数日前より出来てしまった。
遡ること10月の頭の出来事。
「。今年は何も企んでませんよね?」
「企むって、何を?」
久々の2人の時間。
そんな時間の食事をしている時だった。
バニーが食事をする手を止めて、私を見たのだった。
企むだの何だの、と言われて私は首を傾げた。
「その顔つきからすると、どうやら何も企んで居ない様子ですね」
「だから何なのバニー?私が何を企んでるっていうの?」
「10月31日の事です」
「10月31日?バニーの誕生日だよね?」
10月31日はハロウィンそっちのけで、バニーの誕生日が頭の中で優先的にやってきた。
「そうです。それで今年こそはと思ってるんですが」
「うん、何?」
「31日予定を空けといてもらえませんか?今年こそは、2人で食事に出かけましょう」
「え?」
あまりの事で心臓がドクンと跳ね上がった。
2人で食事に出かけよう、だなんて明らかにデートに誘われたも同然だったからだ。
「には驚かされっぱなしで、僕は何一つ君に返してあげていません」
「そんな、バニー・・・いいんだよ。だってバニーの誕生日なんだもん・・・お返しとかいいよ」
「よくありません。それに、いつも良い雰囲気で邪魔ばっかり入るから
今年こそは君と2人っきりで居たいんです。今年こそは・・・君を独り占めしていたい。誰にも邪魔されず」
「バニー」
そんな事を言われてしまえば何も言い返せない。
むしろ、よく恥ずかしいことを平然と言ってのけるから
私としても毎回心臓がいっぱいいっぱいだったりする。
「ですので!今年は企みとかドッキリとかナシで・・・2人で食事に行きませんか?」
「バニーがそういうなら・・・良いよ」
私が笑顔で答えると彼も何だか嬉しそうな表情で返事をしてくれた。
そして、結局31日は私とバニーは
2人っきりでバニーの誕生日を祝うという事を決めたのだった。
そう決めた矢先に、誕生日を祝いたいとなれば・・・何としてでも回避せねばならない。
いや、色んな意味でも回避は絶対必須。
「だ、ダメだよ。う、ウチで誕生日パーティなんて」
「バニーさんに聞いてみてよ〜」
「モノは試しにさぁ〜」
「う、ぅ」
こういう時に限ってカリーナが居ないことを悔やんだ。
(授業時間が足りてないから彼女は只今補習中)
カリーナが居てくれたら「ダメに決まってんでしょ?」って一喝してくれるのに
私にはそういう言葉の押しが足りない。
「よぉーし!そうと決まれば!バニーさんに聞いといてね!お家使わせてくださいって!」
「え?ええ?!エミリー!?」
「私達がバニーさんびっくりさせるの用意しとくから」
「ジェ、ジェーンまで!?」
この時、初めて自分は流されたら
断れない(というか断る隙ができない)性分だというのに気付かされた。
Danger past, God forgotten.
(“苦しい時の神頼み”でも神様は私に力を貸してくれなかった)