「あ、あの!!」
「はい?」
「こ、コレ・・・受け取ってください・・・っ!!」
「え?」
「ねぇねぇ見てバニー」
「何ですか?」
夜。
が嬉しそうに、僕にあるモノを見せに来た。
「これ見て!」
「・・・手紙、ですか?」
見せて来たのは手紙。
裏返すと、封の所に分かりやすいことにハートのシールが貼ってある。
「えへへ・・・ラブレター貰っちゃった。
高校生になって初めてラブレターもらったんだ。急に声かけられるから
ビックリしちゃったんだけど、どう見てもラブレターにしか見えなかったからさぁ」
「・・・・・・・」
どうみても、どころか、誰が見てもこれはラブレターだった。
それを貰ってが終始嬉しそうな表情を浮かべている。
なんだろうか。
可愛らしい表情なんだが、酷く憎たらしく思えてきた。
「ちょっと見せてください」
「うん、いいよ」
見せてと言って、バカ正直にラブレターを僕に渡す。
ああ、鈍感。
でもそこがたまらなく可愛い・・・だから―――僕はが受け取ったラブレターを彼女の目の前で盛大に破った。
「あーー!!!な、何するのよバニーッ!?」
「僕という恋人が居ながらどうしてラブレターなんか貰って浮かれてるんですか?」
そう、には僕という恋人がいる。
それだというのに何故浮かれているのかが分からない。
ましてや、それを見せびらかす時点で僕が嫉妬して当然というものだ。
「ちゃんとお断りはするけど、破ることないじゃない!!
私まだ読んでもいないのになんてことするのよ!!」
「ラブレターを貰って僕に見せびらかす時点でおかしいでしょ?破って当然です。
それに読まなくても内容は君への想いが綴られているに決まっています。読まなくていいです。
陳腐な言葉の羅列は君の目に毒です」
「ち、陳腐な言葉の羅列って・・・読んでもいないのにそういう事言わないの!
だったらバニーが貰ってる手紙だって破ってもいいでしょ!?」
すると、が僕の言葉に反論してきた。
「それはダメです。アレはファンレターですから」
「女性からのものはファンレターじゃなくて明らかにラブレターでしょ?!
じゃあ破ってもいいわよね?」
「だからダメです。ファンからの手紙と、異性からの手紙は違います」
僕のは完全に「ファンレター」という声援を込めた手紙だ。
が貰ったラブレターとは180度違う。
「バニーのファンは大抵女の人でしょうが!!ラブレターよそんなの!!」
「好意があって渡すのがラブレター、声援をこめて送るのがファンレターですよ。その違いです」
「ヘリクツ!!ワガママ兎!!」
「何とでも。とりあえず、今後学校の男子生徒に限らず
異性から貰った手紙は全部僕に渡してくださいね?」
「な、何で?」
「破り捨てます。僕のにラブレターを送るなんて100年以上早いですし
高校生のガキの分際で僕のに近づこうなど言語道断です」
「バニー笑顔で言わないで怖いから!!」
脅し?に恐れを無したか、が半泣きで僕に言う。
ゆっくりとに近付き、顎を持ち上げ視線を合わせる。
視線を合わせた彼女は本当に今にも泣きそうな顔をしていた。
「・・・そんな顔しないでください」
「だって、バニーが意地悪するから」
「別に意地悪してるつもりはありません」
あまりにも泣きそうな表情に、僕は彼女の頬を包み込み
瞼に優しくキスをする。
「を守ってるんです、僕なりに」
「守ってる、の?」
「ええ。可愛い彼女を他の男から守るのは彼氏である僕の義務です。
は僕のモノです・・・誰にも渡したくありません」
言葉で気持ちを伝えるのも、文面で気持ちを伝えるのも
他の誰でもない、それは僕という人間が彼女にすることだ。
それを見ず知らずのヤツになんかに奪われたくない、ましてやまでも奪われたくない。
「僕の気持ち、分かってくれましたか?」
「なんか、上手い事私、丸め込まれてない?」
「まさか。そんな事ありませんよ」
「そう、だよね」
気付かれないように、君への思いが綴られた手紙はそっと消してしまおう。
ラブレターが辻斬にあいました。
(だって君は僕のモノなんだから、そんなの全部排除排除!)