「映画、楽しかったね」
「そうですね。海外の話題作というものだからどんなものかと思っていましたが
なかなか見応えのある作品だったと思います」
「たまにはこういう映画もいいもんだな」
「ったく。休みの日に何かと思えば・・・何で、私まで付き合わなきゃいけないのよ」
「えー、カリーナだってこの映画見たいって言ってたじゃんか」
とある休みの日。
私とバニー、それにタイガーさんとカリーナの四人で映画館に
巷で話題の映画を見に来ていた。
見終わっていろんな人達と外に出ながら、カリーナはグズグズと言っていた。
「だからって・・・何でこのメンツなわけ?ぶっちゃけ其処の男二人いらなくない?
私、と観たかったんだけど」
「い、いいじゃん。タイガーさんやバニーだって息抜きが必要なんだし。
お家でのんびりするのもいいけど」
「たまには外に出てリフレッシュ、というのも満更悪くないですね。
映画鑑賞も劇場に足を運んで見るのと自宅で見るのとでは臨場感が違いますから。
そういったのも映画の醍醐味だと思います」
「も、もういい!」
バニーの説得ある言葉にカリーナは反論できないのか頬を膨らませていた。
そんな彼女の気分はいつものことだ、と思い私は苦笑を浮かべる。
「まぁまぁ。見終わった事だし、何か食いにでも行くか」
「虎徹さん、ずーっとポップコーン食べてましたもんね」
「映画って言ったらポップコーンだろ。つか、アレ食ってたら腹減ってさぁ」
「全く。映画の余韻に浸る暇もないですね、貴方って人は」
「う、うるせぇな」
そして、相変わらずの2人のやりとりにも苦笑。
とにかく映画を見終わったということで、この後は食事に行くという。
ゾロゾロと行き交う人の波に混ざりながら私達四人は歩く。
ふと、胸に抱えた映画のパンフレットを見る。
「?・・・どうかしましたか?」
「え?」
私の様子に気付いたバニーがすぐさま声をかけてきた。
「パンフレットが汚れてましたか?」
「うぅん、違うの」
「じゃあ」
「お話は凄く良かったし、とっても感動したよ」
「そうですね。君は感動のあまり泣いていましたもんね」
バニーの言葉に私は顔が少し赤くなり恥ずかしくなった。
確かに感動のあまり泣いていたけれど
まさかあの暗闇の中、そんな自分の顔を彼に見られていたとは。
驚き半分、恥ずかしさ半分である。
「それだけ君は満足していたのに、何か腑に落ちない点でも?」
「別に腑に落ちない点があるわけじゃなくて・・・あのね、バニー」
「はい」
「もし・・・もしもの話だよ?
もし、私が・・・この雪の女王様みたいに、心までも冷たく閉ざしちゃったら・・・バニーはどうする?」
ふと、考えてしまった。
心までも冷たく閉ざし、周りとの関わりを一切無くしたとしたら。
きっと辛いだろうし泣いてしまうかもしれない。
もし、私がそんな事になってしまったらバニーはどうするのだろうか・・・なんて
変なことを考えてしまった。
問いかけたバニーの顔を見ると、彼は少し驚いた表情を浮かべていた。
無理もない。
少し行き過ぎた話でもあるし、彼が驚いて当然だろう。
むしろそんな表情をする辺り返答に困っているのかもしれない。
「ご、ごめんねバニー・・・困らせるつもりなかったから。今の忘れて」
「忘れて」という言葉で話をなかった事にし私は先行くカリーナとタイガーさんの元に走りだそうとする。
すると、いきなり手を握られ動きが止まった。
「え?バニー?」
バニーが私の手を握り、動きを止めていた。
「もし、君がそんな状態になった時は―――」
ゆっくりと顔が上がり―――――。
「凍ってしまった心ごと、僕の愛の炎と口付けで溶かしてあげますよ。
の凍ってしまった心を溶かすなんて、僕には容易いことですから」
「っ!?」
極上の笑顔で私に言い放ってきた。
キラキラと眩しいまでの笑顔に、私は顔を真っ赤にしてしまう。
「そんな事を聞くなんて、愚問ですよ。分かりきってることじゃないですか」
「す、すいません」
「顔を真っ赤にして・・・フフ、本当には可愛いですね。君のそんな顔を見ていると
僕の、君への愛の炎が燃え上がり、心も体も熱くなるばかりだ。
むしろ凍る余裕が何処にあるっていうんですか?そんな隙すら与えませんよ」
自分で言っておきながらなんだが、本当に彼に対してコレは愚問のように思え
結局は自分自身が恥ずかし思いをする羽目になっていた。
「ねぇ、アイツ(バーナビー)・・・殴ってもいい?」
「とりあえず、殴るなら見えねぇとこ殴れよ」
心の氷を溶かす方法は・・・?
(僕の愛がある限り、君の心に氷なんて出来やしない)