「カリーナとにお土産です」
「え?どうしたのお兄ちゃん」
「何?お兄ちゃんが私達にお土産とか珍しい〜」
仕事の接待での帰り。
可愛らしいくまのぬいぐるみを見つけた僕。
最初はだけに買って帰ろうと思ったが
彼女だけに与えてしまえば、何を言われるか分からないし
ましてや僕との”秘密の関係“がバレてしまう恐れがある。
ある意味その関係をカムフラージュするために
敢えてカリーナの分、色違いではあるがそのぬいぐるみも、買ってきたのだ。
「丁度目に止まったので、2人にお土産です」
「うわぁ〜可愛い」
「ちょっとコレ有名なデザイナーが考えたぬいぐるみじゃない。可愛い〜」
どうやら2人はぬいぐるみに興味津々。
「はピンクで、カリーナはブルーです」
「良かったわね、カリーナ」
「うん!ありがとうお兄ちゃん」
「いえ、どういたしまして」
ママの言葉には嬉しそうな表情で僕に御礼の言葉を投げかけてくれた。
彼女の喜ぶ顔を見るだけで僕としても嬉しい。
「良かったねカリーナ」
「ぅん。でも、私・・・ピンクが良かった」
「え?」
が喜んでいたのも束の間。
カリーナがに与えたピンクのぬいぐるみのほうが良かったと言葉を漏らした。
「別にブルーでも可愛いけど・・・私、ピンクが良かった」
「カリーナ、ワガママ言わないの。お兄ちゃんがせっかく買ってきてくれたんだから」
「分かってるけど・・・・やっぱり、私・・・」
ママが愚図るカリーナを宥めるも
カリーナはやはりブルーよりもピンクのほうが良かったと言いたいらしい。
流石に此処は僕がを一番に考えて買ったのが間違いだったか、と思った。
にはピンクが似合う、ただそれだけの思いで色をチョイスしたし
カムフラージュの目的とはいえ、違う色にしたのは誤算だった。
むしろカリーナがまさか愚図るとは・・・と内心ため息を零す。
「じゃあカリーナ、交換」
「え?・・・?」
すると、が自分の持っているぬいぐるみをカリーナに差し出した。
ちょっと待ってくれ。
それは君の為に買ってきたぬいぐるみで、君に似合うと思って色も選んだ。
それだというのに、君はそれを簡単に変えようと言うのか?
「で、でも・・・、いいの?」
「ピンクはカリーナが持ってていいよ。私、ブルーのほうが良かったから・・・だから交換」
「・・・ありがとう!」
そう言ってカリーナとは、お互いのぬいぐるみを交換した。
最初に僕が渡した方とは裏腹な色遣いをしたぬいぐるみが
それぞれの腕の中に収まっていた。
「もう、カリーナはワガママなんだから。はカリーナに優しすぎるのよ」
「そんな事ないもん。ねー?」
「私、ブルーのぬいぐるみが良かったからいいの。バーナビーお兄ちゃん、ありがとう」
「え?・・・い、いいえ」
先ほどと変わりない笑顔で御礼の言葉を言われた。
嬉しい半面、何だか複雑な気持ちになり・・・僕は少し肩を落としたまま部屋に戻るのだった。
部屋に戻り着替えていたら、扉を叩く音がした。
僕が帰ってきて、その僕の部屋の扉を叩く人なんて・・・1人しか居ない。
『お兄ちゃん。私・・・だけど』
「どうぞ」
僕が返事をすると、ドアノブの捻る音がして
が中へと入ってきた。
僕は着替えを済ませ、ベッドに座る。
そんな僕の側にがおどおどしながら近付く。
「どうしたんですか?」
「お兄ちゃん、何か怒ってる?」
「どうしてそう思うんですか?」
「だって、何か・・・お兄ちゃんがくれたお土産、私がカリーナとぬいぐるみ交換した後
急に表情が変わったから」
どうやら、僕の気分が変わったことには気付いたのだろう。
僕はため息を零し、彼女を引き寄せ抱きしめた。
「本当はのためだけに買ってきたぬいぐるみなんですよ。
色だって、ピンクは君に似合うと思って選んだのに・・・それをカリーナのワガママで交換するなんて」
「バーナビーお兄ちゃん」
「僕の愛情を容易く、手放されたのが何だか・・・辛くて」
例え、血が繋がってなくとも・・・戸籍上、僕らは「兄妹」だ。
だけど僕自身、を「妹」としてではなく「1人の女性」として
この目に映している。
1人の女性として、を愛しているからこそ
何処かで僕の愛を感じて欲しかった。
僕の、君への愛を・・・受け取って欲しかった。
それだというのに・・・何も分かっていないような感じで
意図も簡単にその愛を手放されたのが、辛くそして・・・虚しかった。
「ごめんなさい。お兄ちゃんがそこまでして考えていたなんて・・・ごめんね、お兄ちゃん」
僕の言葉には優しく、包み込むように抱き返してくれた。
の胸の鼓動が・・・僕の耳に入ってくる。
それを聴くだけで心が段々と落ち着いて、胸を突き刺していた痛みが取れていく。
この鼓動を耳にするだけで、癒される。
「僕も、大人気なかったですね・・・すいませんでした」
「いいよ。でも、お兄ちゃんから貰ったぬいぐるみ・・・大切にするね」
僕の態度が元に戻ったのかは僕に笑ってみせ
おでこに軽く唇を落とした。
「おでこだけですか?」
「え?」
「出来れば、僕はココにしてほしんですけど?」
僕は自らの唇を指で軽く押さえ
おでこではなく、ココにして欲しい・・・という意思表示をした。
するとは顔を赤くほのかに染めて
目を泳がせていた。
あぁその表情・・・たまらなく、可愛い。
「い、今・・・するの?誰も、来ないよね?」
「此処は僕の部屋、言わば僕の領域(テリトリー)ですよ・・・ノックも無しに入ってくる人なんていません」
「で、でも・・・」
「」
焦る妹の姿に、僕は名前を呼んだ。
名前を呼ぶと彼女は未だほのかに赤い顔のまま僕を見つめる。
視線がぶつかり合い、目を一瞬たりとも逸らせないようにする。
「大丈夫ですよ」
「ホントに?」
「えぇ。・・・だから、ホラ・・・ね?」
僕 に キ ス を し て 。
「バーナビーお兄ちゃん・・・・・・好き、大好き」
「僕もですよ」
ようやく、唇が重なり
今やっと・・・愛すべき人の愛情を受け取った気分になった。
さて、今度は君に・・・僕のどれくらいの愛情をあげようか?
でもきっと・・・あげても、足りないかもしれない。
僕の心も、体も全部君に捧げたとしても
きっと君への愛情は”どれくらい“という尺度じゃ収まりきれないから。
尽くして、与えて、それでもこの愛、まだ足りない!
(ぬいぐるみ1個じゃ、君への愛情なんて事足りる訳ない)