「もしもし?あら、どうしたのファイアーエンブレム?」
ライアンさんの歓迎会?を終えた次の日。
私はアニエスさんのいるデスクに来ており、書類整理の手伝いをしていた。
そして、アニエスさんの携帯が鳴りそれに出ると
どうやら相手がネイサンであることがすぐに伺える。
しばらく黙りこんで電話元のネイサンの話を聞いていると―――――。
「は?ちょっと・・・何、話を勝手に進めてんのよ。ていうか、何処で間違えたらそうなるの?」
眉間にシワを寄せ、電話元のネイサンに怒気を強めて言い出した。
外野にいる私には全く話は聞こえないし、ヒーローとプロデューサーの間の問題でもあるから
多分ノータッチで居るほうがいいのだろうと思い、手を動かす。
「何でいきなり、映画の話がロックバイソンに切り替わっているのよ。
私はライアンとバーナビーとタイガーの3人って言ったはずなのに、何を何処で間違えたらそうなったの!?」
「!?!」
アニエスさんの言葉に自分の耳を疑った。
もしかして電話元のネイサンは、昨日の二次会で起こったことを話しているのでは?と自分なりに
推測するも、あながち間違いではないだろうと結論に行き着いている。
「いいわ。どうせ行くつもりだったし・・・話を上手くまとめればいいのよね?ええ・・・分かったわ。
とにかく今からそっちに行くから・・・4人の様子ちゃんと見張ってなさいよ」
そう言ってアニエスさんはネイサンとの通話を切断し、席を立ち上がり
スーツのジャケットを羽織る。
「アニエスさん、あの・・・」
「。私、ちょっと今からトレーニングルームに行ってくるから。
私宛の連絡来たら用件だけ聞いて書き留めといて、書類も机の隅に置くだけにしといていいから」
「いえ、あの・・・私も、付いて行っても、いいですか?」
「は?」
私の発言にアニエスさんは驚いていた。
確かに話を知らない外野だったら付いていかないだろう。
しかし、この映画の話は先日外野に居たわけもなくその逆、完全に内野に居た私。
挙句、アントニオさんに話を押し付けるところまでキッチリ目撃していると来た。
「貴女が来ても、何の話か分からないわよ?」
「いえ、あの・・・実は、昨日・・・」
私は正直に、昨日の二次会で何が起こったのかを洗いざらいアニエスさんに話した。
話を聞いたアニエスさんはため息を零し「じゃあ付いてらっしゃい」の言葉を投げかけてくれたのだ。
「怒ってますか?」と私が問いかけると「じゃなくあの酒飲み共にね」と言い
私を乗せたアニエスさんの車がジャスティスタワー内に敷設されたトレーニングルームへと向かうのだった。
「はぁ〜」
「バニー」
「あ、。来てたんですか」
アントニオさんの件を片付けたアニエスさんは再び会社へと戻り
一方の私はというとその場に残り、バニーの所にやってきた。
私の姿を見たのか、ため息を零していたバニーは立ち上がり私の側へと来た。
「アニエスさんに付いてきたの」
「そうですか」
「それで・・・昨日のこと、私が見てたことをアニエスさんに」
「話したんですね。はぁ〜・・・後で延々彼女からお説教の嵐だと思うと、気分が滅入ってしまいます」
私がアニエスさんに事情を話したと告げた途端
バニーは再びため息を零し、椅子にと腰掛けた。
多分、この後バニーとタイガーさんにはアニエスさんからのキツイお説教が待っているに違いないだろう。
彼の顔を見てもそれは一目瞭然、とも言えるべきことだ。
「今度からお酒は極力控えることにします」
「そうだね。・・・・・・・ねぇ、バニー」
「何ですか?」
落ち込む彼に苦笑いを浮かべながら私は、ふと思ったことを問いかけてみる。
「あのね、昨日のこと・・・覚えてる?」
「は?」
これを言うと明らかに自分がアニエスさんからお説教を食らう原因、と思いがちだが
そっちじゃなく、その話に入る前の事を覚えているか聞いてみた。
私をお姫様役にして、自分が王子様を演じたい・・・というバニーの超個人的映画の案。
「それはロックバイソンさんの事ですよね?」
「あっ・・・いや、お、覚えてないならいい」
彼の口からアントニオさんの名前が出た瞬間から
「覚えてない」と確信した。
確かにあんな恥ずかしいこと覚えていても、私的に困る。
彼が覚えていないと分かり、安心していると―――――――。
「まぁ、もし機会があればお姫様を助ける王子様にはなりたいものです。
もちろん、僕が助け出すお姫様はこの世でたった1人しかいませんけどね」
「っ!?!?」
バニーが耳元でそんな事を囁き、驚いたと同時に顔が真っ赤に染まる。
勢いよく彼の顔を見ると、満面の笑み。
「覚えたの!?」と声を大にして言いたいのに、恥ずかしさと驚きのあまり声が出ない。
「ではお姫様・・・ごきげんよう」
そう言ってバニーは私の額にキスを落として、其処を颯爽と立ち去っていった。
後ろ姿を見た感じ、先ほどの落ち込みは何処へやら。
凄く機嫌よく、歩いて行った。
一方の私はというと、彼の唇が落ちてきた額に手を当て――――。
「バッ、バニーのバカ・・・ッ!!」
思いっきり彼の後ろ姿に向けて叫んだのだった。
旅立つ鳥の後始末後は?
(とりあえず、一件落着かな?)