「指輪って何?」
が出て行った後、彼女を追いかけて
弁明の機会を貰おうとしていたら、すごい形相でブルーローズさんに迫られた。
目つきからして相当怒っている。
いや、先ほどのとの口喧嘩からして
未だに怒りが治まっていないことが伺えた。
「だから・・・その、これは・・・」
「バニー・・・話ちまえよ。こうなったのもお前が原因みたいなんだしよぉ」
「虎徹さん」
後ろから虎徹さんにそう言われ、僕はため息を零し
ポケットに入れていた指輪の小箱を取り出し
皆の前にと出した。
「アラ?ハンサム、これって」
「に渡すための・・・婚約指輪です。
僕の誕生日の日に、渡そうかと思ってて・・・そのびっくりさせたくて」
「つまり、アンタは・・・その婚約指輪がバレると思って私にあげるとか、何とか言い訳したの?」
「その・・・咄嗟に出た言葉で・・・もう少し言葉を選ぶべきかと」
「アンタ・・・何てことしてくれたのよ!!に嫌われちゃったじゃない!!」
「お、おい、ブルーローズ落ち着けって」
「これが落ち着けって態度に見えるの!?」
怒り狂うブルーローズさんを虎徹さんが宥めようとするも
彼女の怒りは留まるところを知らず、僕にと噛み付いてくる。
反論してどうこうなるわけではない。
ちゃんと言葉をはっきりさせなかった僕に全ての原因があるのだ。
彼女が怒って当然。
「いくら驚かせようとはいえ、何で私を引きずり出すのよ。おかしいでしょ!」
「すいません」
「大体、何でその場でドラマの小道具なんです、とか言わなかったのよ。
アンタだったらそれくらい簡単に言えるでしょうが」
「あまりに、その、突然だったし・・・箱や中身を見られて、焦ってしまって」
「だからって私を出さなくても・・・・・・あー、もう言ってもキリがない」
するとブルーローズさんは踵を返し足を進めた。
「お、おいブルーローズ!」
「ホント・・・アンタ達二人のことでこっちまでいいとばっちりよ。
これで私とが仲直りできなかったら、全部アンタのせいだからね」
そう言葉を言い残し、彼女は其処を去っていった。
そしてその場に残った誰もがため息を零し僕を見る。
あまりに突き刺さってくるその視線に、僕は行き場を失う。
「流石に今回は、ハンサムに分が悪いわね。アタシ達もフォローの仕様がないわ」
「分かってます。自分の言葉の選択を誤ったのが全ての原因ですから」
「じゃあ早く謝るなりなんなりしなさいよ。お嬢、あんなに泣いて怒ってたじゃない」
「そうなんですけど・・・」
ファイアーエンブレムさんに言われ言葉が止まった。
確かに言われたとおり謝るなり何なりをして
を宥めたほうが無難とも思える。
しかし、僕の体は彼女を追いかけることに躊躇いを持ってしまった。
「大嫌い」と言われたその一言により、体が上手いこと動いてくれないのだ。
僕が黙りこんでいると
ファイアーエンブレムさんがため息を零し肩を叩いた。
「おそらく、お嬢の行き場が無い状態にあると思うから
しばらくアタシが預かるわ」
「ファイアーエンブレムさん」
「ちゃんとワケを話す、というか・・・嘘でも
彼女を納得させる言葉が見つかったら言ってちょうだい。いくらでも手助けするわ」
「・・・・・・ありがとう、ございます」
そう言ってかの人は部屋を出て行った。
おそらくに連絡を入れるなりしに行ったのだろう。
僕は一呼吸置いて、その場に居る虎徹さん達に言葉を投げた。
「すいません、皆さん。お騒がせして」
「大丈夫かバニー」
「何とも言いにくいですが・・・出来る限りの事はやります。
指輪の事も、彼女に何とか言って納得してもらうよう・・・しばらく考えます」
「あんまり、無理はすんなよ」
そう言い残し虎徹さん達は休憩室を後にした。
その場に残ったのは僕一人。
ソファーに座り込み、深いため息を零し、項垂れた。
どうしてあの時ちゃんと言ってあげれなかったのだろうと、後悔するばかり。
そうすればとブルーローズさんが喧嘩するにまで
発展することもなかっただろうし、「大嫌い」という言葉を投げられる事もなかった。
全ての原因は自分にある。
当然の結果、といえばそうなるだろう。
何を言えば納得してくれるだろうか?
何と言えば彼女はまた笑顔を取り戻してくれるだろうか?
考えれば考える程思いが空回り、いい言葉なんて頭の中から見つかりはしなかった。
考えても仕方がない、と思い僕は再び施設に戻る。
部屋に入ろうとすると
聞き覚えのある声。ドアの隙間から中を覗くと――――。
『見てみてお姉ちゃん!可愛いでしょ!』
『あら?首飾り?綺麗ね』
『お姉ちゃん!この王冠格好良い?』
『うん、格好良いよ』
が子供達と仲良く戯れていた。
先程まで作っていた首飾りや王冠等と
誇らしげににと見せていた。
ふと、よく彼女を見ると未だ目が赤くなっていて
泣いた後が目で分かるほどだった。
『お姉ちゃん。お目目赤いね、どうしたの?』
『え?』
すると子供の一人がの目が赤い事を指摘した。
そんな言葉には焦るも、ニッコリと微笑み頭を撫でてやる。
『目を掻きすぎちゃったの』
『ほんと?』
『ええ。ちょっと痒くて掻きすぎちゃった』
明るく答えるの姿に僕は胸を締め付けられた。
本当は悲しくて辛くて泣いた跡だというのに
彼女はそれを悟られること無く、子供にと言った。
そんな彼女の姿に僕自身胸が締め付けられて、何も言い出せない。
「バーナビーさん」
遠くからシスターの声が聞こえた。
僕はすぐさま部屋から早足で離れる。
「中に入られないのですか?さん、いらっしゃってますよ」
「いえ、あの・・・仕事があるんで、失礼します」
そう言って施設を離れた。
今彼女に何て言葉を掛ければいいんだ。何と言って彼女を納得させればいいんだ。
「大嫌い」と言われたその言葉が尾を引き
僕の行動を鈍らせていった。
Never rode, never fell.
(”雉も鳴かずば撃たれまい“余計な一言で僕はとんだ災難に遭ってしまった)