バニーが出動に出た後。
子供達とハロウィンの準備を半分終え
色々な道具をライアンさんと一緒に別の部屋に運び終わり
子供達のところに戻ってる最中だった。
廊下で数人の子供達がヒソヒソと何か話をしている。
「どうしたの?」
「お姉ちゃん」
「ねぇねぇ31日ってバーナビー、お誕生日だよね?」
「え?」
子供達の言葉に一瞬驚くも、膝を曲げて子供の目線に合わせる。
「そうよ。31日はバニーの誕生日だよ。それがどうかしたの?」
「うん。あのね、バーナビーのお誕生日パーティをしたいって皆で話してるんだ」
「バニーの誕生日パーティを?」
「へぇ〜、ジュニア君って31日が誕生日なわけなんだ。
それで・・・なーに計画してんの?」
後ろからライアンさんの楽しそうな声が聞こえ、彼は子供達に問いかけた。
彼の問いかけに子供達はヒソヒソと話し、私を見る。
「ハロウィンパーティをやるフリして、バーナビーをびっくりさせたいんだ!」
「あら、それは面白そうね」
「おーやるなら面白いほうがいいからな。いいんじゃね?ジュニア君、ビックリするぜ」
私やライアンさんの言葉に子供達は晴れやかな表情を見せた。
しかし、その晴れた表情もすぐさま曇ってしまう。
一瞬の変化に私は首を傾げた。
「どうしたの?皆の考えているびっくりパーティならバニーは喜んでくれるわ、きっと」
「そうじゃないんだ」
「え?」
「バーナビーにあげる誕生日プレゼント、僕らじゃ買えなくて」
「あ・・・っ」
子供達の言葉に私はハッとした。
この子達にはプレゼントを買うだけのお金は持ち合わせていない。
施設で養ってもらっているし、おもちゃや勉強道具といったモノは全てバニーのお金で賄(まかな)われている。
ハロウィンパーティの道具も、私のお金で買ったものだから
パーティを企画できても、道具やプレゼントを買うまでのお金は無いも同然。
面倒を見ているシスター達も金銭的なものは微々たる物だろう。
子供達が不安な表情を浮かべても無理は無い。
「でも!バーナビーにはいつもおもちゃとか色々買ってもらってるし」
「パーティだけじゃ喜んでもらえるかも分からないから」
「皆・・・そうだったの」
プレゼントをしたいのに出来ないもどかしさに
子供達は不安でたまらないだろう。
だったら・・・・・・―――――――。
「よし!じゃあ、私が何とかしてあげる!」
「え?」
「ホ、ホント?!」
私が子供達のために何かしてあげるしかないと考えた。
「うん。バニーをびっくりさせたいもんね。プレゼントのお金の事は私に任せて」
「ホント、お姉ちゃん!?」
「もちろんよ。その代わりバニーやシスター達には内緒よ。びっくりパーティだもんね」
「うん!皆の秘密だね!」
「じゃあ他の子にも言わなくちゃ!」
そう言って子供達は楽しそうな表情をしながら
他の子供達にもこの事を知らせるべく、何処かへと走っていった。
曲げていた膝を立て、ため息を零す。
「で、いいのかよ嬢ちゃん。んな事言って」
「正直、任せてと言ったのはいいんですけど・・・ハロウィンの準備でお金殆ど使っちゃって」
「やっぱりな」
後先考えずに発言した自分に思わずため息が出たのだ。
ハロウィンの準備費用で私の手持ちのお金はほぼ使い果たしてしまい
お財布の中は非常に乏しい状態になっていた。
「学費以外のお金は殆どバニーから出してもらってるし」
「女一人養う金を持ち合わせてるとか、流石だねぇジュニア君」
「さすがに生活費以外のお金をバニーからもらうわけにはいかないし」
私が彼から貰っているのはあくまで「生活費」と呼ばれる必要経費のみ。
彼が居ない間のマンションの留守は私が任されているから
「これだけあれば十分」という程のお金を1ヶ月分、いつも貰っている。
彼から貰うお金で貯金もしているが、流石に貯めているお金に手を出すつもりもなければ
多分それだけでは満足の行くようなプレゼントは買えないだろう。
本当に自分の後先考えない発言を治したいものだ。
「生活費以外の金作るってなれば、アレだろ?バイトするしかなくね?」
「アルバイトか・・・・。そっか、アルバイト!そうですよライアンさん!アルバイトですね!!」
「お、おい。なんだよ急に思い立ったような声出して」
ライアンさんの言葉にふと、頭を「ある人物」の存在が頭をよぎった。
「あの、ライアンさん。今からちょっと連れて行って欲しいところがあるんですけど」
「は?何?今からバイト探しでもすんのかよ?」
「というより、雇い主さんの所にです」
私が笑顔でそう言うと、ライアンさんは一瞬驚いた表情をするも
すぐさま笑みを浮かべ「いいぜ。何処に行きゃいいんだ?」と何やら
楽しそうな声を上げるのだった。
少しでも子供達の役に立ちたくて。
そして、31日にバニーのびっくりした表情が見たくて。
私は久しぶりにアルバイトを始めようとしていた。
Make hay while the sun shines.
(”好機逸らすべからず“危うく逃す寸前で思い出した事があった)