「バニーお風呂上がったよ」
「じゃあ僕も入るとしますね」
スケジュールの整理をしていたら
が顔を覗かせ、僕にお風呂に入るよう声を掛けてくれた。
パソコンの電源を落とし、椅子から立ち上がる。
リビングを出て声を掛けてくれたが寝室へと向かう姿を眺め
僕は笑みを浮かべながら浴室へと向かった。
20分後。
お風呂から上がり、アンダーウェアで
首にタオルをかけ寝室へと向かう。
腕にはめているPDAを見て、今日出動はない雰囲気。
今日くらいぐっすり寝たいものだな・・・などと思い寝室の扉を開ける。
「、まだ起きてたんですか?」
「あ、バニー」
扉を開けると、いつもなら間接照明だけの灯りの部屋が
普通に電気が点いていた。
そして、ベッドから体を半分起こし
ベッドヘッドに背を預け本を読んでいるの姿を目に映した。
「明日学校お休みだから本読んで寝ようと思って」
「そうでしたか」
「あ、そうだパジャマパーティしよバニー」
「パジャマ、パーティ?」
「いいからほら、こっち来て」
が読んでいた本を閉じ、嬉々としながら僕に早く
ベッドに来るよう手招きをする。
意味が分からないが、扉の前に突っ立っていた僕は
そんなの招きにすぐさまベッドへと向かい
彼女の横に腰を下ろした。
「ほら、ベッドの中入って」
「え?あ、は、はい」
座るだけじゃダメだったのか、と思い僕は戸惑いながらの指示に従う。
ベッドの中に体を入れるとが僕の方に体を向ける。
仰向けに寝転がっていたら
から「バニーもこっち向いて」との声に仰向けにしていた体をの方へと向ける。
「あの、・・・一体」
「バニー、パジャマパーティしたことないの?」
「それ自体をよく知りません」
「そっか。男の子はしないもんね。パジャマパーティって言うのはね
友達とお泊り会の時にパジャマ着て色んな話をすることなんだよ。私、カリーナとよく昔してたんだ」
「成る程」
の言っていた「パジャマパーティ」の意味がよく分かった。
確かに女の子というのは
ラフな格好でのお喋りは好きそうな気がする。
学校じゃできない話を女の子は集まってしそうだな。
「たまにはベッドの中でバニーとお喋りするのもいいかなぁ〜って思ったの」
「それもそれで楽しそうですね。いいですよ、じゃあ何を話しましょうか?」
楽しそうにしているを見ると、何だか僕までも楽しい気分になってきた。
いつもは、体を重ね愛を囁き合うベッドだけれど
今日くらい他愛も無い話をする場所として使ってもいいだろう。
「うーん・・・じゃあ、バニーはいつからアンダーウェアのままで寝るようになったの?」
「いつからだろうなぁ・・・僕もあんまり覚えてません。でも、両親が生きていた頃はちゃんとパジャマを着て寝てましたよ」
「そんな小さい頃からアンダーウェアのままで寝てたらビックリする」
「そういうは、いつも自分の体格より一回りくらい大きいサイズのモノ着てますよね?何でですか?」
話し始めはお互いの寝巻き姿について。
僕がアンダーウェアで寝るようになったことや
今が着ている自分の体格より一回り大きいサイズを着ているフリースのワンピース姿についての話しになった。
「あ、コレ?何か、こう寝巻きだし・・・ゆったりしたくって」
「じゃあワザと?」
「そうだよ。自分のサイズに合ったの着ても良いけど、ゆっくりしたいじゃん寝る時くらい」
「そうでしたか。でも、夏場大きいサイズのモノを着られると困ります」
「何で?」
「僕を誘っているように見えるからですよ」
「なっ!?」
僕の言葉には驚きの声を上げ顔を真っ赤にした。
女性が、自分のサイズより一回り大きいサイズを着ると
体の小ささを強調し、可愛らしさをアピールしているように見えるのだ。
なら尚更・・・夏の暑さに晒された足を見たりしていると
自分の理性を抑えるのだけでもいっぱいいっぱいだ。
「ち、違う!誘ってない!!」
「いいえ。君の足は僕に触れて欲しい、と誘っているんですよ」
「だから・・・っ」
「言われたくないのなら下に何か履く事を勧めます」
「うー・・・バニーのエッチ」
「そんな言い方されると、僕の繊細な心が傷つきます」
そう言って、本当に他愛も無い話をベッドの中で寝転びながら繰り広げていた。
笑ったり、楽しい話をしたりと、いつも此処にはない温かな雰囲気が
流れ出ていた。
喋り始めてしばらくすると、が眠たそうに目を擦り始める。
「・・・眠いんですか?」
「んー・・・ちょっと」
「ちょっと」と彼女自身は答えたが、目は既に眠気を訴えていた。
何度も目を擦り眠りそうな眼(まなこ)を起こそうとしている。
携帯の時計で確認をすると、いつもならが寝ていそうな時間帯を回っていた。
ベッドに入り始め、二人で他愛も無いお喋りを始めてから2時間は経過している。
いくら明日が休みといえど、寝かせてあげた方がいいだろう。
「もう寝ましょうか」
「でも、まだバニーとお喋り・・・したい」
「お喋りはまた今度にしましょう。さぁ、僕の腕に頭を乗せて」
そう促すとは僕の腕に頭を乗せ、体を密着させてきた。
肘を曲げ、の頭を撫でて其処におやすみのキス。
「おやすみなさい、」
「おやすみ・・・バニー・・・」
愛らしい声が途絶え、規則正しい寝息が聞こえてきた。
どうやらは眠気を相当我慢していたようだ。
僕は笑みを浮かべ、それが終わると大きなあくび一つ。
の寝ている姿を見て、僕も何だか睡魔が突然襲ってきた。
無理もないだろう・・・此処のところ、取材や出動で忙しかったのだ。
いくら2時間寝て、すっきりすると言えど昼寝感覚に近い。
たまには十分なのも必要だと体が訴えているのだろう。
「僕も、たまにはゆっくり寝るとしよう」
眼鏡を外し、携帯の横に置く。
部屋の電気を、メインから間接照明へと変え体を深くベッドに沈める。
ふと、目線を横に移すと既に夢の世界に入り込んだ。
相変わらずの愛らしい寝顔に笑みが零れ・・・・・―――――。
「・・・おやすみなさい」
頬に唇を落とし、眠った。
「・・・・・・んっ」
ふと、目が開く。
今まで閉じきっていた目だから、周囲の風景もぼんやりとして見える。
顔を窓に向けるもまだ夜は明けず、街を暗闇だけが包んでいた。
「・・・はぁ・・・目が覚めた」
いつもの2時間睡眠のせいで目が覚めてしまったのかもしれない。
もう少し寝れる努力をしよう、と心に決めていると・・・・・。
―――――・・・!・・・!・・・!・・・!
左手首に嵌めたPDAから痛々しい音。浮かび上がる「CALL」の文字。
左腕にはの頭を置いているため
彼女を起こしかねないと思い、すぐさまそれに出た。
「はい」
『ボンジュールヒーロー・・・寝ているところ悪いわね』
「いいえ。ヒーローは24時間年中無休みたいなもんですから構いませんよ」
敢えて、を起こさないように
コールをかけてきたアニエスさんに喋りかける。
『やたら小声ね、バーナビー』
「が隣で寝ているもので。出動ならすぐ向かいます、場所は何処ですか?」
『あら、ごめんあそばせ。なら場所だけ伝えるわ・・・場所は・・・』
が寝ていると分かったのか、掛けてきたアニエスさんも小声で僕に
出動場所を伝える。
場所を聞きながら、携帯の横に置いた眼鏡を掛け、視界をクリアにさせる。
そして通達が終わると僕はコールを切り、腕に乗せていたの頭を枕へと移した。
ベッドに寝せていた体を起き上がらせ、離れようとしたが・・・・・・。
「おやおや」
余程離れて欲しくないのか、の腕が僕の体の上に乗っていた。
離れたくないのはお互い様だが、今はどうしても離れなければならない。
ふと、目に飛び込んできたピンク色のアイツ。
僕はそれを握り、の横に滑り込ませる。
「・・・今は、コレを僕の代わりだと思って抱きしめててください」
ピンク色をした、あのウサギのぬいぐるみ。
今はこれを僕の代わりだと思って抱きしめてて。
「すぐ、終わらせてきますから」
そう言って僕は部屋を出て、着替えを済ませ
夜の街へと駆けるのだった。
出動を終え、再びマンションに帰り着き
軽くシャワーを浴びて寝室に戻る。
は部屋を出てから何一つ変わっていない・・・ウサギのぬいぐるみを抱きしめたまま。
僕は彼女の横に腰掛け、頭を撫でる。
「・・・バニー・・・大好き・・・」
「・・・」
撫でると寝言が聞こえてきた。
甘く蕩けてしまいそうな、愛の言葉。
でも・・・それは・・・・・・。
「コイツを抱きしめながら言う言葉じゃないでしょ」
ゆっくりとぬいぐるみを引き離し、ベッドの片隅へと置き
体を密着させ、腕に頭を乗せた。
ようするに、最初の体勢に何事も無かったかのように戻したのだ。
眼鏡を外し、もう一度寝る体勢に入る。
そして今度は―――――。
「。君と、同じ夢を見れたら」
そう呟いて目を閉じ、眠った。
時には君と、同じ夢を見れたらどんなに幸せだろうか。
同じ夢を見て・・・いや、夢の中で君に逢えたらどんなに幸せだろうか。
夢でもし逢えたら・・・もう一度、僕に囁いてください。
「大好き」という、その言葉を。
PAJAMAS PARTY〜夢でもし逢えたら〜
(たまにはベッドで他愛も無い話をして、もし夢で逢えたら素敵なことだ)