それは、彼女の発見から全て明るみになった。
「アラ?・・・・・・ねぇ、ちょっとコレ」
「ん〜?どうしたのブルーローズ?」
「なになに?何見てんの?」
トレーニングルームのソファーに休憩中のブルーローズさんが
一冊の雑誌を広げて見ていると、何かに気づいたのか
近くに居たファイアーエンブレムさんやドラゴンキッドを呼び寄せた。
まじまじと三人が雑誌を見て話を始める。
「なーにやってんだ、あいつら?」
「さぁ?」
トレーニングをそっちのけで雑誌に見入っている三人の姿に
虎徹さんが不思議そうな声で僕に訊ねる。しかし、僕も外野に居るので
話をしている三人の様子がいまいち分からない。
僕と虎徹さんは顔を合わせ、雑誌を見ている三人に近づく。
「おい、トレーニングそっちのけで何見てんだ?」
「何か面白い記事でも載ってたんですか?」
「あっ、ダメダメダメ!!」
「コ、コレ見ちゃダメ!!」
「は?」
「どういう意味ですか?」
雑誌を見ようとした瞬間。
ブルーローズさんが雑誌を閉じて、後退り。
さらにドラゴンキッドが彼女の前に出て「見るな」と言う。
あまりにも理解不能すぎる行動に僕と虎徹さんは首を傾げた。
「乙女の雑誌よ。殿方が見たら乙女の秘密バレちゃうでしょ?」
「殿方って、お前は違うのかよ」
「失礼ね!アタシはれっきとした女子よ!!文句ある?」
「いや、無いです」
そして拍車をかけるかのように、ファイアーエンブレムさんがもう一枚言葉を畳み掛けてきた。
あまりの威圧感(というかただ虎徹さんが怒らせただけ)に
コレ以上の詮索をやめ、大人しくトレーニングにと体を器具へと向かわせた。
『バーナビーが見たら絶対ヤバイわね』
『う、うん。絶対にヤバイ』
『ヤバイどころか、チョ〜マズイ事になるわよ』
小声だけれど僕の名前が聞こえ、振り返り三人を見る。
「僕が何ですか?」
「え?!あ、いや、そ、その・・・ッ」
「な、何でもないよ!!」
「そ、そうよハンサム!気にしすぎよ」
「何か隠してるのが丸わかりです、どうやらその雑誌が根源らしいですね。貸してください」
手を差し出しながら、雑誌を見せるよう促す。
しかし、雑誌を持っていたブルーローズさんはそれを後ろに隠す。
「ダ、ダメ!絶対ダメ!!」
「いいですから、それをこっちに渡してください」
「ダメなもんはダメなんだから!!」
「はぁ〜・・・・・仕方ありませんね。虎徹さん、取り上げてください」
「あいよ」
「え?・・・きゃっ!?」
こういう場所で僕と虎徹さんのコンビプレーが冴え渡った。
僕が前方で詰め寄り、後方から虎徹さんが忍び寄る。
雑誌の譲渡を頑なに拒んでいるし、前方から攻めれば確実に後方に隙が生じる。
それに三人の意識は全部僕にと行っているから、虎徹さんは手薄状態。
こうなれば攻略するには早いと睨み、詰め寄ると同時に虎徹さんが
ブルーローズさんの背後に周り、合図と同時に雑誌を取り上げたのだった。
「ちょっ、ちょっと!!卑怯!!ていうか返してってば!!」
「いいじゃねぇか、減るもんじゃなしに」
「僕に見せたがらない辺り、余程の事がこの雑誌に載ってたんですよ。
まぁこういう雑誌にはあまり興味がありませんし、大したことは載って」
ページをある程度捲って、手が止まった。
「バニー?おい、バニー、どうした?何か載ってたのか?」
「・・・んで」
「あ?何処見てんだ?」
虎徹さんが僕が止めているページを覗く。
「化粧品メーカーの宣伝ページだろ、コレ」
「何で・・・・・がまた」
「は???何処??」
「見て分からないんですか!?この女の子、なんですよ!!」
「えぇええ!?」
僕の声に虎徹さんは大声を上げ驚いていた。
この人はワザとな声を上げているわけじゃない。多分本当に分からなかったのだろう。
しかし、僕は分かった。
何せ彼女のこの姿を、僕は時々眺めているから。
分からないはずはない。
違う、僕には分かった。
今止めているページに写る女の子がだということに。
「・・・な、何で・・・また、こんな」
「お、おいバニー!コレ、の隣に居るのって」
「え?・・・・・ライアン」
天使のような微笑みを見せている彼女の隣に立っていたのは、ライアンだった。
しかも、彼の顔を見る限り至極嬉しそうに見える。
モデルという仕事上、笑顔を振りまくのは当然だけれど
彼の表情を見るとそういう風にも思えなかった。
彼はに好意を持っている。
隣に立てて、満足そうな笑みを浮かべるのは当然だ。
ページを何枚と捲っても、2人が楽しそうにしている絵ばかり。
笑いあいながら指を絡め。
離さないと言わんばかりにキツく彼女を抱きしめる彼。
挙句の果てには――――――――。
「!!」
「お、お、おいおい!!」
「あーあ、見つかった」
「あらヤダ、お嬢とライアン」
「キ、キスしてるぅ?!」
商品を間に挟んで、2人がまるで口づけを交わしているかのようなページを見つけてしまった。
いや、コレはもう明らかにキスをしているようにしか見えない。
そうでなきゃこんな距離は無理。
実際にとキスをしている僕からすれば、それくらいの距離感なんてすぐに分かる。
思わず雑誌を持つ手が段々と強まり、紙がグシャグシャになっていく。
怒りと嫉妬だけが、沸々と沸き上がってきた。
「お、おい、バニー」
「ちょっと用事を思い出したので、出てきます」
「おっ、おい!!」
「バーナビー!!」
僕は虎徹さんの胸に無理やり持っていた雑誌を押し付け
その場から早足で立ち去る。
後ろから虎徹さんやブルーローズさん達の声が聞こえてきたが
今の僕にはその声を耳に入れることすら出来ない。
むしろ、醜い感情だけが渦巻いていて
自分の体に言うことを聞かせることすらせず、ある場所へと向かった。
「やっぱりね。来ると思ったわ」
「予想はしてたんですね、アニエスさん」
OCBのアニエスさんのデスク。
僕が現れるのを待っていたのか、アニエスさんは余裕の表情で僕を出迎えた。
一方の僕はただただ、醜くどす黒い気持ちだけが胸の中で渦巻いているというのに。
「それで?感想は?」
「酷い裏切りです、こんなの」
「裏切り?何のこと?」
「の事。もう二度と巻き込まないって、あの時一回きりだって、そう言ったじゃないですか!」
が僕との約束を破るはずない。
僕が「二度としないでくれ」と言った時、彼女は頷いてくれた。
それに、彼女は言った。
華やかな世界に居なくても、僕の側に居る、僕の帰る場所に居る。
は、僕に言ってくれたはずだった。
だからその約束を違えるはずはない。
だったら、理由なんて見えている。
「を無理やり引きずりだしたんですね」
「引きずりだした?まぁ、確かに最初はそういう予定だったわ。でも、その予定が狂ったのよ」
「は?」
アニエスさんの言葉で僕の心臓が痛みを伴いながら、鼓動する。
「が自分から出てきたのよ。モデルをやらせてください、ってね」
「う、嘘だ」
「嘘じゃないわよ」
「そんな嘘つかないでください!!がそんな事・・・ッ」
言うはずもないと思っていた。
彼女自ら僕との約束を違えるような真似をしないと、思っていたはずなのに。
あまりのことで僕の気持ちは段々と絶望の淵へと向かい始める。
「別にいいじゃない。あの子がやるって言ったんだから、好きにやらせたっていいでしょ。
其処までアンタが面倒見ることないのよ?」
「だからって・・・ッ」
「何?そんなに気に食わないの?
がモデルをしたから?自分に断りもなくモデルをしたから?それとも――――の相手がライアンだったから?」
「・・・・・ッ!?」
アニエスさんの言葉に僕は怯んだ。
間違い、なんて言えない。
むしろ当たっている。
特に彼女の相手がライアンだったというのが一番気に食わなかった。
「あんなの、僕に対する嫌がらせとしか思えません」
「は?」
「仕事でも、キスしていい道理なんてないんです!!貴女もあの場に居たなら、何で、何で止めなかったんですか!!
は僕の・・・僕の恋人なんですよ!!どうして彼の行動を許したんですか!!」
あの絵を見た時、現実というものを受け入れたくなかった。
自分の目に映ったそれを受け入れたくなかった。
が、僕以外の誰かと口づけを交わすところなんて。
「別に許したわけじゃないわよ、アレはただ」
「もういいです。貴女の言葉にはうんざりです」
「ちょっとバーナビー、人の話を」
「貴女も貴女なら、ライアンの接近を拒まなかったも同罪です。
行くところがありますから、失礼します」
「バーナビー、待ちなさい!!」
そう言って足早に其処を去り、外に出た。
すると、街頭の看板の張替えを僕は目にする。
古いものから、新しいものへと切り替えられ
今まで其処には僕の写った看板が貼られていたのに、新しく張り替えられていたのは
優しく微笑むと、その傍ら、彼女に身を寄せるライアンのモノだった。
待ちゆく人は足を止め、羨ましがる。
僕はただ胸が痛いほど、締め付けられていく。
「・・・・・どうして、ですか」
零れた言葉がそれだった。
どうして、僕じゃない誰かの隣で微笑んでいるのだろうか?
どうして、僕じゃない誰かの隣に身を寄せているのだろうか?
どうして、僕じゃない誰かと口づけを交わしたのだろうか?
あの体が、あの唇が誰かに触れられたと知り
僕の愛はこんなにも容易く手放されてしまったのかと思ったのだった。
You cannot see the wood for the trees.
(”木を見て森を見ず“この時の僕にはまだ全体図が見えていなかった)楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
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