「おい、バニー・・・バニー、大丈夫か?」


「うっ・・・こ、虎徹さん」


「壁に頭ぶつけたんだろ、お前気ぃ失ってたぞ」


「そう、ですか」


「何があった?下でに会ったが、アイツ泣いてたぞ」


「・・・・・・すいません、僕ととの問題なんでお話出来ません」


「・・・そうか」

















------ピンポーン!




「はい?・・・・さん!?」


「パオリン・・・しばらく泊めて」


「え?」




バニーのマンションを飛び出して、カリーナの所には行くのがマズイと思った私は
パオリン(ドラゴンキッド)が仮住まいしているマンションにやってきた。

玄関先での私の発言に、彼女は少し驚いていた。





「と、泊めはしますけど・・・何かあったんですか?行くならブルーローズのところに行けばいいのに」


「カリーナは・・・なんとなく、行きづらい」


「ケンカしたの?」


「違う」


「え?じゃあ・・・もしかして、バーナビー?」





彼女の言葉に私は一つ頷いた。


ケンカって言うか・・・・・・なんて言っていいのやら。



私が彼を怒らせてしまったのが原因ではあるが
今でも、思い出す・・・・・あの時の、バニーの瞳。





























獣のような眼差し。

見つめられただけで、射竦められた。
石のように動けなくなって・・・・・・体中の血液が沸騰したような、そんな気分。



思い出しただけで、怖い・・・それなのに―――――。










奥底で熱がジンジンとして、治まろうとしない。





恐怖と、ワケの分からない熱。


同時に私に襲い掛かってきてて、正直どうすれば治まるのか分からない。

私は腕を強く握った、震える体を抑えるように。








さん?」


「ご、ごめん・・・ちょっと、色々あったから・・・」







パオリンに声をかけられて、私は笑って答えた。
だけど、体の震えが全ての感覚を支配して声さえも震えていた。

そしたら、自然と目から涙まで零れてきた。









「と、とにかく上がってよ。あ、僕落ち着く中国茶淹れてあげるね」


「・・・あり、がとう・・・」








パオリンは焦りながらも私を中へと招き入れてくれた。

震える声で私は精一杯喋る。
でも、どうすることも出来ない震えと熱が体を支配して
瞼を閉じればあのバニーの獣のような眼差しを思い出す。



私の体に・・・何があったというんだろうか。









それから、数日。
私はパオリンのマンションに入り浸っていた。

洋服とか用品は、バニーが部屋に居ない隙を狙って持ちだしてきた。
部屋に戻ったけどやっぱりバニーはいつものように居なくって、寂しかったけど
顔を合わせたらまた何をしてしまうのか分からない。











「(今、顔を合わせないほうがいいんだよね)」








荷物を持ち出すとき、私は心の中でそう呟いていた。



でも、いまだに私の脳裏にあの時のバニーの眼差しが離れてくれない。
怖いはずなのに、胸がドキドキする。

時々思い出すと・・・酷いくらいに眩暈がして、体中が熱くなる。




そして・・・・・・―もっと、触れて欲しい―・・・・・・そう思うようになっていた。





こんなこと、考えたことも、思うこともなかったのに。





















「はぁ〜・・・」



「どうしたの?」



「あ・・・カリーナ」





学校でため息を零していると、カリーナがやってきた。
彼女が目の前に座って、お弁当を広げている。





「あ、もうお昼?」


「そうよ。アンタいつも私のクラスに来るのに来ないから今日は特別に私から来たの」


「ご、ごめんっ」





いつの間にかお昼になっていた。
私は慌てて、お弁当をカバンから出した。

パオリンのマンションのキッチンを借りて、自分のお弁当を作るがてら
彼女の朝食を作っていた。ほとんど私のお弁当の残りだが
パオリンはそれでも「さんありがとうございます!」と可愛らしい微笑で返してくれるから
内心安心していた。


そういえば、バニーにも同じようなことしてた。

バニーも・・・優しく微笑んでくれた。















『ありがとうございます、











ふとお弁当の包みを解く手が止まった。







?」



「食欲なくなった」



「は?ちょっ、どうしたの?熱でもあんの?」



「違う・・ホント、食欲ないんだ」






私は包みを解いていたのを元に戻す。



バニーの事を思い出して、私は食欲が一気に無くなりため息が零れた。





「どうしたの、?ていうかアンタ最近元気ないけど」


「別に。・・・・・・ねぇ、カリーナ」


「何?」








































「好きな人にもっと触って欲しいって思うの、おかしなことかな?」




「は?・・・は?あ、アンタ・・・何言って」




「え?」




ふと我に返った。

え?私今・・・何て言ったの?





・・・アンタ、やっぱり熱あるんじゃない?」


「え!?そんな、ないって!!あるわけないじゃん!!」


「ていうか、何その”好きな人にもっと触って欲しい“って?いつものアンタが
何でそんな事言うのよ!いつものアンタ知ってる人間からすれば完全におかしいとしか思わないじゃない!!」


「お、おかしくないもん!!違うよ!私は・・・わたしは、ただ・・・」






治まらない熱をどうにかしたい。




恐怖はすぐ簡単に取れた、だけどいまだに残っているこの熱。


バニーの事を思い出すと胸の奥が熱くなって体中が痺れる感覚に襲われる。

唇に指を当てると、あの時の激しい口付けの事を思い出す。




色々思い出すと・・・もっとバニーに触れて欲しいとか、もっとバニーにキスして欲しいとか・・・そういう気分になる。




アレだけ怖い思いをしたのに思考が、体が・・・全然真逆の反応を起こしてしまう。







「バニーのこと・・・考えたら、私・・・ヘンになりそう・・・っ、もうやだぁ〜」



・・・お、落ち着きなさいよ」



「もうこんな自分やだぁ〜」





怖い思いをして、しかも彼を能力で壁に叩きつけてしまった。



それで今更戻って仲直りなんて・・・出来ないし、ましてやあの獣のような瞳がまだ怖い。
怖いのに・・・怖いと思っているはずなのに―――――。







「見つめてほしいとか思っちゃってるから、何なのコレ?一体何なの?」




、しっかりしなさい!マジで落ち着いて、マジでしっかりしてってば!」




「もう・・・私、本気でおかしくなりそう」





涙目で顔を赤らめ、私はその顔を手で覆い隠した。

カリーナはそんな私に「お願いだから戻ってきて」とかなんかワケの分からないことを
言っているようだけど、多分彼女からしてみれば
私のほうがワケの分からないことを言っているに違いない。


ねぇ、バニー・・・どうしたらいいの?


ねぇ・・・ねぇ、教えて・・・。

















バニー・・・もう私、おかしくなりそうだよ。








































「・・・・・・?」


「どうした、バニー?」


「いえ・・・何だかの声が聞こえてきて。僕も相当末期みたいですよ、彼女が居ないだけで幻聴まで聴こえるようになったとは」


「まぁ・・・アレだよ。好きな女が居たら誰だってそうはなるさ」


「へぇー・・・虎徹さんもなったことあるんですか?」


「え?!・・・あっ、いや・・・そ、それはだ、な」


「まぁなかったとか言ったら、亡くなられた奥様が可哀想ですからね。娘さんを溺愛している虎徹さんに限って
そんなこと100%有り得ませんよね、えぇ絶対に」


「お前、何か機嫌悪くないか?」


「まさか」





ガンッ!・・・バキィッ!!!




「!!(ダストボックス蹴り一発で破壊しやがった!)」


「僕が機嫌悪いなんて、どのツラ下げて言ってるんですか虎徹さん?僕、ちゃんと笑ってるじゃないですか。
貴方の目は節穴ですか?視力は大丈夫ですか?そろそろ老眼鏡の時期になってきたんですか?」


「バニー、すまん・・・俺が悪かった」


「今、ものすごくイライラしてるんで気をつけてくださいね。もしかしたら今日の僕は、手加減が出来ないかもしれないんで
そのときは止めてください虎徹さん。僕が犯人を殺る前に」


「ゎ、分かった」






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