「バニー・・・次は何の仕事だ?」


「次は、月刊雑誌のインタビューですね。18時からで・・・今は14時か、少し時間がありますね」


「なぁ・・・最近写真集とかそういうインタビュー関係の仕事多くね?」









アポロメディアのとある廊下。

バーナビーに次の仕事のことを尋ねる虎徹。
仕事内容を彼に伝えたバーナビーの言葉に、虎徹は疑問を零した。










「そうですか?僕としては楽しいですよ」


「いや、俺らヒーローだから」


「いいじゃないですか。これもヒーローとしての仕事と思えば」


「あの・・・だけどさぁ」








廊下を虎徹とバーナビーは歩きながらそんな会話をしていた。


しかし此処最近の写真集やインタビューの仕事の急増に
虎徹は不満を漏らしていた。

不満を漏らす虎徹の傍ら、バーナビーはやれやれ、とため息を零す。







「あぁ君達。まだ会社に残ってて良かったよ」



「ロイズさん」

「どーしたんスか?」





すると、直属の上司であるロイズが彼らを見つけるや否や近づいてくる。







「どうかしましたか?」


「いや、実はね。今度の雑誌のインタビューで私服のグラビアあるんだが
個人でインタビューとグラビア合わせて10ページは使いたいって先方から要望があったんだけど」


「10ページも!?・・・そ、それは結構厳しいっすね」





先ほどの話題に乗っかるように
ロイズが持ち込んできた話に虎徹は心の中で「またか」と言いながら頭を掻いた。

しかも、インタビューやグラビア合わせて10ページともなると
さすがの虎徹でも飽き飽きしてくる。





「やっぱりか・・・10ページは難し」



「いえ、大丈夫です。それで行きましょう」




「え?」
「へ?バ、バニー?」







ロイズが持ってきた雑誌の取材で
虎徹の反応が流石に厳しいことを物語っていたのか難しいと彼が答える前に
バーナビーが即座に「大丈夫」との返答を返し、ロイズも虎徹も驚いた表情を見せた。








「むしろ、20ページくらいでもいいと思いますよ僕は」



「い、いや・・・それはさすがに。なぁロイズさん」



「え?・・えぇ、まぁ。と、とりあえず10ページはいいんだね?」



「僕は構いませんよ。虎徹さんはどうします?」



「お、お前が引き受けるなら・・・仕方ねぇよ」







清々しい表情で虎徹にどうするか、と尋ねるバーナビー。
尋ねてきた相棒に彼は頭を掻きながら渋々取材を引き受ける返事をした。







「じゃあ、先方にはそう伝えておくよ」





二人の了承が得られるとロイズはすぐさまそれをスケジュール帳に書き留めた。







「取材はいつですか?」


「あ、明後日だけど」


「うむ・・・じゃあ、一番カッコいい服を着てこなきゃいけないですね。
みっともない格好じゃ、台無しですから」


『え?』





バーナビーの口から出てきた言葉に虎徹もロイズも目が点になる。

2人の目が点になっていることも気付かず
バーナビーは一人ボソボソと呟き始める。








「何か良いのあったかな?この前買った服もあるけど・・・アレでもいいけどなぁ。
この際・・・うん、に見立ててもらうっていうのもアリかも。よし、そうと決まれば・・・」










バーナビー、満面の笑みで取材時の服装の事を一人呟き
嬉々としながら歩き出しポケットに直していた携帯を取り出て、何処かへと電話をかけ始めていた。








「彼、やたらグラビア付きの雑誌の取材を積極的に受けるんだけど・・・何かあった?」






意気揚々としてその場から居なくなったバーナビー。


そしてその場に残されたロイズは同じく取り残された虎徹に
理由を尋ねる。






「何かあったって・・・・・・あー・・・多分、アイツのマンションに住まわせてる子が原因っすね」



君・・・だったよね、確か。え?何?じゃあ彼は、彼女のために取材を受けるの?」



「おそらくは」







バーナビーの居ぬ間に、歳の行った男二人は話しながら
廊下を歩き出す。






「意味が分からないんだけど?」


「どーせ、良い服着て良い格好見せたらが買うとか思ってるんでしょうよバニーちゃんは。
バニーもバニーでが買うってこと知っててやってるし・・・多分、今回は他に別の目的があるかも」


「別の目的?一体彼に何の目的が・・・」


「多分、アレっす」


「ん?」









2人は廊下から抜け、アポロンメディアのエントランスホールへとやって来た。

人が行き交う場所に来たが
バーナビーの格好からしてスーツだらけの人の場所では目立つ。

虎徹はセキュリティゲートの向こう側・・・つまり、出入り口付近を指さす。
ロイズも彼の指の先を見ると・・・。












『早かったですね

『丁度近くを通ったの。急に電話がかかってきたからビックリしちゃった』

『すいません』








何故か、が其処に居た。

しかし、彼女の言葉を聞くにたまたま近くを通りかかった様子。


それで2人は確信する。

さっき何処に彼が電話をかけていたのか。
間違いなく・・・彼女()を呼び出すための電話だったのか、と。









『それでどうしたの?』


『実はちょっとに僕の洋服を見立ててもらいたくて』


『え?この前一人で洋服買いに行ったんじゃないの?気に入った服見つけたから買ってきたって
私にその後着て見せてくれたじゃない。アレでも十分に格好良かったよ?』


『僕はに見立てて欲しいんです。男のセンスよりも、女性のセンスのほうがやはり良いですから』


『ウフフ煽て上手な兎さんね。私のセンスで良ければいいよ』


『ありがとうございます。じゃあ行きましょうか』








そう言ってバーナビーは嬉しそうな表情を浮かべと会社を後にした。


こういったやりとりは会社内でやれば怪しまれることはない、と踏んでの事だろう。
外見上、ファッション的な仕事の話をしているように思えるのだが、裏を返せば・・・・・・・・・。








「ありゃ完全にデートするつもりで呼んでますね」


「彼らの関係を知っているから言えることだけど・・・間違いなくそうだろうね」









虎徹が零した「別の目的」。

バーナビーがデート目的でを誘うということを予測していたのだろう。
今日でなくとも、明日にでも・・・と思っていたようだが
バーナビーの思考は虎徹の考えていたことより遥か右斜め上を行っていた。


要するに「今からかよ!?」ということである。


すると突然虎徹の携帯が鳴る。
ポケットから取り出し画面を見ると兎の写真に名前で『BUNNY』の文字。






「はいよ」


『すいません虎徹さん。急用を思い出したので先に会社を出ます。
18時の取材には遅れては来ませんので。場所は後でメールで送ります』


「はいはい」







明らかに虎徹からしたら
「今からとデートしてその後に仕事に向かう」と言う言葉に聞こえた。

上手く言葉を取り繕っているようだが、を呼び出し
一緒に会社を後にしている場面をバッチリ目撃したから
あとで冷やかしてやろうか、等と虎徹は心の中で思っていた。





『では、また後で』

「あいよー」







バーナビーは虎徹との通話を切断し、ため息を零す。





「バーナビーはなんだって?」


「18時の取材には間に合うそうです」


「まぁ彼のことだから遅れたりはしないが・・・本当に大丈夫なのか?」


「出動の時は遅れたりしないんですけど、取材とかではたま〜に遅れてくるんスよ。
しかも理由が”女性が複数の男性に絡まれていたのを助けて
危なかったので自宅まで送ってた“とか言ってたんスけど。
聞いた話だと、がナンパされてたところを助けて家まで連れて帰った・・・とか」



「公私混同だね彼」



「いや、公私混同しすぎなんですアイツは」



「頼むから、バーナビーが捕まるような事だけは避けてくれよ」



「分かってますって。それに俺も相棒が未成年に手を出して
捕まったとなっちゃヒーロー自体続けにくいっすから」






公私混同は程々に
(程ほど知らずのキング・オブ・ヒーロー!)
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