「うぇ!?」
「あ、ビックリしました?」
「バ、バニーッ!?」
僕が突然抱きしめるものだからは驚きの声を上げ
背後にいる僕を見た。
思わずその表情や声に可愛い、と思いつつ
抱きしめる力をほんの少し強めた。
「ちょっ、な、何しに来たの!?」
「何って、差し入れです。ホラ、やっぱりお茶菓子は必要ですから」
なんて言っては見たけれど
本当はが連れてきた友達の存在が気になって仕方がなかった。
まぁ僕の予想は大いに外れたものの
同性だったからひと安心したところだ。
「わ、私いいよって言ったじゃん」
「ですが、やはりこういうのはしておいた方がいいと思いまして」
「意味分かんないよ!」
「お茶の準備なら僕も手伝いましょうか?少しなら時間ありますし」
「い、いいよ・・・自分でする」
そう言ってはお茶の準備を再び始める。
いつもとは違う素っ気ないの態度に違和感を感じた。
「どうかしましたか?」
「な、何でもない」
「何かあったんなら僕に言ってもいいんですよ?」
「何でもないって言ってるじゃん。き、気にしないで」
震える声と、震える手。
そんな仕草をされてしまっては引くに引けない。
僕は買ってきたケーキをテーブルの上に置き、再びを見た。
「、僕は」
「何でもないって言ってるでしょ!!あっち行ってよ!!」
振り返ったの表情に僕は驚いた。
目に涙を浮かばせて、今にも泣きそうな表情。
一瞬また彼女を何かしら傷つけてしまったのではないだろうかと思ってしまったが
どうやらそのようではなさそうだ。
僕はそっと彼女を抱きしめた。
「、泣かないで下さい」
「泣いて、泣いてないもん」
「今にも泣きそうな顔をしてる人が言うセリフじゃないですよ」
「じゃあバニーが泣かしたもん」
「責任転嫁されても困ります」
「じゃあ、じゃあ・・・」
「」
体を離し、頬に触れ彼女の名前を呼ぶ。
肌に感じるぬくもりには泣きそうな顔を上げた。
「どうしたんです?この前から様子がおかしいですよ。今日はだって
突然お友達を呼ぶって言い出す始末ですし・・・君に何かあったとしか思えません」
「だって・・・ぁ、ぁの・・・っ」
追い詰めているつもりはないのだが、的にはどうやら追い詰められているらしい。
必死になって彼女は何かを伝えようとしているのだろうけれど
多分、僕を前にして言葉がうまくできないのだろう。
「」
「バニー・・・んぅ」
泣きそうながあまりにも愛おしく感じてしまい
僕は彼女の唇に自分のを重ねた。
数秒・・・軽く触れ合って、唇から離れ涙が零れそうな瞼にキスを落とした。
「、何があった」
「遅いよー」
「早くパーティの・・・うわっ、お、お取り込み中っ!?」
「ちょ、ちょっとエミリー、ジェーンッ」
言葉を投げかけようとした途端、どうやらリビングに居た彼女の友達が
待ちくたびれてキッチンにやって来た模様。
幸い僕は背を向けていたから助かった。
するとやって来た2人を退散させるかのようにブルーローズさんが慌ててやってきた。
『ちょ、な、何すんのよカリーナ』
『押さないでって』
『いいからもう帰るわよ』
『だってまだパーティの計画がぁ』
『早く行くよ』
2人をこの場から追い出すみたいにブルーローズさん達が玄関へと向かう声が聞こえる。
「」
「ぇ・・・カ、カリーナ」
すると、ブルーローズさんだけがキッチンに戻ってきた。
僕も振り返ると、顔を少しだけ覗かせた状態だった。
「もうエミリーとジェーン連れて帰るから。アンタ、泣かせんじゃないわよ」
そう言い残して、ブルーローズさんは友達を連れて此処を後にした。
残ったのはもちろん部屋の主である僕と、其処に一緒に住まわせている彼女だけ。
ようやく誰もいなくなった部屋でと2人っきり。
「さて」
「え?」
「話してもらいますよ、何を隠しているのか。あと、パーティって何のことですか?」
「あ、あぅ」
部外者も居なくなった後、僕はからようやく
隠していることを洗いざらい話してもらうのだった。
「成る程。それのパーティだったんですね」
「ご、ごめんなさい・・・今まで黙ってて」
椅子に腰掛けた僕の目の前にが正座をして申し訳なさそうにワケを話し始めた。
どうやら僕をびっくりさせる誕生日パーティを企画していたらしい。
「それならそうと早く言えばよかったんですよ?」
「だっ、だってバニーと約束した次の日に言われたし・・・それに」
「それに?」
「バニーの嬉しそうな顔を見たら、い、言い出せなくて」
「」
僕の表情を曇らせてしまうのかもしれない、とは考えたに違いない。
彼女の性格だ。
自分のことよりも他人を優先する。
色々考えて、彼女自身「友達とパーティ」するか「僕と食事をしに行くか」という
間(はざま)で揺れていたに違いない。
「でも、もう心配いらないと思います」
「え?何で?」
「だって君には心強い親友がいるじゃないですか」
「え?」
すると、の携帯が着信を知らせるかのように鳴り響く。
僕が手で出るよう促すと、彼女は急いでその着信に出た。
「もしもし・・・カリーナ?」
電話の相手はブルーローズさん。
内容を聞き入れているのか、は黙りこみながらも頷く。
「え?・・・あ、で、でも・・・い、いいの?・・・うん・・・ぅん、ありがとう。
うぅん、いいよ大丈夫。うん、分かった・・・じゃあまた今度ね。うん・・・うん」
ひと通り会話を終え、は通話を切断した。
「彼女はなんと?」
「友達には明日、バニーと食事に行くのちゃんと言っておいたからって。
今度から前もって言いなさいって怒られたけど」
「言ったでしょう。君には心強い親友がいる、と」
「バニー・・・うん!」
泣いたカラスがもう笑った、なんて言葉だけれど
に泣いたり落ち込んだりされるよりか、僕は笑っていた方が一番好きだ。
何にせよ、これで明日は曇り顔一つさせず素敵な時間を過ごせそうだ。
Failure is the hightroad to success.
(”失敗は成功のもと“失敗しても必ず成功は訪れる)