マンションに帰ることが億劫だった。

しかし、帰らなければが心配するかもしれないという
気持ちになり僕は肩を落としながら自分の部屋へと足を進めた。







「ただいま」



「おかえりなさいバニー」



「ぁ・・・は、はい」







部屋に入るとがにこやかに僕を迎えてくれた。
しかし、一方の僕はというとその顔すら見るのも胸が痛み
思わず彼女から顔を逸らしながら、返事をした。








「バニー、どうしたの?気分でも悪い?」



「い、いえ・・・そういうわけじゃ」







僕がいつもの態度じゃないと気付いた
すぐさま近づいて、僕の顔を覗き込む。

だが、今の僕にはと目を合わせて話すことは心苦しいというもの。


覗き込まれても、僕はの視線を避けた。


すると目の前の彼女からため息が零れる。









「聞いたよ、カリーナから。私の誕生日祝えなかったの落ち込んでるんだって?」








その言葉を聞いた瞬間、肩が微かに動いた。
言葉で返していなくとも体が反応してしまい、隠そうにも出来なかった。

いつもの僕なら、簡単なポーカーフェイスくらい出来るし
そういった反応もしないのだけれど、気持ちが揺らぎっぱなしなのか
雰囲気や態度で滲み出てしまっていた。







「バニーは私の誕生日が祝えなくて、落ち込んでたの?」







の言葉に一つ頷く。






「それで私が貴方にお祝いしてもらえなかったからって泣いたりした?」




「い、いえ」




「貴方を無視したり、蔑んだりした?」




「いえ」




「私、貴方を落ち込ませたり、悲しませたりした酷い子かな?」





「違います!決してそんな事は・・・っ」







の言葉を否定すると同時に彼女の顔を見た。


視線を合わせた時のの顔は、とても穏やかで優しい目をして僕を見ていた。









「あのね、バニー。私ね、貴方から毎日返しきれないほどプレゼントもらってるんだよ」




「え?」






するとは僕の手を握る。
その手から感じるぬくもりに、涙が溢れそうになる。


胸の痛みが徐々に引いていくほど、のぬくもりは優しい。








「毎日たくさん、バニーから愛情っていうプレゼント貰ってる」









「誕生日はね、私・・・プレゼントも嬉しかったけど。
一番はね皆に『』って呼んでもらうことが嬉しかったの」




「何故、ですか?」






普通ならプレゼントを貰って喜ぶところなのに
の場合は、どちらかというとプレゼントよりも
自分の名前を呼んでもらうことが何よりも嬉しいと言い始める。

普通なら考えられない。


何故そう思っているのか僕は問いかけた。







「自分が産まれた、って実感できるの」



「自分が、産まれた」



「誕生日に名前を呼んでもらうことで、私はこの日に産まれたんだって実感できるんだ。
ちっぽけなことかもしれないけれど、私にとってはね大きなことなの。
プレゼントも嬉しい。だけど、って名前を呼んでもらったらもっと嬉しいの。だからね、バニー」







そう言ってが手を離し、僕の頬に優しく触れる。


今度はもっと分かりやすくの体温が僕の肌に伝わる。








「プレゼントをあげれなかったとか、お誕生日をちゃんと祝えなかったとか、落ち込まなくていいの。
私は貴方から毎日返しきれないほどの愛情を貰ってるし、って名前を呼んでもらうだけで十分なんだよ」




・・・ッ」








言葉に救われたみたいに、僕はを抱きしめた。

腕の中に収め、力いっぱい・・・愛情を込めて。






「バ、バニーッ・・・い、痛いってばぁ」




「来年は!」



「ぁ、は、はい」



「来年は一番にお祝いします。花束を渡して、ケーキをあげて、食事にも連れて行って、プレゼントも。
そして、誰よりも一番先に・・・君の名前を呼びます。
僕は君の名前を呼べることを神様に感謝しながら、って・・・呼びます」



「ぅん、ありがとう」






は嬉しいのか、声が震えながら僕の背中を優しく叩いた。

力を抜き、少し距離をおいてを見る。
そして今度は僕がの頬に触れた。













「ん?」




「一番最後になってしまいましたが・・・お誕生日おめでとうございます。
僕はこれからもずっと、君の名前を呼べることを嬉しく思い、君が産まれてきてくれたことを
神様に感謝したいと思います。もちろん、君と出会えたことも」




「バニー」







そう言って僕はとおでこを合わせ――――――。








「ありがとう。産まれてきてくれて、僕と出逢ってくれて、僕に君の名前を呼ばせてくれて」




「バニー、私もありがとう」







産まれてきてくれた事を、そして愛すべき君の名を呼べることを祝福しながら
愛情を込めた口づけを彼女へとするのだった。





きみの名を呼べることに感謝します
(でも来年こそは必ず!もちろん君の名を呼ぶことも忘れずに) inserted by FC2 system

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