『ねぇ、見てみて!カッコいいよねバーナビー!』

『イケメンだし、ヒーローだし、モデルみたいでさぁ・・・ホントカッコいいよね!!』








「最近人気ね、バーナビーのヤツ」

「ヒーローだからね」





学校の帰り道。

カリーナと私は帰りながら、近くを通り過ぎる女の子たちの会話を
耳に入れながら話をしていた。




「ヒーロー界のアイドルは私なのよ?私よりもスポット浴びるとかどう思う?」


「カリーナも頑張ってるじゃん。私も知ってるし、ブルーローズを好きなファンも」


〜」







慰められたのかカリーナは半泣き?しながら私に抱きついた。




確かにバニーとタイガーさんが載った雑誌は此処最近すごい。

なんていうか雑誌にグラビア記事とか当たり前すぎて。
学校でもあの二人が載っている雑誌を広げている女子は多い。








「あ、見て。さっきの人たちが持ってた雑誌だよ」

「ホント。ちょっと見てやろうかしら」





二人で歩いていると、先ほどバニーの話をしていた人たちが広げていた雑誌が
書店の前に並んでいたのを私は見つけた。

カリーナにそれを言うと後で冷やかすつもりの表情に見えた。


二人で書店の、本が並ぶところに立ち雑誌を広げた。





「うわっ・・・す、すごっ・・・カッコいい〜」


「アンタの場合、後ろにバニーが付いてるでしょ?」


「あぅ!?」






思わず、カリーナに言われ図星。


雑誌を広げた途端、タイガーさんのカッコいい顔とか、バニーの凛々しい顔とか
あとは個人インタビュー、プラスの私服でのグラビア写真など等。

多分、これはヒーローファンでもたまらない一冊かもしれない。


でも、バニー・・・カッコいい。


私いつもこういう綺麗な顔の人と暮らしてるんだと思ったら
写真に写っているバニーの顔に頬が赤くなった。





「ね、ねぇカリーナ」


「何よ?」


「私、これ買うから・・・タイガーさんのページ上げるから、半分払わない?」


「ちょっ!?な、何であんなおじさんっ・・・!!」


「だ、だってネイサンが言うにはカリーナ、何か時々タイガーさん見てるって・・・」






カリーナにタイガーさんの話をすると、カリーナは頬を赤くして否定していた。


でも、ネイサン曰く
「カリーナは時々タイガーを意識して見ている」って言っていた。
だから私は多分、カリーナはタイガーさんを好きなんじゃないかと思っている。






「あんの、オカマッ!!今度氷漬けにしてやろうかしらっ」


「で、カリーナちゃん・・・タイガーさんのページいるの?」


「・・・・・・し、仕方ないわねっ。今回は特別に貰ってやるわ、でも払わないから」


「え〜」


「特別に貰うんだから、払わないわよ」






そう言われ、とりあえず雑誌を買った。



しかし、その数ヵ月後。
思い出したかのようにカリーナが「あの時の雑誌のページ代、やっぱり払う!」と言ってきたのはまだちょっと先の話。
そう、彼女が本気でタイガーさんを”好き“だと認めた頃になってからの事になる。













「今切り抜く?」

「明日でいいわよ。私これからトレーニングだから」





雑誌を買った袋を提げて私とカリーナは歩く。
彼女はこれから会社に行ってトレーニングだそうだ。
私はというとバニーのマンションに帰ってご飯を作らなければ。








「ねぇ、タイガーさんとバニーの両面ページの時どうしようか?」


「アンタに任せる。ていうかタイガーのページも持っててあげなさいよ、命の恩人なんだし」


「そうだよね。じゃあそれは私が持っとく」


「はいはい。あ、私こっちだから」


「うん。トレーニングとお仕事頑張ってね」





そう言って私とカリーナは別れた。


カリーナと別れ、バニーのマンションへ向かう途中私は上機嫌。
彼の載っている雑誌を買うのは初めてで、何だか胸が躍った。

マンションに帰って広げてみるのが楽しみだ。


ふと、視界にコンビニが映った。
そして袋の中の雑誌を見る。数秒考えて、コンビニの中に入る。







『ありがとうございました』




「や、やってしまった・・・っ」





数分後、私はコンビニから出てきた。

何をしたのかというと・・・先ほど買った雑誌のバニーのカッコいいページをカラーコピーしたのだ。

よく芸能人の写真をコピーしてポスターだのなんだのとお手製のモノにする。
私もそんな真似事をした。


でも、一番カッコいいページのを縮小コピーした。

出てきたコピー用紙に、少し小さくされたバニーの凛々しくも笑った表情の写真。











「定期の中に入れとこ」








目の保養にもなるし、何だかすごく近くに居る気分にもなる。

私は嬉しくなり、浮かれた表情でマンションへと足を進めたのだった。












「ただいま」



「お帰りなさい



「うわぁああ!?バ、バニーッ・・・か、帰ってたの!?」






マンションのバニーの部屋のドアを開け、いつものようにリビングに向かうと
バニーが爽やかな顔をして私を迎えた。

そんな彼に私は心臓が止まるほど、驚いた。
いや・・・だって、手にはあの、バニーの載った雑誌と、後で定期に入れるバニーの写真(コピー)がっ。







「えぇ。でも、これから戻ってトレーニングです。ていうか、僕が帰ってきてそんなに驚くことですか?」


「だ、だって」







普段、こんな時間は大抵トレーニングや出動でマンションに居ることは少ない。

驚いて当然だ。
むしろ、雑誌の写真見ちゃってるから余計本物見ると驚く。





「怪しいですね・・・僕に何か隠し事でもしてるんじゃないんですか?」


「ち、違うよ!ホントびっくりしただけだから!!」


「テストで悪い点数でも取ってきたんなら正直に言いなさい、今ならまだ許してあげます」


「だから違うってば!テストは・・・そりゃあ、ちょっと危ないかなって点数、小テストで取っちゃったけど」


「まったく、君って子は」






思わず小テストの点数のことを零した瞬間、私の腕を
バニーが引っ張り、腰をがっちりホールドして顎を持ち上げられた。





「バ、バニーッ・・・顔近いよ」


「何に現(うつつ)を抜かしたら、危なっかしい点数なんか取るんですか?」


「別に、現なんて・・・っ」


「もしかして」































「僕の事、考えてたんじゃないんですか・・・?」



「なっ!?」




バニーの悪戯っぽい顔に、私の顔が緊張のあまり赤く染まったに違いない。





「ち、違うわよバカー!!」



「ちょっ・・・・・・うわっ!?」





恥ずかしさのあまり、能力発動。
念力でバニーを壁に叩きつけ、体が離れた。

私はバニーの拘束?から離れ、地面に足をつけ―――。






「バニーのバカ!」






そう彼に言葉を投げて、寝室へと向かったのだった。


寝室に入り扉を閉め、私はベッドにダイブ。
すると、すぐさま扉をノックする音が聞こえてきた。

扉を叩くのは一人しかいない。





、すいませんでした。僕がからかいすぎましたから許してください』





バニーしか居ない。

私はベッドから起き上がり、扉を睨みつける。
入ってくれば良いのに入ろうとしないのが多分彼の紳士的なところだろう。






「本当に悪いって思ってる?」


『からかい過ぎたことは謝ります』


「・・・・・・」


『さすがに君とケンカしたまま、僕も会社には戻りにくいです。せめて、・・・仲直りしましょう?
僕がやりすぎた事は謝罪します・・・ごめんなさい』





扉の前で、バニーが私に謝っている。


床に置いたかばんと、袋から少しはみ出ているさっき買った雑誌。

雑誌にはすごく凛々しい顔をして写っているのに
扉の目の前の彼は多分、私しか知らない困った顔をしているに違いない。


そう思えたら、何か笑ってしまった。


ベッドから離れ、扉の前に立つと扉が開いた・・・表情はあくまで、少し怒った表情を見せて。








「ぎくしゃくしたの、イヤだから」


「僕もですよ」





そう言ってバニーは嬉しそうに私を抱きしめた。
抱きしめられたとき、私は笑みを浮かべた。

多分こんな顔知ってるの私だけだろう。






「そろそろ行かないと。もう少しと一緒に居たいのに・・・すいません」


「いいよ。ヒーローは忙しいもんね」


「今度どこか出かけましょうね。それまで我慢しててください」





バニーは優しく私のおでこにキスを落とした。
それをされた後、顔を赤らめながら私はおでこに手を当て彼を見上げた。





「夕ご飯作っとく」


「ありがとうございます。帰ってきたら食べますから・・・それじゃあ行ってきます」


「行ってらっしゃい」





颯爽とバニーは部屋を出て行った。
私はそんな彼に小さく手を振りながら見送った。

華麗に去って行く彼はやっぱりヒーローで、私だけの王子様なんだと思った。








「定期入れ・・・大切にしなきゃ」








彼の写真を入れる定期入れ、これからは大切にしなきゃ。

私の王子様。
どうかずっと、私だけにその姿見せていてください。





でも、これがまだ”ハジメテを迎える始まり“なんて私も彼も知らないままだった。





ハジメマシテの始まり-Hello-
(ここからハジマッテ、始まる)


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