「成る程ね。だからモデルの仕事引き受けたってワケか」



「う、うん」






バニーから拒絶された私は正直帰る場所がなかった。

途方にくれた私が選んだ場所は、子供達のいる施設とアニエスさんの家。


そして今現在居るカリーナの家だった。



今日はアニエスさんの家に行くはずだったのだが
仕事が遅くなるという連絡が入り、施設に泊まるつもりだったのだが――――。








「ごめんねカリーナ。今日、泊めてもらって」



「いいわよ別に。行くトコないんでしょ」








アニエスさんが事前にカリーナに連絡を入れて、私は彼女の家にとやって来た。


行くトコがない、と言われたら私はただ、ただ苦笑するしかない。
反論した所でそれすら意味を成さないのだから。








「しかし・・・こんな写真見たら、バーナビーなら怒るわね」


「も、もう、それ見なくていいよ」







カリーナはベッドに座りながらモデルの私が
写っているページをペラペラと捲り、バニーが怒ってしまうほどの写真を眺める。

あまり見られるのも恥ずかしい私は、彼女に見ないでほしいと言い放った。


その一枚が原因で傷に塩を塗られているのと変わらないからだ。







「実際の所、コレでキスしてないってのが不思議よね。本当にしてないの?」


「し、してない!本当にしてません!バニー以外の人と、キス、したくないもん」





恥ずかしくなり、私はクッションを抱きしめながら彼女に言う。



好きな人がいるのに、好きな人じゃない人とキスはしたくない。

別にライアンさんが嫌いという訳ではない。
ただ、私の中でライアンさんという人はまるで「お兄ちゃん」みたいな人だった。

好きだけど、バニーに感じる「好き」とは別モノ、ということになる。







「それ、本人にはっきり言ってやれば良かったのに・・・って、アンタにそういう度胸はないか」



「な、ないもん。言えるわけないもん、恥ずかしくて」



「そうよね」







私の答えにカリーナはあっさりと返した。


私には「バニー以外の人とキスはしなくない」なんて、彼に言う度胸はどこにもない。
ましてやそんな事恥ずかしくて言えるわけがない。


言ってしまえばそれこそ、憤死してしまいそうになる。








「ていうか、31日どうすんの?子供達はともかく、アンタはどうすんの?」



「そうだね。どうしようかな」







31日。

それはバニーの誕生日の事を指していた。


子供達にはプレゼントを買うお金を分け与えたし、私の役目は終ったも同然。
拒絶された今となっては、当日施設に顔を出すのも心苦しい。

手持ち無沙汰になり、ため息が零れる。







「もし、もしよ!31日、暇になったらご飯食べに行ってもいいけど」



「え?」





するとカリーナの口からそんな言葉が零れ出てきた。
その後に続いてる言葉が「私の予定が合えば」とか「まぁ別に無理しなくてもいい」とか。

私に気を遣って言ってくれてるのが凄く嬉しかった。





「カリーナ」



「な、何よ」



「ありがとう」



「別に。感謝される覚えないんだけど」




そんな風にぶっきらぼうに答えた親友に私は笑みを零したのだった。






次の日。

施設に向かい相変わらず子供達の面倒を見ていると
シスターから「話があるから」と呼び出された。







「はい、何か?」



「31日ハロウィンパーティをするでしょ。それでお料理を作ってもらおうと思って」



「え?私が作ってもいいんですか?」



「子供達は貴女の作るお料理が大好きですし、私達が作ると味気がないですからね。
無理を承知ではあるんですが」







話がある、と言われて私は何かやらかしたのではと思い
ヒヤヒヤしていたが、どうやら31日のハロウィンパーティの料理についての事だったらしい。


子供達も私の作る料理は「美味しい」と言って食べてくれるし
シスターの頼みとあっては断る訳にはいかない。







「私で良ければ」



「あら、そう!良かった。子供達も喜ぶわ」





私の返答にシスターは手を合わせて喜んでいた。
「やることがあるので」と言って私はシスターの部屋を出て
頭の中でハロウィンパーティの献立を考えていたら―――目の前に小さな人影。








「あら、イライジャ君」







イライジャ君が立っていた。

しかもその目は何だかギラギラとしていて、まるで威嚇されているかのように思えた。
あまりにもその目線に私はおどおどしながら声をかける。







「ど、どうしたの?」



お姉ちゃんは僕が守るから!」



「え?」








イライジャ君の突然の言葉に驚く私。








お姉ちゃんは絶対に僕が守るから!それだけ!!」




「イ、イライジャ君?!」






何故か彼はそれだけを伝えて何処かへと走り去っていった。
守る、と言われても一体何からだろうか?と尋ねたくなってしまった。


子供の考えていることはよく分からないというが、まさにこの事だろう。



とにかく私はハロウィンパーティの献立を考えなければと思い
再び歩みを進めるのだった。




A near neighbor is better than a distant cousin.
(”遠い親戚より近くの他人“身近な人達が今は私にとっての救いだった) inserted by FC2 system

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