「りんごを貰ってきたから剥いてみた」
「嫌がらせですか?」
目の前のお皿の上。
綺麗に剥かれ、切られたりんご。
しかし、そのりんごのしていた形にバーナビーはを見た。
「嫌がらせじゃないよ」
「完全に嫌がらせでしょうこれは。何でりんごでウサギなんですか?」
「バニーだから。色もバニーが着てるヒーロースーツの色と似てるよね!」
「配色若干異なってます。というか、何でもかんでもウサギと繋げないでください」
「いいじゃん。りんごでウサギさんは定番だよバニー!ハイ食べて!」
「結構です」
そう言ってバーナビーは立ち上がった。完全に機嫌を損ねたらしい行動である。
「え〜食べてよ〜」
「いりません。食べ物で遊んじゃいけないと習いませんでしたか?」
「遊んでないって!ちょっとりんごのウサギさん作ってみたかったの!」
「だからって何でよりによって僕なんですか?他の方でもよかったはずですよ、よりによって・・・あだ名つながりで作られるとは」
「バニー・・・食べないの?」
「何度も言わせないでください、結構ですから」
そう言いつつバーナビーは其処を離れようとする。
ふと、進めた足をたち止めたバーナビー。ゆっくりと振り返ると・・・・―――――。
「バニィの・・・ばかぁ」
「」
が泣きそうな顔でバーナビーを睨みつけていた。
それを見た瞬間、彼本人「しまった!」と心の中で思ってしまう。
どうやら少し昔の性格が抜けきれていないのか、冷たい態度をしてしまったバーナビー。
「・・・すいません、僕が悪かったです。つい、つい昔のクセが・・・っ」
「いいもん、バニー嫌い」
「・・・許してください。りんご、食べますから」
「食べたい?」
バーナビーの「食べる」の一言で、の涙が止まる。
問いかけるように尋ねると、彼は首を縦に振った。
「じゃあ、ハイ食べ」
「が僕に食べさせてくれるなら、食べますというのが条件ですけど」
「え?」
しかし、彼もやられてばかりじゃ気がすまない。
食べる代わりに、バーナビーは笑みを浮かべながらに条件を出してきた。
「え?・・・そ、それってつまり・・・」
「食べさせてくれますよね?もちろん・・・僕は君が剥いたりんご食べるんですから」
「ひ、卑怯っ!」
「泣くほうがよっぽど卑怯ですよ。僕が君の泣き顔に弱いからって、そっちのほうが卑怯です」
バーナビーは笑顔でに言い放つ。
その言葉に彼女は何も言えなくなっていた。
そして、皿に乗っかったりんごにフォークを刺しそれをに差し出した。
「はい、持ってください」
「え・・・ほ、本当にやるの?」
「じゃないと僕は食べませんから」
「うぅ」
バーナビーに差し出されたフォークを持ち、おずおずと彼の口元まで持っていく。
それが口元まで運ばれると彼は口を開けて
りんごを齧り、咀嚼(そしゃく)をする。
ある程度口の中で噛み砕かれ喉が唸る音がし、バーナビーは笑みを浮かべる。
「美味しいですね。が食べさせてくれたから味が数段とあがりました」
「や、やめてよ。ふ、普通のりんごだよ」
「しかし、りんごは大昔・・・禁断の果実と言われていたんですよ。あの『創世記』で有名な『アダムとイブ』が食べた
知恵の実はりんごではないかと。諸説は色々あるんですけど」
「そうなの?」
「えぇ。まぁそんな禁断の果実と言われたりんごを、ウサギの形に切るとは・・・ロマンチックが欠けてしまいます」
「それ言われたらなんとなく申し訳ないような」
「今度からは普通に切ってくださいね」
「わ、分かった」
そう言いながら、違和感無くはバーナビーの口にりんごを運び
彼はそれを食べていた。
気づけばバーナビーは一人でウサギの形に切られたりんごを平らげていた。
お皿の上にはもうなにも残っていない。
「りんご。なくなっちゃったね」
「そうですね。でも、まだ残ってるじゃないですか」
「え?りんご、もうないよ」
「そうですね。りんごは確かになくなりましたけど、禁断の果実ならありますよ」
「僕の、すぐ目の前に」
「えっ?わ、私?!」
バーナビーは笑みを浮かべを見る。
そう言いながら、彼は彼女の腰に手を回しそのままホールド状態に入る。
完全に逃げ場を失ったは顔を真っ赤にして慌てる。
顎を持ち上げられ、バーナビーはに顔を近づけた。
「バ、バニーッ??!」
「目の前の禁断の果実に口付けをしたらどんな味がするんでしょうね?きっと甘くて、蕩けてしまいそうな味が
するんでしょうか?それとも、僕をもっと夢中にさせてしまう魅惑の味がするんでしょうか?・・・試してみたいものです」
「へっ、ヘンなこと言わないで」
は顔を真っ赤にさせて、バーナビーから視線を逸らす。
「ねぇ、教えてください。君を食べてしまったら、一体僕はどうなってしまうんでしょうか?」
「し、知らな」
「僕を見てください、。僕を見て・・・僕だけを見てください」
耳元で低く囁かれ、は目を泳がせ・・・・・バーナビーを見る。
凛々しくも愛しい眼差しでを見ているバーナビー。
彼女の顔がますます赤く、そうまるでりんごのように染まっていく。
「バニー・・・」
「僕の可愛い人。もっと君という禁断の果実を味あわせて」
そう言って、彼は彼女にキスをするのだった。
堕ち行くことを恐れないうさぎは
禁断の果実を口にするのも躊躇わないことを神は知らない。
だってうさぎは、その果実を”愛しているから“。
獣は禁断の果実を愛す
(りんごのうさぎ、それは君を食べ続ける僕の化身)