「バーナビー、お誕生日おめでとう!」
クラッカーの盛大な音に驚きながらも
子供達が一斉に僕に祝福の言葉を投げかけてくれた。
一人ひとりがプレゼントを渡してくれて
僕も一人ひとりの頭を撫でたりとしていた。
たくさんのプレゼントを貰うも、周りを見渡しても
の姿だけが何処にもなかった。
「バーナビー、お姉ちゃんは?」
「せっかく王冠とか首飾り作ったのに」
「みんな」
子供達の声に僕はシスターを見る。
するとシスターも首を横に振り、彼女が来ていない事を表した。
無理もないだろう。
あれだけ酷いことを彼女が僕に言ってしまったし
僕も僕で彼女に嘘をついてしまったのだ。
お互い顔を合わせるのだけでもツラいに決まっている。
折角機会を貰い、渡せるチャンスとばかり思っていたのに
本当に自分の事になると上手いこと回らない事がこの時痛感した。
すると、大きな足音が此方に近づいてくるのが聞こえてきた。
「ほら、早くお姉ちゃん」
「ちょっ、ちょっとイライジャ君・・・そんなに引っ張っちゃ・・・ッ」
部屋にやってきたのはイライジャ君と、彼の手に引かれた。
二人の登場に誰もが驚きの声を上げる。
「外に居たから・・・連れてきた」
「わ、私はただ・・・っ」
の登場で子供達が一斉に彼女にと近寄る。
そんな風景に気を取られていると、傍らにやってきたイライジャ君。
「早くしなよ」
「え?」
「何のために準備したと思ってるんだよ」
「イライジャ君」
すると子供の一人が僕に気付いて「バーナビーこっち来て」と誘う。
その手に引かれ、廊下にと出ると子供数人がいつの間にか僕の前に居た。
「バーナビー、頑張って!」
「はいこれ!勇気が出る王冠!作ったんだよ」
「お姉ちゃん、喜んでくれるといいね」
「みんな・・・何から何までありがとうございます」
そう言って部屋の中を見ると
子供数人がを取り囲み、手作りの首飾りやらをあげていた。
は嬉しそうに「ありがとう」と言って声をかけていた。
僕はポケットに入れていた指輪の箱を取り出し、再び中にと入る。
入ってきた僕をが驚いた顔で見て
突然慌てふためく。
「あっ、あの、その・・・本当はその、来る予定なかったんだけど・・・バニーの誕生日だし。
顔くらい見ようかなって思ってて・・・そしたら、イライジャ君が手を掴んで連れてくるから」
「」
「ご、ごめんね。せっかくのバニーの誕生日に、何か私が来ちゃって水を差すようなこと」
「。僕の話を聞いてください」
「え?・・・え?バニー、なんで跪いてるの?」
僕は慌てふためくの前で跪き、彼女を見上げた。
あまりに突然のことで、更にが困惑した表情を見せる。
久々に見る彼女の表情。
きっと、これを見せたら彼女はもっと困惑するに違いない。
だけれどもう僕は決めていたんだ。
「、受け取ってください」
「え?・・・あっ、それ・・・指輪」
「これは、誰のものでもありません。君に捧げるために準備したものです」
「わ、私のために」
を、僕の将来の花嫁として迎える事を。
「嘘を付いていたことは謝ります。君を驚かせたかったんです」
「バニー」
「だけど、この指輪は君に、渡すためにずっと前から用意してたものです。
誰のものでもありません。だけのものです。
いつ渡そうか迷ってて・・・皆さんに手伝ってもらって、僕の誕生日に君を驚かせようって提案してもらって」
が辺りを見渡すと、皆笑顔で頷いた。
そして再び彼女の目が僕の前にとやってくる。
僕は真剣な表情で指輪を差し出したまま、彼女を見た。
「受け取ってください。そして将来、僕と結婚してください。この指輪はそのためのものです」
「バニー」
「僕は君を傷つけてばかりで、泣かせてばかりです。でも、僕は君を誰よりも愛しています。
この気持ちは誰にも負けません」
嘘をついて「大嫌い」とまで言われた。
だから跳ね返される覚悟だった。
本当はもっと早くに言うべきことだったのに、結局踏ん切りが付かないまま
この日を迎えてしまい、周りに後押しされながら指輪を渡すことになった。
全部一人ですることだったのに、本当に情けない。
から返ってくる言葉が怖くなり始め、手が震える。
すると震える僕の手をが優しく包み込んでくれた。
目の前に見える、天使のような微笑み。
その目から流れる一筋の涙。
「こんな綺麗な指輪・・・もらってもいいの?」
「え?」
「あんなに酷い事言ったのに、私なんかでいいの?」
「」
「私もバニーを困らせてばっかりだし、そんな私でも・・・いいの?」
「君だから・・・君だからいいんですよ。もう一度言います。受け取ってください、これは君のための指輪です」
そう言うとは指輪の箱を受け取り涙をたくさん流し
僕に「ありがとう」と言葉を投げてくれた。
その瞬間、僕は嬉しくなり彼女を力強く抱きしめた。
一斉に沸き起こる歓喜の声と拍手。
子供達が寄ってきて何度も僕達二人に「おめでとう」と言葉をくれる。
僕とは互いに驚きながらも
身を寄せ合い笑いあった。
ふと、手に持たれた指輪の箱。それを取り、中の指輪を抜き取った。
箱をポケットの中にと入れ、の指に嵌める。
「愛してます」
「私もだよバニー」
「きっと一番嬉しい誕生日を迎えれたかもしれません。ありがとう」
「うん。お誕生日おめでとう、バニー。私も、ありがとう」
祝福に満ちた誕生日。
ようやく渡すことが出来た誓いの指輪。
自分の事になると上手くいかないことが多いけれど
何とか上手くいく方法を歳を重ねた分、考えていくことにしよう。
ひとまず、目の前の幸せを噛み締めながら。
Laugh and grow fat.
(”笑う門には福来る“苦しい時も、これから先は彼女となら乗り越えられる)