「はぁああ!?エミリーとジェーンが家に行きたいぃい!?!」
「カ、カリーナ・・・ッ、声大きいよ」
次の日。
仁王立ちして私を待ち構えたカリーナに捕まり
落ち込んでいる理由を話しなさい、と言われたので
私は素直にこの前の事を話した。
そして、案の定・・・――――――。
「何考えてんのアンタは!?其処はちゃんと断りなさいよ!!
何で断らないのよ!?ていうか、何であの2人のペースに流されてんのよ!?
もう子供じゃないんだからダメなものはダメってはっきり言いなさいよ!!」
「す、すいません」
お説教を食らわされた。
分かりきっていた反応だけれども
いざ言われると、ダメージは大きくて立ち直れないレベルにまでになりそうだ。
私は隣でお説教を浴びせているカリーナに対して
ずっと「すいません」と謝り続けていた。
「昨日。バーナビーがアンタの様子がおかしいって言ってきたのよ」
「え?」
ひと通り説教を終えたカリーナは溜息を零し、私を見た。
そんな彼女の口から出てきた言葉に
罪悪感だけが胸を過る。
「突然が抱きしめてとか言うから驚きましたって・・・そんな事聞いたこっちが驚きよ。
アンタからバーナビーに抱きつくとか、どういう風の吹きまわし?」
「だって、何か・・・エミリーとジェーンの事言いづらくって。
言わなきゃいけないのに・・・バニーの顔が辛そうに・・・なるの、考えたら言えなくって」
31日の事を楽しみにしているバニー。
そんなバニーに誕生日の日の事を言ってしまえば辛そうな顔をしそうだし
ましてや其処で私と彼の仲がこじれてしまうかもしれない、と考えてしまった。
今回ばかりは彼と仲がこじれるのだけは避けたい。
多分、私だけじゃなくバニーもたま同じようなことを思っているに違いない。
「だったらはっきり言ってやりなさいよ」
「ど、どっちに?」
「決まってるじゃない。エミリーとジェーンによ。
アンタの彼氏【バニー】がバーナビーだって知れたら、一大事どころの騒ぎじゃないんだから。
家に上げるなんてそれこそアンタ達の関係が公になること間違いなしなんだから」
「そ、そうだよね」
確かに。
バニーとの関係が公に知れてしまえば、彼に一番に迷惑がかかってしまう。
一緒に住まわせて貰っている以上彼の足を引っ張るわけにも行かないし
ましてや、どういう経緯で今の状況になってしまったのかも・・・下手をしたら調べられてしまう。
「今日は私も居てあげるから・・・ちゃんと2人に断るのよ?」
「カリーナ・・・ありがとう」
そう言って私はカリーナに抱きついた。
彼女は「は、恥ずかしいからやめて!」と恥ずかしそうに私に言った。
今度こそ神様は私に味方をしてくれるようだ。
これでようやく私にも平和な日常が戻ってくる。
31日もバニーと楽しくお喋りをしながら、食事ができる。
心強い味方を得たことで私は有頂天になっていた・・・が。
人生は、決して甘くはなかった。
「で、バニーさんは了承してくれた?」
「お家でパーティさせてくれるの!」
昼休み。
エミリーとジェーンが私に詰め寄る。
私は目を泳がせながらも、背後に居るカリーナをチラッと見た。
視線に気づいたカリーナは首を前にちょこっと動かし
「早く言いなさい」と言わんばかりの態度で居てくれた。
大丈夫。
今日はちゃんとはっきりと断ってくれる人間が身近に居てくれるのだから
何の心配もせずに「ダメなものはダメ」と言うべき環境ができている。
「あ、あのねエミリー、ジェーン・・・実はね」
「ていうか、今更断るとかしないでよ」
「そうよ!もうこっちはいろんな準備ができてるんだから、今更ダメとか言わないでね」
「え?じゅ、準備って?」
断りの言葉を投げかけようとした矢先だった。
段々と頭の中で嫌な予感が駆け巡り始める。
そして、後ろからも何やら完全に振り向いてはダメなオーラが私の体に当てられる。
「もちろん決まってるでしょ!バニーさんのビックリパーティの準備よ!
飾り付けとか、クラッカーとかもう買い揃えちゃったんだから」
「それにケーキだって予約して、後は当日名前だけ入れてもらうようしてるんだからね」
「え・・・えっ」
「今更断ろうとかやめてよ」
「そうそう!こっちはもう準備万端!後はがバニーとの家の様子さえ見せてくれれば
飾り付けはこのエミリーに任せなさいな!バニーさんがびっくりするくらいの飾り付け、しちゃうんだから」
茫然とする私を他所に、エミリーとジェーンは2人で盛り上がり始める。
「全部アンタが最初に断ってなかったのが一番の原因ね」
後ろからカリーナがため息を零しながら私の肩を叩く。
「カ、カリーナァァ〜」
「今更私に泣きついてもどうしようも出来ないわよ。あの2人、やる気満々だし
この際だからアイツに全部事情を話しなさいって。私よりも一緒に住んでるんだから
知恵くらい貸してくれるわよ」
「で、でもぉ」
こんなことを話してしまえば、きっとバニーは落ち込んでしまうに違いない。
せっかく楽しい気分にさせているのだから
そんなことだけは絶対に言えない・・・・言えないけど、言わないと・・・ダブルブッキングしてしまう。
「ちゃんと話しなさい。これ以上アイツに心配されたら
誕生日どころの問題じゃないでしょ?あの兎の事だから絶対に探り入れて、それこそそっから
関係が悪化していくようなもんじゃない。ぶっちゃけ、アイツのグズグズした態度見るこっちの身にもなりなさいよ。
本気で殴りたくなるんだから」
「・・・は、はぃ」
ちゃんと話すべき。
心の中でそう思うものの、何だかやっぱり言いづらくて
バニー本人を目の前にすると口から思うような言葉が出ないのが歯がゆくて仕方がなかった。
次から次へとことが進んでしまい、もう頭がパンクしてしまいそうだ。
As fast as one goes another comes.
(”応援暇あらず“もう私の頭の中のキャパシティが超えそう)