「もう、どうなってんのよ!!」





「どう・・・と言われましても」


「お、落ち着けよブルーローズ」







夕方。

トレーニングルームの休憩室。
僕と虎徹さんが、休憩を取っているとブルーローズさんが制服姿のまま
こちらにやってきて、机を叩き大声を上げた。






「これが落ち着けって言う態度ぉ?元はといえばどっかの誰かさんが原因で
こっちは落ち着いていられないわよ!!ねぇ、どっかの誰かさん!!」


「ぼ、僕ですか?」


「アンタしか居ないでしょうが!!」


「いや、俺も居るけど」


「おじさんは黙ってなさいよ!!」







どうやら、僕が原因で彼女は怒っているらしい。
何か僕は彼女を怒らせる原因でもあるのか?と1人考え込んでいると――――。















「アンタのせいでがおかしいんだから!!」


「え?」

がおかしいぃ?」







ブルーローズさんの言葉に僕は目を見開かせ驚いた。



あの日。
僕は彼女を泣かせてしまい、怯えさせてしまった。

自分にも否があることは認める。
でもへの愛は偽者なわけがない・・・死んだ両親に誓ってもいい、彼女への愛は本物だ。




愛が本物だからこそ・・・・・・傷つけるのが、怖い。



もしかしたら、僕のあの行動でに何かあったのかと思うと
やはりあんなことをしたことは間違っていたのかもしれない。・・・と自分の心の中でそう思っていた。










「そもそも、こんな記事が出回ったのが原因よ」





するとブルーローズさんは、ある雑誌を机にたたきつけた。
僕と虎徹さんはその記事を見る。







「んだこれ?」


「そこのバカが撮られたのよ。有名女優と密会とか、面白おかしく撮られちゃって。しかも何この笑顔?
明らかにこれは浮気じゃない!!がおかしくなって当然よ!!」


「お、おいバニー」




僕はその記事をジッと見つめる。その傍らで虎徹さんが心配そうな表情をし
さらにその目の前ではブルーローズさんが腕を組んで僕を睨んでいた。







「何か言いなさいよ」




「じゃあ言わせていただきます。・・・・・・これはお芝居です」




「は?」


「バ、バニー?」





僕の発言に二人は目を見開かせ驚いていた。





「ふ・・・ふざけんのも大概にしなさいよ!!」



「ふざけてませんよ、事実です」



「これの何処がお芝居だっていうのよ!!明らかに浮気現場の写真じゃない!!」



「浮気現場を僕はわざと撮らせたんです・・・隣にいらっしゃる女性の希望で」



「どういうことよ?」





雑誌に写る女性に指をさし、僕は眼鏡を上げ
いまだ怒りが治まらないブルーローズさんを見る。





「この女性。どうやら旦那さんのDVに耐え切れず離婚を切り出しているんです。しかし、男の方は
この人を手放したくないらしいんです。それで、女性のほうがアニエスさんに頼んで、僕に一芝居してくれないかと
依頼をされたんです。どちらかの浮気現場を押さえれば、離婚は目に見えてますから」



「そ、それでバニー・・・引き受けたのか?」



「えぇ。他の方にはこういったのは無理だろうって言うので、僕が。
もしまだ僕を疑うようでしたら、アニエスさんに聞けばすぐ分かりますよ。何せ僕に依頼してきたのは彼女ですから」







僕の説明で納得したのか、ブルーローズさんがまだ疑った眼差しで見ている。






「じゃ、じゃあ・・・浮気じゃないのよね?」



「当たり前じゃないですか。僕は以外の女性に興味ないですから」







以外の女性を好きになる?
むしろ彼女以上の女性が居るのなら逢ってみたいものだ。


まぁ確実に以上の人なんて、どこにも居やしない・・・僕はじゃなきゃダメなのだから。



あの子じゃなきゃ・・・僕はすぐに、不安定になってしまうのだから。







・・・アンタのこの記事見てから、おかしくなったのよ」


「え?」








説得が通じたのか、ブルーローズさんがようやく冷静な声で僕に言う。

というか、の「おかしくなった」って・・・一体どういう?







「さっきから気になってたが、のおかしくなったって・・・どういうことなんだよ?」



「ん〜・・・こ、これはさすがにタイガー居ると言いづらいわね」








悩ましげな顔で虎徹さんを見るブルーローズさん。

その表情を見てか、彼は「じゃあ俺はトレーニングに戻っとく」と
少々不貞腐れた声で言いながらその場を後にした。

もちろん其処に残ったのは、僕と彼女だけ。


虎徹さんが居なくなったことを確認すると、僕の目の前にブルーローズさんが座り
僕に手招きをし小声で「耳貸して」と言われ、耳打ちの姿勢になる。








「あの子、こんなこと言ってたの。”好きな人にもっと触れて欲しいって思うのは
おかしなことなのかな“って」



「・・・・が、そんなことを」








耳打ちで伝わってきた言葉に僕は驚いた。


が・・・そんなことを言ってたのに驚いていた。
アレはただ僕がカッとなってやってしまったこと。

だからが泣いて怯えて、当然なのに・・・聞かされた言葉に驚きを隠せなかった。







「アンタら二人に何があったとか、聞かないでおくけど・・・あんまり困らせたりしないでよね」


「すいません」


「この記事が本当に浮気じゃないなら、こんな所で筋トレしてないでさっさと誤解解いてきなさいよ。
ていうか、がアンタの家飛び出してドラゴンキッドのマンションに行ってるとか今日初めて聞いたからビックリしてんだから」


「彼女の家に居たんですか・・・


「そうみたい」














―まぁあんな状態だし、アンタのマンションに帰ってるかどうかは分からないけどね―























ブルーローズさんにそう言われたが
とりあえずシャワーと着替えを済ませ僕はマンションに戻った。


僕は自分の部屋の前に立ち、扉を開ける寸前で止まっていた。




何処が悪かったのかと考えれば、あの時冷静に出来なかった自分。

取り乱していたを少しでも抱きしめてあげれば
きっと彼女がこんな事にもならなかったはず。

それだというのに、火に油。

逆上した彼女に僕は逆ギレを起こして、仕舞いには・・・距離を離されるまで怯えさせてしまった。



冷静になれば、が怒る事も泣く事も、なかったのに。








「はぁ〜・・・どうしろっていうんだ」







扉の前でボソリと呟く。




しかも、アレが原因でがまさか「もっと触れて欲しい」とか言い出すとは。
それが一番の驚きではあった。


僕だって・・・僕だって、彼女に触れたいし・・・抱きしめるだけじゃ、どこか物足りなさを感じていた。



彼女の心も、体も・・・全部、僕のモノにしたい。



だけど、傷つけてしまいそうで正直怖い。







相反する気持ちが交錯して、どうすればいいのか―――――。

























「バニー・・・・?」






「え?・・・・・・





突然、聞き慣れた声に僕は声の先を見た。
すると其処には・・・が、立っていた。


彼女は僕の姿を見ていたけど、こちらに近づいてこようとしない。






「今日・・・早いね」


「少し時間が出来たので戻ってきました」


「そうなんだ」






軽く会話をして、そこからは無言。

どう繋げるかなんて、どうすればいいのかなんて・・・分かりはしない。


ただ、違っていたのは空気。
そこを纏っている空気が、あの日僕らを緊張状態にさせたものとは違っていた。

ピリピリとしたものじゃなくて・・・どこか、柔らかくて温かみのある空気。


少しギクシャクしているのは、空気のせいかもしれない。
そう考えたら少し楽になった。







「立ち話もなんですから、入りましょう



「え?」



「僕は君に話さなければならないことがあるので」



「・・・・・・ぅん」





手を差し出すと、おどおどしながらも近づいて僕の手を握ってくれた

その手を握り部屋の扉を開けて二人で入った。




もし、もし許されるのなら

君を傷つけないくらい愛せる権利があるのなら

僕の話を聞いて欲しい。そして―――――。











君の全てを、僕にゆだねて欲しい。









君を欲している気持ちが抑えきれないほど・・・僕は君に触れていたい。





許されるのなら・・・-Wanted-
(僕を許して、僕に全てを委ねて。本当は君が欲しくてたまらない)


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