『いつかお誕生日の時にね、おっきなケーキ食べるのが夢なんだ』
その夢をいつかは叶えてあげたい、って小さい頃の私は
そんな事を思っていた。
だけど少し成長した今の私なら、あの子の夢叶えてあげれるんじゃないかって
そう、思っていた。
「ケーキ作りを手伝って欲しい?」
「あらん?どうしたのよブルーローズ?」
ドラゴンキッドとファイアーエンブレムの前で私は言い放った。
「もうすぐ誕生日だから、誕生日ケーキ作りたいの」
「でも別に作らなくてもいいんじゃないの?」
「そうよ。お嬢の誕生日なんだしアタシ達が手作りしてあげなくても
アタシ、良いお店知ってるからそこのケーキ注文しましょうよ?」
「作りたいの・・・私は。あの子のために」
昔のことをふと思い出す自分もどうかしてると思った。
でも、それを思い出すという事は
きっと神様が「それをしなさい」っていうお告げにも思えた。
自分に何かが戻ってくるわけもないけれど
やってみる価値はあると思うし、やってみて損はないと思う。
「珍しいね。ブルーローズがそんな事言うなんて」
「でも、手作りっていうのも愛情こもってていいかもしれないわね。
ん〜・・・いいわよ。手作りケーキ作りましょ」
「うん!僕も手伝う!!」
「ありがとう二人共」
私の意思が2人に通じたのか、笑顔でケーキを作ることを承諾してくれた。
それから大慌てでケーキの材料を買いだして、料理の本を見ながら作り始める。
何度も失敗を繰り返して、何度も作り直して――――――。
『その時は、カリーナちゃん・・・一緒に食べようね』
あの時の笑顔に見合うケーキが作れたら、どんなにいいだろうかと思いながら
繰り返しの作業だけが続いた。
-誕生日当日-
「え?手作りケーキ?・・・うわぁ、美味しそう」
「さん。僕達、頑張って作ったんだ!」
「正直初めてな事だったし、何度も失敗しちゃったけどねん。
ブルーローズがどうしてもお嬢にケーキを作ってあげたいって言うのにアタシもドラゴンキッドも負けちゃったの」
「え?カリーナ?」
ケーキを見た後、は私の方へと顔を向ける。
正直視線を合わせるのだけでも恥ずかしいのに、言葉をかけるのも
今の私にはままならない。
私が顔を横に背けていたら、ゆっくりと近づいてくる。
「カリーナ」
「な、何よ」
声をかけられるも、顔は見らずぶっきらぼうな返事。
「覚えててくれてたんだ。小さい頃の事」
「ちょ、ちょこっと思い出しただけ。ほっんと昔から考えが幼稚だったんだなーって
思ってただけよ。今回のケーキだってたまたま昔のこと思い出して」
言葉を言おうとした瞬間、凄い勢いで抱きつかれた。
あまりにも突然のことで私は驚きを隠せない。
「ちょっ、な、何よいきなり!?」
「すっごく嬉しいの。覚えててくれてたことも、作ってくれたことも・・・全部、全部嬉しいの。
嬉しくてね・・・抱きついてるの」
肩に感じる涙のぬくもり。
声で分かる嬉しさ。
多分、今の私には見えないけれどの表情はきっと
あの時を同じ表情を浮かべているのかもしれない。
夢を見ていた時の、幼い笑顔。
夢を叶えられた時の、嬉しそうな顔。
多分作ってよかったんだと思う。
「ねぇ皆で写真撮ろ、記念になるだろうし」
「それいいね」
「はいはーい!じゃあ僕は左。ブルーローズは右でファイアーさんは上ね」
「あら?ドラゴンキッドにしては妥当な選択ね。
いいわよん。アタシの抜群の包容力で皆を囲んであげるわ」
「私は真ん中?」
「当たり前でしょ。アンタが今日の主役なんだから」
「アハハ、そうでした」
そうやってあの子を囲むようにして、カメラに向かって笑顔を向ける。
横目でチラリと見た笑顔は本当に幼い時に見た笑顔とよく似ていた。
「最後までケーキ食べなさいよ」
「うん。カリーナやネイサン、パオリンが愛情たっぷりこめたケーキだもん。残さず頂きます」
「うん」
シャッターを切って、思い出に思い出を重ねた。
でも、重ねても変わらないのは私だけが知っている、笑顔だけだった。
『ていうか、其処まで落ち込む普通?』
『でもバーナビーの事だから仕方ないんじゃない?僕にはよく分からないけど』
『ホント、ハンサムってお嬢のことに関したら面白い反応するわよね』
私はチラリと携帯に保存した、誕生日の時の写真を見て
今更ながら落ち込んで途方に暮れているバーナビーを見て、鼻で笑う。
『いい気味よ、放っておきましょ』
『うわ、ブルーローズ言っちゃった』
『でもお嬢を独り占めしているハンサムには良い薬よ。たまにはいいわ』
『ふ、二人が言うなら分かった・・・!』
そう言って私達は目線を合わせて――――――。
『ご愁傷さまです』
と、見えない所で落ち込むヤツに言い放った。
バースデーケーキは愛情の結晶
(愛情たっぷりのケーキをあげるのは私達乙女の役目)